マジシャン別Very Best集

Max Malini

Blindfold Card Stabbing

 

カード・スタビング

2000/10/20

最初に

マックス・マリニ(1873-1942) の「ブラインドフォールド・カード・スタビング」を紹介します。

現象

一組のトランプから、数名の観客にカードを1枚ずつ取ってもらい、覚えてもらいます。観客の前に行き、トランプを弾いていって、適当なところに戻してもらいます。他の客にも同じようにしてもらいます。

すべての観客のカードをデックに戻したら、バンダナかマフラー等で目隠しをします。これは観客にしっかり縛ってもらいます。

デックを観客に3つの山に分けてもらいます。テーブルの上に出しておいたナイフを観客に取り上げてもらい、手渡してもらいます。ナイフの先で、3つの山を適当に混ぜてしまいます。カードはテーブルの上に散乱した状態になっています。さらにナイフの先でカードを適当に跳ね上げ、表と裏が混ざり、どこに観客のカードがあるのか、まったくわからなくなります。

目隠しをしたまま、1枚のカードにナイフを突き立てます。最初の観客に、先ほど覚えたカードを言ってもらい、ゆっくりとナイフに刺さっているカードを見せると、間違いなくその人のカードです。同じように、他の観客のカードも当てていきます。

最後の観客のカードは、ナイフをテーブルに突き刺したままゆっくりとテーブルを観客のほうに傾けてゆきます。ナイフで刺さっているカード以外はすべて滑り落ちてしまい、一枚のカードだけがテーブルの表面に刺さって残っています。最後の観客に覚えたカードを言ってもらい、ナイフをテーブルから引き抜きます。カードを見せるとそれが観客のカードです。

最後に

このマジックには有名なエピソードがあります。箴言集で紹介しておきましたので、それもぜひ知っておいてください。

今回、これを紹介しようと思ったのは、ジョニー・トンプソンがビデオでやっているのを見たからです。このトンプソンのビデオ"Commercial Classics of Magic Vol.1-4" (L&L Publishing, 1999年、4本セット$110)は大変すばらしいので、ぜひご覧になることをお薦めします。

目隠しをした状態で、テーブルの上に乱雑にばらまかれているトランプをナイフで突き刺すというのは、実際に見ると原理を知っていても強烈な現象であることがわかります。

ポイントはカードをラフに扱うところでしょう。目隠しをしたまま、三つに分けてもらった山をナイフの先で適当に混ぜる動作を見ると、これで本当に当てられるのかと思ってしまいます。

大変効果的なマジックであることはわかっていても、このマジックがあまり演じられないのにはそれなりの理由があります。最大の理由はテーブルに傷をつけてしまうからです。マリニのように、そこの奥さんから文句を言われとき、「これはマリニがつけた傷だと言えばよい」と平然と言えるマジシャンはまずいないでしょうから。

また、テーブルがガラスや大理石のような硬いものではナイフが刺さらないため、演じることができません。このような点をカバーしながら、これをやりたい場合、自分でクロースアップマット程度の大きさの板を持参して、その上で演じる方法があります。実際、トンプソンも"まな板"の大きいような板を持ってきて、その上でやっていました。

ただこれは見た目に美しくありません。どうしても演技がせせこましくなってしまいます。できることなら大きなテーブルに、思いっきりナイフを突き刺して演じたいものです。しかし、後でクレームがついた場合のことを考えると、恐ろしくてうかつにはできないでしょう。これを演じるときだけ板を出してくるのは興ざめですので、クロースアップマットの下に、薄い板を貼り付けたものを作り、このマジックを予定しているときは、最初からその上でクロースアップマジックを見せておき、そのままこのマジックを行えば違和感もないかも知れません。

とにかくこのマジックをやるときだけ板を取り出してくるのがいやで、それが以前から気になっていました。しかし、今回ビデオでトンプソンの演技を見た限りでは、板を使っても、目隠しをしてナイフで突き刺すという現象が強烈なため、それほど気になりませんでした。

それと鋭利なナイフを使いますから、ヘタに演じると大変品の悪い芸にもなります。そのあたりのこともよく考えて、うまく演じることが大切でしょう。ナイフを振り回すだけで嫌悪感を持つ人がいることも理解しておいてください。

書籍としては"Malini and His Magic" by Dai Vernon Edited by Lewis Gansonにも解説されています。これも今はL&Lから復刻されていますので、入手可能です。


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