夏休みはまとまった時間が取れますので、うまく使うと大きく伸びます。この期間、誰にでもお勧めできるのは「英単語の暗記」です。今回はこの単語の覚え方についてアドバイスします。
英単語の重要性は近年ますます高まっています。高校受験、大学受験だけにとどまらず、英検、TOEICなどでも「単語が命」と言ってよいほど、単語は重要です。
誤解のないように、最初にお断りしておきますが、英語は単語だけでは読めません。中学で習う文法はほぼ完璧にわかっているのが前提です。「日常会話」でしたら、中学の英語で習う構文だけで99%、何とかなります。あとは単語だけです。話すテーマによって必要な単語は変わってきますが、構文に関しては中学のものでほぼ100%表現できます。
中学で習う英単語数は、公立中学で使用している教科書の場合、30年くらい前は800語程度でした。それが20年くらい前に1000語〜1200語くらいになり、2020年頃、教科書が改訂されてから目標数が1600語〜1800語になりました。
以前は平均的な能力のある中学生でしたら単語で苦労することはほとんどなかったのですが、ここ数年、改訂で600ほど増えたため、中学生も本気で取り組む必要が出てきました。教科書だけで英語の勉強をしていると、単語数は増えません。どうしても暗記用の単語集が必要です。大学入試に必要な英単語は受験する学校によって大きく変わりますが、3000語から5000語レベルです。
中学時代は単語で苦労したことはなかったのに、ほとんどの高校生は英単語で苦労しています。中学までの英単語は、すでに日本語になっているものがかなりの数、含まれています。そのため、数の割には、まったく知らない単語というのは意外なくらい少ないものです。しかし高校になると、出てくる単語の抽象度が上がることもあり、急に難しくなったと感じると思います。
中学生の場合、高校受験用の単語集はいろいろ出ています。中学生用の『ターゲット1800』や、英検の準2級用の単語集がお薦めです。一般的な公立高校を受験するのでしたら、覚えるのは『ターゲット1800』の中の1400くらいまででかまいません。難関私立高校を受験する場合はターゲットにある1800語はすべて覚えておいたほうがよいでしょう。
高校生の場合、大学入試用の英単語集はかなりの数、出版されています。よく使われているのは『ターゲット1900』、『速読英単語』(Z会)、『システム英単語』(駿台)、『DUO3.0』、『データーベース4500』、『鉄緑会東大英単語熟語』他、いろいろあります。 もし学校で何かもらっているのでしたらそれでもかまいません。例文の中で覚えたいのでしたら『速読英単語』や『DUO3.0』がよいでしょう。少しレベルは上がりますが、ある程度英語に自信のある人なら『リンガメタリカ』(Z会)もよいでしょう。これは116の最新テーマが、1回分200〜250ワードくらいの読み物になっており、そこに重要単語が15から20ほど出てきます。この文章をいつでも訳せるようにしておけば、単語も自動的に覚えられます。
中学生で、今までこのような単語集を使ったことがないのでしたら、まず中学生のターゲットで1200語レベルまでを夏休み中に1回は終わらせます。
覚え方は中学1年生から高校生までを含めて、夏休みの間、以下のようにやってください。
単語を覚える時間は、夏休みの間、1日3回取ります。朝45分、午後20分、夜20分くらいです。時間は決めておいた方がよいと思います。4〜5日も続けると習慣になり、しないと気持ち悪くなります。
単語集を購入すると、中学2年、3年でしたら、知っている単語もかなりあると思います。そのため、まずそれをチェックします。
最近の単語集はたいてい出題頻度順か、学年別になっています。最初に易しい単語が出てきます。まずこの中で、自分がすでに知っている単語に印をつけていきます。見た瞬間に、パッと意味がわかる単語に限ります。しばらく考えて思い出したようなものには印はつけません。後半になるとほとんど知らない単語が増えてくると思います。とりあえずこれで500くらいまでチェックしてみます。この段階でかなり個人差が出ますが、印の付いていない単語を覚えていきます。これをしないと、たとえば1日30個としても、すでに知っている単語が20個あれば、実際に覚えるのは10個です。このようなロスを避けるために、事前のチェックは大切です。
印がついていない単語が決まると、毎日、朝、30個分覚えます。このとき、例文が載っていますので、かならずその例文も確認し、その例文が訳せるようにします。これは少し時間がかかると思いますので、45分くらいをめどに覚えます。午後は今朝覚えた30個の確認です。夜も同じです。
2日目です。
朝:まず昨日覚えた30個を確認します。パッと意味が出てきたものはチェックを付けます。覚えていないもの、なかなか出てこなかったものはチェックを付けません。
そしてそれができたら今日の分、新しい30個を覚えます。
昼は昨日の単語でチェックのついていないものと、今日の30個を確認します。夜も同じです。3日目です。
朝:昨日とおとといの2日分の復習をします。昨日の30個で覚えているものはチェックをつけ、覚えていないものはそのままです。それが終わったら、今日の30個を覚えます。
昼と夜はこの3日分のチェックです。90個ありますが、実際にはチェックのついているものは飛ばしますので、それほど時間はかかりません。朝は少し時間がかかりますが、英単語は本当に大切ですので、本気で取り組んでください。
夏休みの間にこれが習慣化すると、夏休みが終わっても、これを続けることができます。
単語を覚えるのはすき間時間をうまく利用して、何度か繰り返すのがコツです。
最後まで行ったら、また元に戻るのですが、2回目は1回目の半分以下の時間で終わるはずです。とにかくこのペースで、単語集をぐるぐるまわします。単語を覚えるという作業は、慣れない間は思いのほかしんどいものです。とにかく3日間だけ頑張って、「何が何でも」の気持ちで続けてください。3日間もできないのなら、自分は勉強には向いていないと思って、さっさと受験などあきらめるか、名前さえ書けば合格させてくれる高校や大学もありますので、そちらに切り替えることです。多少なりとも本気で受験したいのでしたら、とにかく3日間続けてください。3日できたら、5日間、そして1週間続けられたら大丈夫です。必ず続けられます。「三日坊主」とはよく言ったもので、最初の3日間、気合いを入れて頑張ってください。
昔英語を読んでいると、
“Habit a second nature! Habit is ten times nature.”(the Duke of Wellington)
「習慣が第二の天性だと! 習慣は天性の10倍も力強いのだ」(ウエリントン公の言葉)
という一文がありました。
本当にそうです。習慣の力は持って生まれた才能を凌駕します。 コツコツと毎日続けていると、しばらくして振り返って見ると、自分がスタートラインからはるか遠くまで来ていることに気づき、驚くと思います。ところで、単語の中には何回やってもすぐに忘れるもの、覚えにくいものがあります。そのような単語を覚える秘密兵器があります。「単語カード」です。これは幅2,3cm、長さ7,8cmで、両面とも白いカードです。これは100円ショップなどでも販売されています。このカードの表に英単語、裏に日本語を書きます。
これがある程度たまると、トランプを混ぜるように、よくシャッフルしてから確認していきます。
覚えたのははずし、覚えていないものが最後まで残ります。チェックするときは、毎回シャッフルします。
この単語カードによる暗記は、やったことのある人ならわかると思いますが、本当に効果は絶大です。私が40年くらい前に生徒を教えはじめたとき、生徒全員に画用紙を渡し、カードを作ってもらい、それでやっていました。今ではたいていの100円ショップで販売されていますので、そのほうが便利でしょう。この単語カードが便利なのは、シャッフルができることと、覚えていないものだけが残るため、数が減っていきます。自分でも覚えたという実感ができ、やっていて楽しいです。
高校生なら古文単語もこれでできます。古文単語はとりあえず300くらい覚えると、かなり読めるようになります。なれてくると、少し大きめのカードを作り、そこに数学や物理の重要問題、化学の反応式などを書き、いつも見返せるようにしておくと便利です。
最初にも少し触れましたが、英語は単語と並んで、中学の文法はものすごく大切です。文法の理屈を教えた後、それを定着させるために三輪塾で使用している暗記用の教材があります。市販されている本ですが、『どんどん話すための瞬間英作文トレーニング』(ベレ出版)です。これは中学で習う文法に限定していますが、単元別になっていますので、文法の基本的な形を定着させるのにすぐれています。単元別に約80ほどに分けてあります。三輪塾では毎回、この中の4〜6くらいを宿題にし、次回の授業の最初に、こちらがピックアップした例文を英語で言ってもらいます。これで中学3年の間だけでも5,6回、繰り返すことができます。
一般的な英会話はこの中学の範囲の英語だけで100%近く言えます。あとは単語の問題だけです。実際、三輪塾でこれをやり、中学2年で英検の2級に受かり、高校で準1級、大学1年で1級に受かった生徒が次のように言っていました。
「先生から中学の英語で、日常会話ならほぼ100%話せると言われましたが、正直なところ、それは無理だろうと思っていました。しかし自分が英検の準1級、1級に受かり、バイトで通訳(外国人旅行者に大阪、京都を案内するガイド)をやってみると、ガイドとして必要な構文というのはほとんどすべて中学英語の範囲だとわかりました」
日常会話に限らず、大学入試の英作文で日本で一番難しいと言われている京都大学の英作文でも、年によっては構文自体はすべて中学の範囲で書くことができることもあるくらいです。英語というのは、中学3年までの文法がほぼ完璧であれば、あとは単語力なのです。覚えている単語数と英語力はほぼ比例しています。文法力と単語力は英語の両輪ですので、どちらも重要です。どちらが欠けてもまともに走ることはできません。
ちなみに、英検の準1級で単語のレベルは7500語から9000語、1級で約15000語です。
近年、大学入試に英検が利用できるところも増えたため、英語が得意な人は準1級を目指している人が大勢います。準1級から1級の間は大きく、人によっては10年やっても受からない人も珍しくありません。しかし先の元生徒の場合、1年で1級に受かりました。これは大学まで通学で毎日1時間ほど電車に乗るため、往復で2時間あり、そこでひたすら単語を覚えたそうです。毎日2時間、電車の中で英単語をするだけで英検の1級まで行けるのですから、時間活用は重要です。多くの人は電車の中でゲームをしているかYoutubeなどを見ていますが、「塵も積もれば山となる」のたとえを思い出さなくても、習慣の力は大きいと、あらためて思った次第です。高校生でしたら、この夏休み、英単語と古文単語もすることをお薦めします。古文単語は英語と違い、とりあえず300語、そしてできれば600語レベルまで覚えれば入試に対応できます。
何事も習慣ですから、最初の一歩を踏み出すことが大切です。あと、どれだけやったのかわかるために、卓上用のカレンダーが100円ショップで売っていますので、それを使って、やったところまでの番号を書き込んでいくとよいでしょう。目に見える形にしておくと、成果が実感出来ます。
1日の単語を30語としましたが、本気で朝晩、1時間くらい取れるのでしたら、50語から100語にしてもかまいません。50語なんて無理と思うかも知れませんが、実際は何度もぐるぐると反復すると、意外なくらい覚えられます。とりあえず90%以上覚えたら合格とします。次の日も復習は必要です。とにかく、3日間は復習が必要です。3日分復習をしながら、新しい単語も平行して覚えていきます。忘れることを恐れず、何十回、何百回と、繰り返すことです。
私の知人の女性でフランス語に堪能な人がいます。彼女はすでに60歳を超えていますが、先日、フランス語の通訳を頼まれたそうです。しかしまったくの専門外の分野(フランス料理やワイン関係)であったため知らない単語が多く、どうしようかと思ったそうです。それでもそれ関係の単語を数日で400語くらい詰め込んで、何とかなったと言っていました。いくつになっても覚える気さえあれば、なんとかなります。
とにかく3日間、がんばってください。
人間には残念ながら持って生まれた能力に大きな差があります。しかし単語に関しては、その能力差はあまり出ません。能力による差はそれほどありません。差が出るのは、理屈の分野です。英語で言えば文法や構文把握の力です。ここは勉強方法で大きな差が出ます。
単語力と文法力・構文把握力は英語にとって不可欠です。後者は指導方法によって大きな差が出ます。特に近年、共通テストの英語を見てもわかりますが、速読の力、誤解を招くかもしれませんが、フィーリングで読む力が必要です。日本語のパンフレットや広告文を読むのに、読解力はそれほど必要としません。ただ、情報量が多いため、ざっと読んで、必要な情報を取り入れる力は必要です。英語の共通テストもこれと同じです。
しかし一方、国公立大の下線部訳や難関私大では昔ながらの正確に構文を読み取り、訳せる力も必要としています。つまり精読の力も必要としています。この二つは意識的に訓練をしないと両方を平行して伸ばすことはできません。三輪塾の生徒がこのようなテストでも普通に高得点を取っているのは、基本から発展までの力をおのずと身に付けているからです。
本物の英語力を付けたいのであれば、ぜひ三輪塾にお越し下さい。