おいしい生活(8)
ミルフィーユ
ミルフィーユというケーキがありますね。パイ生地を3層くらい重ね、間にクリームが挟んであるものです。いろいろなタイプがありますが、食べるのが最も難しいケーキのひとつだと思います。私も好きでよく食べるのですが、いつも困っていました。どうしてもきれいに食べられないのです。
立てたまま切るとパイ生地の間に挟んであるクリームが周りからはみ出し、ぐちゃぐちゃになってしまいます。とくにクリームが軟らかいタイプのものだと大変です。
どうやらこれは日本だけでなく、海外でも同様のようで、ミルフィーユを食べるときは少々くずれてもよいということになっているようです。ミルフィーユがあるカフェやレストランに行ったとき、どうやって食べたらよいのか、いつもたずねることにしていました。しかし返事はたいてい同じで、「少々崩れてもよい」か、「横に倒してからカットしてください」というものでした。確かに、倒すと多少切りやすくなりますが、立っているものをわざわざ倒すというのが気に入りません。
鮨屋で握りを食べるとき、ネタをはがして、醤油をつけてから戻し、食べている人がたまにいますが、ミルフィーユを横に倒してからカットするのも、それと同じくらい恥ずかしいことのような気がして、困っていました。
若い女性など、デートの時、本当は食べたいのに、うまく食べられないから、モンブランや他のケーキを頼んでしまうという人も少なくありません。デートのときは食べたくても避けているという話をよく聞きます。
数十年、悩んでいたのですが、昨年(2012年)の夏頃、大阪の梅田、ブリーゼ・ブリーゼの33階にあるル・コントワール・ド・ブノワに行きました。シェフ、アラン・デュカスがプロデュースしているフレンチの店です。そのとき、給仕をしてくれたのはフランス人のスタッフでした。デザートにミルフィーユがあったので、ミルフィーユをうまくカットする方法はあるのか、たずねてみました。我が意を得たりと、大きくうなずき、「デザートのとき、お見せしましょう」という返事が返ってきました。ここまで自信たっぷりに言われたのははじめてです。これは期待できると思いました。
食事が終わり、ミルフィーユが出てきたとき、ナイフとフォークを持ってきて、切り方を見せてくれました。
上の画像のように、左手にフォークを持ち、それをケーキの右側にあて、右手に持ったナイフを左側から入れ、カットしました。フォークで支えておくのがポイントですね。こうするとパイ生地が動きません。3つにカットしてくれました。
このフランス人の人は大変鮮やかだったのですが、そのときはカメラの用意をしていなかったこともあり、撮影できなかったのです。
それからしばらくしてもう一度行ったとき、前回見せてくれた人は休みなのか見当たりません。他のスタッフにたずねると、ここのスタッフは全員マスターしているというので、お願いして撮影させてもらいました。残念な事に、今回の人は前回ほどあざやかではありません。フォークの使い方も、上の画像とは少し違います。まあ、原理はわかると思います。前回の人はスパッと鮮やかにカットしてくれていましたが、今回の人は、少々崩れていました。
とりあえず、これで立てたまま、カットできるということはわかりました。
ミルフィールには様々な種類があります。クリームたっぷりのもの、少ないもの、クリームを挟んで時間がたってしっとりしたもの、作りたてで生地がパキパキしたものなどがありますが、この店のミルフィーユはクリームが普通以上に軟らかいため、相当崩れやすいタイプです。
切った後、実際に食べるときですが、3つに切ったとしても、この一切れを一度に口に運ぶのは難しいと思います。大きさもこのままでは少し大きすぎるでしょう。それで、3層になっている上のパイ生地とその下のクリームの部分をフォークですくい取り、それを食べたあと、残っている上下にパイ生地で挟まれた部分を食べれば、食べやすいのではないでしょうか。上の層を食べるときは、ナイフで少し支えておき、フォークですくうようにすれば、それほど難しくありません。
カットの仕方を取らせてもらった動画をyoutubeに投稿しておきました。興味のある方は御覧ください。以下の「ミルフィーユの切り方」をクリックしてください。
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