路上駐車

たは『箱入り娘

 

1998年11月126日


ローマを車で走っていると、道の狭さと路上駐車のひどさにはあきれてしまう。道が狭いのは、街中、千年、二千年前の遺跡だらけのため、簡単に道幅を広げられないからだが、あの路上駐車はどうなっているのだろう。交通係はいないのか?大阪の路上駐車も悪名高いが、そんなものとは比較にならない。ローマを見てから大阪を見ると、大阪人が飛びきり行儀よく見えてしまう。

何がひどいって、縦に2台、3台と並んでいるのだから、一番奥の車などどうやって出すのか見当もつかない。ローマに長い間住んでいる知人にたずねてみると、さすがに3台が縦に並んでいるようなところは、同じ職場であったり、友人同士なので、一斉に移動させるからあまり問題はないらしい。しかし、そう都合よくばかりいくはずがない。何かの拍子に、一番奥に停めて、買い物にでも行っている間に後ろに2台くらい並べられた日にはどうしようもないはずなのだ。

バールで一服しながらコーヒーを飲んでいると、窓のすぐ外に見える道路は、まさに3列縦隊の路上駐車であった。ぎっしりと縦に3台が並び、それが横に20台くらい並んでいる。途中、何カ所か空間があるが、一番奥の車を出すにはどうしたらよいのだろうと思いながらながめていると、「箱入り娘」というパズルを連想してしまった。似たものに、「15パズル」もある。「15パズル」は、4x4の升目に、15枚の板が入っていて、それぞれに1から15までの数字が書いてある。16ある升目に15枚の板が入っているから、スペースは1枚分しかない。持ち上げることはできないので、スライドさせて、順番を換えるしかない。

最初、バラバラになっている数字を、板をスライドさせることで1から15まで整理するゲームである。「箱入り娘」は、奥の方に詰まっている「娘」の板を徐々に手前に持ってきて、抜き出すパズルである。

私はどうもこのタイプが苦手で、できたためしがない。

カプチーノを飲みながら、一番奥にある赤い車を手前に持ってくるには、どうすればよいのか考えてみた。手帳に升目を書いて、シミュレーションをやってみると、意外なくらい簡単にできてしまった。しかし、今の場合、前後左右に動かしたからで、実際には車を真横に移動させることはできない。そう言えば、十数年前、コンピューターが一般家庭に入り始めた頃、『倉庫番』というゲームがあったことも思い出した。これはその後ファミコンなどにも移植され、パズルゲームとしてはヒットしたので知っている人も大勢いると思う。

簡単に説明すると、倉庫で大きな荷物を整理して、決められた場所に並べるだけのものなのだが、いくつかの規則がある。

1.荷物は押すことしかできない。引っ張ったり、持ち上げたりはできない。
2.大きな荷物なので、一度に移動させることができるのは1個に限る。

ただこれだけのルールで、何個かある荷物を指定の場所に整理する。

このルールを適用して、先の赤い自動車を出す方法はないだろうかと思って、色々やってみたがどうにもうまく行かない。

バールを出て、さっきの赤い車のほうを見ると、車の持ち主らしい人がドアを開けている。今からあの車を出すつもりなのだろうか。でも、ほんとにあれが出せるのだろうか。あんな難解なパズルが、頭の中だけですぐに解けるなら、『倉庫番』をイタリアで売り出しても、簡単すぎて全然売れないだろう。

とにかく、私はたちはパズルの答を知ることができる場面に出くわして興奮した。眺めていると、赤い車はものの1分とかからず道路に出て、空いたスペースには他の車が詰まっていた。

「うーん、確かにすごい....。」

優秀なパズルがいつもそうであるように、答は実にシンプルなものであった。

運転手は車に乗り込むとすぐに、ギアをバックに入れて、後ろに並んでいる2台をそのまま縦につながったまま、押し出してしまった。自分がいったん出たら、押し出した2台の後ろにまわり、またその2台を空いたスペースに押し戻した.....。


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