Devil Handkerchief
1999年6月18日
コイン、名刺、指輪、ライター程度の小物をを消す道具として、昔からよく知られている道具として、「悪魔のハンカチ」(Devil Handkerchief)と呼ばれるものがあります。自分で作ることもできますが、マジックショップでは商品として販売もされています。 基本的な使い方として、ハンカチの四隅を持って袋のような状態にします。そこへコインなどを入れ、一振りしてハンカチを広げると、中に入れた品物が消えてしまうというのが普通の使い方です。 私自身はこのハンカチのことは随分昔から知っていましたが、実際には使ったこともなかったのです。ところが、数年前からテンヨーが売り出し、売場でディーラーの人が実演しているのを見ると、これが予想外に売れて、観客にウケているのです。 ある程度マジックをやっている人であれば、1枚のコインを消すのにこんなものを使う必要もないので、つい軽視してしまうのですが、一般の人にとっては、コインだけでなく、ライターや、慣れると時計や一組のトランプでも、たいした練習も不要で消してしまえるのですから便利なのでしょう。 テンヨーで販売されています「デビルハンカチ」(3,000円)は上のような黒地に白の水玉です。このデザインは何ともひどく、こんなヘンなハンカチを持っている人などいません。いかにもマジックの道具という感じがして、それだけで使う気にならない人もおおぜいいるはずです。それを考慮して、他のメーカーからは普通のハンカチやスカーフに加工したものも販売されています。自分でも簡単に作れますがから、自作するのも悪くありません。構造は『シルクマジック』(松田道弘著、東京堂出版)にも解説されています。 このハンカチは小物を消すのが目的の道具ですが、消すだけでは使い道はあまりないでしょう。例えばライターを消したとしても、それだけで終わるのなら、観客はハンカチに仕掛けがあると思います。せめて消した後、ハンカチを観客に手渡せるならマジックになりますが、消した後ハンカチを調べてもらうことは出来ませんので、マジックをある程度やっている人であれば使う気にはならないのです。しかし、これを消すだけの目的でなく、現象の一部に使用するのであれば使い道は広がります。 例えば、「カード・イン・レモン」です。観客に取ってもらったトランプを小さく破り、破った破片のひとつを観客に持っていてもらいます。そのほかの破片をこのハンカチに入れ、一振りすると、破片は全部消えています。 最初からテーブルの上に置いてあったレモンを取りあげ、観客に渡して調べてもらいます。どこにも切れ目などない、本物のレモンです。それを観客の目の前でナイフで二つに割ると、中から一枚のトランプが出てきます。広げてみると、観客が覚えたトランプです。コーナーが一部破れていますので、観客の持っている破片と合わせると、ぴったり一致します。 このようなマジックの中で、破ったトランプを消すのであれば、マニアでも使う気になるはずです。また、ポール・ダニエルズが「テレビジョン・カード」を演じるとき、これを使っていました。「テレビジョン・カード」というのは、2枚の透明なガラスをゴムで止めておき、それをテーブルの上に立てて、観客から見えるように置きます。その2枚のガラスの間に、瞬間に観客のトランプが出現するという大変ビジュアルな現象のマジックです。 これに「デビルハンカチ」を使うのであれば、破ったトランプをハンカチの中に入れ、ガラス板の前まで持って行き、その前で一振りするとハンカチの中に入れた破片が消え、ガラスの間に復活した状態で観客のトランプが現れます。 勿論、これを演じるためには「カード・イン・レモン」や「テレビジョン・カード」を知らないと出来ませんが、このようなものと組み合わせると、使える道具になるはずです。 また、テンヨーからはこの「デビルハンカチ」にちょっとした加工をしたもので、「フラワーサプライズ」(4,200円)も販売されています。これはディーラの人がいる売場だけで販売されています。 「フラワーサプライズ」は、最初、このハンカチを使ってコインの出現を行います。ハンカチを手の上で返すたびに、コインが数枚出現します。さらに1本のタバコとライターが現れます。タバコに火をつけ、煙をハンカチに吹きかけると、ハンカチの中から上の写真のような2本の花が出現します。 ここまでやれば、これだけでちょっとしたルーティンになっていますから、人がある程度集まっているような場所でやっても効果的です。 魔法都市の住人 マジェイア |