おいしい生活(3)


ピロシキ

1998年2月4日 (2026年2月21日改訂)
「ピロシキ」(Piroshki)をご存じでしょう。
揚げたパンの中に挽肉やタマネギ、卵などが入った、いわば「ロシア版肉まん」です。

子どもの頃、私はこれが大好きでした。
大阪・梅田の阪神百貨店地下にあった「パルナス」で、母によく買ってもらったものです。

ところが、いつの頃からか、このピロシキがおいしく感じられなくなりました。

パルナスといえば、ロシア民謡風のCMソングを覚えている方も多いでしょう。しかし、ある時期から、あのピロシキがまるで別物のように感じられたのです。

他のパン屋で「ピロシキ」を見つけるたびに試してみました。けれど、どれも小さく固く、中の具も控えめで、満足できるものには一度も出会えませんでした。

これは、子どもの頃の記憶が美化されているだけなのだろうか。
あるいは、自分の味覚が変わったのだろうか。

半ばあきらめかけていた頃、インターネットで偶然、「モンパルナス」という店を見つけました。
  名前からして、あの「パルナス」と関係がありそうです。写真を見ると、丸く小さなものではなく、大きく、ふんわりとした、懐かしい姿のピロシキでした。

場所は阪神電車尼崎駅構内。自宅から車で十五分ほど。
これは行くしかない、と思いました。

そして——。

食べてみて驚きました。
三十年以上前に食べた、まさに「あのピロシキ!」だったのです。

思わず店にメールを送りました。すぐに返事をいただき、二十六年前にパルナスから独立した会社であること、しかも阪神百貨店で販売していた当時と同じ製法を守り続けていることを知りました。

だから、「あの味」だったのです。

ここでは仕込みだけでも二日かけ、毎日その日の分だけを作ります。売り切れたら終わり。大量生産や冷凍品とは無縁の、昔ながらのやり方です。

「ピロシキをたずねて三千里」——
ついに出会いました。

思い続けていれば、いつか出会える。
そんなことも、人生にはあるのかもしれません。

また、子どもの頃の味は、失われるものではなく、

どこかで静かに、待っているのかもしれません。


★補足
2021年5月1日、大阪府豊中市庄内西町へ移転。
阪急庄内駅(宝塚線)近くにあります。通販も可能です。
「豊中 モンパルナス」で検索すると見つかります。
(※1998年2月当時の価格は1個150円 2026年2月現在の価格は1個250円です)


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