Online Lecture

3枚のカード

1999/3/3


最初に

「オン・ライン・マジック教室」の第2回目です。

初回の『スカーニーの1,000ドルのカード・トリック』には数多くの申し込みがありました。幸い好評でしたので、2回目として『3枚のカード』をご紹介します。

これは大変古くからあるマジックです。原理も単純であり、多くの入門書に載っているようなものですが、決してあなどれません。一般の人相手にやってみると、意外なくらい驚いてもらえます。トランプマジックでは、一枚取ってもらったトランプを当てるタイプのものは数多くあります。しかし、「心で思っただけ」のトランプを当てると、観客は驚きます。

メンタルマジックとしては基本中の基本のようなものですが、このようなものをきちんとした演出で見せると、マジックというのはタネではなく、演出が重要なのだということがわかってくると思います。うまく演じると、本物の「読心術」のように見えます。最近流行の「超魔術的演出」で見せれば、観客はあなたに「超能力」があるのかと思うかも知れません。(笑)

前回同様、指先の技術はまったく不要です。今回もトランプマジックになりましたが、コインマジックや、パーティマジックなども紹介するつもりです。

現象

テーブルを囲んで、数名の人がいるところで見せるのに適しています。マジックというより、「超能力の実験」という雰囲気で見せたほうがウケるでしょう。観客に向かって、次のように切り出します。

「今からちょっとした実験をやってみたいと思います。どなたか協力していただけますか?」

観客の中から適当な人、なるべく人のよさそうな人を選んで、出てきてもらいます。テーブルを囲んでいるのでしたら、席に座ったままでかまいません。手伝ってくれる人が決まったら、次のように説明します。

「トランプを3枚だけを使って、ある実験をやってみたいと思います。それは読心術、つまり、人の心の中を読む実験です。これはあくまで実験ですから、もしあなたにウソをつかれると、まったくできなくなってしまいます。今から行う実験では、ウソをつかないで、正直におっしゃっていただくことを約束していただけますか?」

観客が同意してくれたら、その人に一組のトランプを渡して、よく切り混ぜてもらいます。そして、その中から、適当に3枚のトランプを「表向き」に抜き出してもらいます。このとき、同じ数字のトランプは含まないように頼んでおきます。同じ数字のものがあると混乱しやすいので、3枚とも違う数字のトランプになるようにしてもらいます。

抜き出された3枚は、他の観客にもマジシャンにも見えるように、テーブルの上に3枚とも表向きのまま置きます。観客もマジシャンも、何のトランプが抜き出されたのかわかっています。

今から、助手の人に、3枚のトランプのうち、一枚のトランプだけを心の中で決めてもらいます。「決めた」と言ったら、「今、あなたが何のトランプを思ったのかは、私も知りませんし、この部屋にいる人も、あなた以外、だれも知りません。では今から実験を行います。テーブルの上には3枚のトランプがありますが、今なら、まだ変えてもかまいません。どうします?変えませんか。はい。では、これから先はもう決して変えないでください」

マジシャンはテーブルの上の3枚をいったん集めて、自分の上着の右ポケットに入れてしまいます。このとき、次のように説明します。

「テーブルの上には3枚のトランプが表向きになっていますので、それが視界にはいると、集中するのに雑念が入ります。いったん、見えないようにします」

こう説明して、上着の右ポケットに3枚のトランプを入れてしまいます。

「では今から実験を始めます。あなたが先ほど心の中で決めたトランプを強く思ってください。私があなたの脳から出ている微弱な脳波を感知して、それを読み取る実験です。では思ってください。ただ数字を思うより、トランプ全体のイメージを頭の中に描いてください」

マジシャンはおもむろにポケットに手を入れ、裏向きのまま、1枚のトランプを取りだします。

「まだはっきりしませんが、少なくともこれでないことは確かだと思います。消去法で、これではないと思うものから、減らして行くことにします」

マジシャンは取り出した1枚を裏向きのまま、テーブルにある、残りのトランプの山に戻します。同じようにもう一枚、これではないと思うトランプをポケットから取りだし、山の上に戻します。

今、ポケットには1枚しかトランプは残っていません。ここで観客に、心の中で思ってもらったトランプの名前を言ってもらいます。みんなに聞こえるように、はっきりと声に出して言ってもらいます。

マジシャンは、ポケットに残っていた1枚を取り出し、ゆっくりと観客のほうに表を向けると、それはまさしく、観客が心に思ったトランプです。

コメント

どうです?結構不思議でしょう?(笑)

マジックというのはタネではなく、演出だということを知っていただくために、相当詳しく、セリフまで入れて紹介しました。このセリフは私が作ったものです。

このマジック自体は大昔からあり、たいていの入門書にもやり方は書いてあります。しかし、演出に関してはどれもあまり詳しくありません。そのため、タネだけを知ったとしても、こんなものが不思議だとは思えないないでしょう。

どのようなマジックに言えることですが、タネ自体の占める割合は、そのマジックの一部に過ぎません。とりわけ、「メンタル・マジック」は演出が重要です。演出次第で、ささやかなマジックが突然見違えるようなマジックになります。決して、原理だけを見せるのではなく、セリフや演出を十分練習して、演じてください。

最後に一言

このマジックは、タネ自体は少しでもマジックをやったことのある人なら大抵知っています。ということで、今回は種明かしもオープンにして、だれにでも読めるようにしようかと思いましたが、マジックをやっている人ならだれでも知っているからと言え、一般の人に無節操にタネを教えてもよいということにはなりません。現象を見ずに、タネを知ってしまうと、マジックはつまらないものです。ちょこっとのぞいてみて、タネだけを知ってもこのトリックの良さは決してわかりません。特にマジックをほとんどやったことない人ならなおさらです。「現象」を読んで、どうしてもやってみたいと思う人に限り、やり方を教えることにしました。それで前回と同じように、メールで申し込んでいただくことにしました。

ただし、前回「スカーニーのトリック」を申し込んでいただいた方には、今回はメールなしでも読めるようにします。画面の下にある、「前回申し込んだ人のために」をクリックしてください。

★注意:今回がはじめて、もしくは前回申し込んでいただいた方で、お知らせした「URL」の場所を忘れてしまった方や、私からの返信メールを消してしまった方は、新たに申し込んでください。今回がはじめての方は、必ず、あなたの氏名と簡単な自己紹介を添えて申し込んでください。

「前回申し込んだ人のために」


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