AT THE CARD TABLE
カード・マジックの技法
第1回
カードの持ち方
「ディーリング・ポジション」と「エンド・グリップ」
1999/11/14
カード(トランプ)の持ち方を解説します。大変基本的なことですが、その人がカードを持っている手つきを見ただけで、どの程度、カードの扱いに慣れているか一目でわかってしまいます。
<ディーリング・ポジション>"Dealing Position"
最初に、基本となる持ち方を紹介します。左手に持つときのポジションです。お断りをしておきますが、以下の写真は私の手ではありません。モデルになってもらったのは、マジックをまったくやったことのない人です。彼に持ち方を教えたときの写真です。そのため、まだ少々余分な力が入っていたり、ぎこちないところもありますが、今回はポジションの確認が中心ですから問題ありません。
では、始めましょう。(以下の解説で、「右」「左」とあるのは、カードを持っている人から見ての「右」「左」です。)
「ディール」"Deal"というのは「配る」という意味です。カードを配るとき、左手にカード一組を持ちます。そのときの持ち方を「ディーリング・ポジション」と呼んでいます。
写真【1】
上の写真【1】が「ディーリング・ポジション」です。別にどうってこともない持ち方でしょう?しかし、普通はこのようには持ちません。近くにカードがあれば、一度実際に一組のトランプを持ってみてください。意識しないで、普段あなたがゲームをしているつもりで、持ってみてください。それから上の写真と比べて見てください。
どうでした?同じようになっていますか?一般の人にカードを持ってもらうと、9割以上の人は【1】のようには持ちません。どこが違うかといいますと、人差し指の位置です。
【1】では人差し指がデックの前に来ています。ところが、カードを持つことに慣れていない人が持つと、人差し指も他の3本と同じように、デックの右側にきます。(下の写真【2】) つまり、親指が上に来て、残りの指は4本ともデックの右側に来るように持ってしまいます。これはよくありません。
写真【2】
左手に持つとき、親指はトップ・カードの上に、人差し指はデックの前方に、残りの3本の指は、デックの右になるようにします。人差し指を前方にするのは、カードが前から滑り落ちることを防ぐためです。デックを3カ所で保持することで、カードを配っても、いつも揃った状態で持つことができます。
次にチェックするのは、デックの右にある3本の指です。写真【3】は悪い例です。右にある3本の指が、上に出過ぎています。これではカードを配るとき、指が邪魔になって、右の方へカードを抜き出すことができません。写真【1】と比べてください。【1】では、右にある3本の指はトップカードからごくわずか、実際には5ミリ程度しか上に出ていません。
写真【3】
写真【1】のような正しいな持ち方をすると、デックのボトムカードと手のひらの間には空間ができるはずです。手前から見ると、指が1,2本くらい入る隙間が開いていると思います。デックを手のひらにべったりとつけて持つのではありません。写真【4】は正しい持ち方をしたときの様子を手前から見たところです。空間ができていることを確認してください。この空間の大きさは、手の大きさや、持っているカードが「ポーカー・サイズ」か、「ブリッジ・サイズ」かで変わってきます。
写真【4】
次に写真【5】のように、トップカードを右に押し出します。実際には、このように押し出す前に、親指をいったん写真【6】のように、左の方へ引く必要があります。親指を引いてから、右の方へ押し出すと、写真【5】のようになり、トップカードだけがデックのトップから右に飛び出した形になります。このとき、右側にある3本の指が上に出過ぎていると、うまく押し出せませんから調節してください。下の左が写真【5】で、右が写真【6】です。
押し出すカードは1枚だけになるようにしてください。常にトップカードだけが右に出るようにしてください。コツとしては、親指で右に押すとき、3本の指の上を、トップカードが擦りながら押すと、2枚目より下のカードは3本の指に引っかかって右には行けないので、下のカードは崩れることなく保持できます。
トップカードが右に少し飛び出したら、右手の親指と人差し指、中指でトップカードの右上隅をつかみます。(写真【7】)このときも、トップカードだけが右の方に出ており、それより下のカードは、最初の位置からずれていないことを確認してください。
写真【7】
右手でつかんだトップカードは、そのまま斜め右上へ動かし、テーブルの上に配ります。これを繰り返して、カードがなくなるまで、配ってください。配る位置は、今は練習ですから、同じ場所に重ねながら配ってかまいません。 (写真【8】)
写真【8】
もう一つ注意しておきます。配って行くとき、デックのトップカードは、いつもテーブルの表面と並行になるように保持しておくことも重要です。イスに座ったままカードを配ると、手に持っているデックの手前が下がり、向こうが上がった形になります。このような持ち方のまま配ると、正面に座っている人から、トランプの表面が見えてしまうことがあります。これもカードを扱い慣れていない人がカードを配ると、よくやることです。いつもトップカードは並行になるよう、意識してください。
<エンド・グリップ"The End Grip">、または<ビドル・ポジション"Biddle Position">
次は右手でカードを持つときの持ち方です。ディーリングポジションでデックを持っているとき、それを右手で取り上げ、デック全体をテーブルの上に置くという動作は、カードを扱うとき頻繁に行います。
写真【9】
写真【9】のように、右手で、左手のカードの上から持ちます。持ち方は、右手の親指がデックの手前中央、人差し指は軽く曲げて指先がデックのトップに当たるようにします。向こうの端を、中指と薬指で保持します。小指は軽く添えてあるだけです。このような持ち方を「エンド・グリップ」、または「ビドル・ポジション」と呼んでいます。日本では「ビドル・ポジション」という呼び方のほうが広く知られていますが、海外では「エンド・グリップ」と呼ぶことのほうが多いと思います。
写真【10】
右手で保持できたら、デック全体を持ち上げ、写真【10】のようにテーブルの上に置きます。
ディーリング・ポジションとエンド・グリップの持ち替えの練習を何度もやってください。左手にあるデックを右手で取り上げ、一旦テーブルの上に置き、またデック全体を右手で取り上げ、左手に移す練習をしてください。何度もやっていると、自分にとってしっくり来る位置が見つかります。
補足1:写真【9】、【10】のように、エンド・グリップで持つとき、親指以外の4本の指は、隙間が開かないように揃えておく習慣をつけてください。これは将来、「パーム」など、「秘密の動作」を練習するとき、重要になってきます。クロース・アップ・マジックでは、カードに限らず、常に指は隙間が開かないように意識しておくことは大切です。
補足2:カードを揃える動作も一緒に覚えてください。【9】のような持ち方で、デックは右手で保持しています。左手の人差し指を曲げ、デックのボトムに軽く当てます。デックの左側を親指で、右端を3本の指で左右から挟む感じでデックを揃えます。このとき、右手で持っているデックを前後に動かし、左手の指でデックを挟むようにしていると、デックの左右はきちんと揃います。揃ったら、ディーリング・ポジションの位置に戻します。
前後のズレは、やはり今と同じ位置で、右手だけを左右に動かすことで揃えます。右手の親指と、中指で軽く圧迫して、右手だけを前後に動かします。デックは左で持ち、固定しています。