おいしい生活(1)


 

『パラノイアなワイン日記』を体験

(中央公論社 竹中充著 1,553円)を読んで。
1997年7月11日



パラノイアなワイン日記何かを勉強するとき、よい師匠に教えてもらうことができるのならそれが一番です。
直接師匠から教えてもらうのが無理ならば、よい入門書に巡り会えるかどうかで、その後がずいぶん変わってきます。できることなら、まだあまり我流のヘンな癖がついていない間に、きちんと習うに越したことはありません。我流のままやっても、それはそれで十分楽しいものですが、その道に詳しい方に少しアドバイスを受けると、楽しみがずっと広く、深くなるものです。

縁台将棋(死語かな?)を何十年と続けても、せいぜいアマチュアの3級程度にしかなりません。しかし、定跡を勉強して、それに実戦を加えると、ほとんどの人が1年くらいで初段程度になれます。
縁台将棋でも十分楽しいからそれでよいのであれば、他人がとやかく言う必要はありません。しかし、ものごとは、深く知って初めて感動できるものもたくさんあります。

私の性分として、何かを始めるとき、まず第一にやることは、その分野の碩学が、わかりやすく書いてくれた入門書を探すことからです。

昨年の11月頃、たまたま書店でこの本を見つけました。タイトルに惹かれたのです。
どのような分野であれ、突っ込んで詳しくやろうと思えば、多分にパラノイア的な要素が必要になってきます。

昨今はワインブームなのか、ワイン関係の本もたくさん出ています。私も3ヶ月で、20冊ほど買いました。その中で、何度か繰り返して読んだのはこの本くらいです。
何が気に入ったかというと、昨今のハウツーものとは違い、著者自身の体験や歴史を基に、必要にして十分な蘊蓄がバランスよく詰まっているところでしょうか。それと、その裏にある、著者自身のワイン対する並々ならぬ思い入れが伝わってくる点です。

この本を読んで、半月ほどたった頃です。紹介されていた多くの魅惑的なワインを試してみたいと思っていたら、一度にまとめて飲むことができる機会がありました。それも破格の料金で。
それは、東京の某ホテルに滞在していたときです。そのホテルの中にあるレストランは、年に何度かイベントをやり、私が泊まっていた日から2,3日だけ、ワインのイベントがありました。タイトルは「ワインの夕べ 『注目のセカンドワイン』」というものです。

同じシャトーで、同じ年に取れたものの中から、そこの看板銘柄と、ワンランク下のセカンドワインを飲み比べてみようという企画でした。
たとえば、シャトー・ラフィット・ロートシルト。葡萄の樹一本につきグラス一杯分のワインしか生産しないというこのワインと、セカンドのカリュアード・ドゥ・ラフィット・ロートシルトを一緒に飲んで、その違いを楽しもうというものでした。セカンドとは言え、どれも大変コストパフォーマンスのよいすぐれものです。しかし、私のようなワイン初心者でも、一緒に飲むと、さすがにその差は歴然としていました。というより、シャトー・ラフィット・ロートシルトやシャトー・マルゴー、シャトー・ラトゥールといったところはやはりだてに名前だけが売れているわけではないことがよくわかりました。

昔と比べて、日本でもワインが安く手にはいるようになりました。近所の酒屋でも、少し気の利いた店ではそれなりの品揃えをしています。何かの折りに、一度くらい、思い切って、試してみてください。一度でも、本当においしいと言われているものを体験しておくと、後の評価がずいぶん楽になります。ぜひ、なるべく早い内に、ちょっと無理してでも試してみてください。

ちなみに、私が運良く行った日は、普通にそこのレストランで注文したら、シャトー・マルゴー一本くらいの値段で、以下のメニューとフルコースの料理を楽しめました。

 

ワインの夕べ

『注目のセカンドワイン』  

VIN BLANC: 白ワイン

Aile d'Argent, 1993
エール ダルジャン

VINS ROUGES: 赤ワイン

Carruardes de Lfite-Rothscihild, 1990
カリュアード ドゥ ラフィット ロートシルト

Chateau Lafite-Routhschiled,1990
シャトー ラフィット ロートシルト


Pavillon Rouge du Chateau Margaux, 1990
シャトー ルージュ デュ シャトー マルゴー

Chateau Margaux, 1990
シャトー マルゴー


Les Forts de Latour, 1990
レ フォーレ ドゥ ラトール

Chateau Latour, 1990
シャトー ラトゥール

VIN LIQUOREAUX NATUREL: 貴腐ワイン

Chateau, de Fargues, 1983
シャトー ドゥ ファルグ


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