AIDS検査

 

aids,思いこみ

1997年8月4日
2009年1月13日改訂


 人と人の間で会話が成立するのを不思議だと思いませんか?

 同じ日本語を使っているとはいえ、姿も形もない「言葉」を間にはさみ、お互いわかったようにふるまっています。そのため、ときどき、とんでもない誤解が生じます。

 それにしても言葉はやっかいなものです。よくまあこんなあやふやなものを駆使して、人と人は意思の疎通ができているものです。サーカスの綱渡とくらべても、こっちのほうがあやういかもしれません。そのため言葉ひとつで大けがをすることも珍しくありません。言葉が人を殺すこともあります。

 お互にこのような危うい道具を使ってコミュニケーションをしているわけですから、誤解などあって当たり前。何の誤解もなく会話がなりたっていると思うほうが、むしろ大きな誤解なのかも知れません。

 何年か前、私が「AIDS検査」を受けたときのことです。

 近所の保健所へ行くと、担当の女性が現れ、採血の前にいろいろとたずねられました。

 「なにか思い当たることがあるのですか?」

 「はい、半年ほど前なんですが、」

 私が最後まで言い終わらないうちに、こちらの言葉をさえぎるように続けてたずねてきました。

 「半年前ですか。じゃ、大丈夫ですね。3ヶ月以内ですと検査をしても結果が出ないことがありますから。で、相手は女性ですか、それとも男性ですか?」

 「はあ〜? えーっと、両方かな……」

 「両方ですか。何人くらいですか?」

 「何人って言われても……。2、30人くらいかな……」

 「2、30人! 半年で2、30人なんですか?!」

 「はい。5,000ccほど輸血してもらいましたから、2、30人分じゃあないんですか?」

 「輸血…….」

 この担当の女性は、私がよほどそっち方面が好きだと思ったのか、それとも検査に来る男はみんな怪しげなところで身におぼえのあることをやっているからなのか、頭から決めつけていたようです。

 私は半年ほど前、ちょっと大きな手術をした際、5,000ccほど輸血をしてもらったので、念のために調べてもらいに行っただけです。幸い、結果は陰性でした。

マジェイア


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