Very Best集
Sponge Balls
2000/12/20
最初に上の写真のような、スポンジのボールを使うマジックです。 ボールの大きさは直径が2センチくらいのものから5センチくらいのものまでありますが、最もよく使われているのは3、4センチ程度のものでしょう。
クロースアップマジックではカードやコインがよく使われますが、このスポンジボールを使うマジックほどうけるマジックは他にはありません。手伝ってもらう観客が子供や若い女性であれば、「キャーッ!」という声があがるほどのリアクションが返ってきます。
現象が観客自身の手の中で起きますので、本物の魔法のように思えるのでしょう。
バリエーションとして、スポンジのウサギや犬を使ったものもよく演じられています。 また流行りのキャラクター、最近でしたら「ポケモン」等もあります。
現象
これが定番という現象はありません。導入部分もクライマックスも数多くのバリエーションがあります。ごく一般的なものを紹介します。
1.スポンジのボールを2個テーブルの上に置いて、観客に1個を指定してもらいます。観客が選んだボールを取りあげ、手に握ってもらいます。マジシャンは残っているボールを自分の手の中に握ります。「Go!」と言ってからマジシャンは手を開けると、ボールが消えています。観客に手を開けてもらうと、2個のボールが現れます。ここで観客は大変驚きます。
2.ボールを一個取りあげ、半分に引きちぎると分裂して完全な2個のボールになります。今ボールは全部で3個あります。このうちの2個を観客に握ってもらい、残った1個をマジシャンは手に握ります。先ほどと同じように「Go!」と言ってから、手を開けるとマジシャンの手にあったボールが観客の手から現れます。
このあとは色々な終わり方があります。
例えば、マジシャンは3個のボールのうち2個を自分で握ります。1個をポケットにしまいます。手を開けると、ボールは再び3個になっています。今とおなじことをもう一度行い、手をひらくと、今度はボールが全部消えてしまっています。
ボールが全部消えるところでは、逆にボールを20個から30個くらい出現させる方法や、まったく違うもの、例えば卵やレモンのようなものにボールを変えることもあります。
最後に
スポンジのボールを初めてマジックに使ったのは誰なのか、実際のところははっきりしません。
フランク・ガルシアが1976年に出した"The Encyclopedia of Sponge Ball Magic"によると、印刷物として残っているものとしては、I.B.M.の機関誌"The Linking Ring"(1926年10月号)に載ったJesse J. Lybargerの記事が最も古いもののようです。しかし現象もごく単純なもので、現在のように洗練されたものではありません。
これ以前から、シカゴでマジックショップを経営していたジョー・バーグ"Joe Berg"(1903-1984)がスポンジボールを使用していたことはわかっています。しかしジョー・バーグは「カップ・アンド・ボール」の玉としてスポンジボールを使っていただけですので、現在のようなスポンジボールのルーティンと呼べるものではなかったのでしょう。
今行われている手順に近いものとしては、1930年代後半にオードリー・ウォルシュ"Audley Walsh"が出したパンフレットのような薄い解説書、"Spongeball Manipulation"がはじめてのようです。このころからスポンジボールがクロースアップマジックで広く演じられるようになり、重要な位置を占めるようになりました。
日本では1960年代後半までスポンジのボールは市販されていませんでした。そのため食器を洗うスポンジの”たわし”をはさみで切って、ボールを自作したものです。70年代に入ってから、アメリカのゴッシュマンが販売していた大変柔らかいスポンジボールが日本にも輸入され始めました。これが世界中でスポンジボールの定番になり、その後すぐ、日本でも同じような素材のスポンジボールが製造されるようになりました。 今ではどこのマジックショップにもおいてありますので、自作する必要はなくなりました。
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