The Dos and Don'ts of Magic
マジックにおける「べからず集」

 

第1回:質問してはならない

1998/4/29

ビジネスの世界であれ、芸の世界であれ、誰かの「成功物語」は後から続く人にとって参考となる部分もありますが、その人と同じようなことをしてもうまく行くとは限りません。ところが、「失敗物語」は教訓の宝庫です。こちらのほうが成功物語より役に立つことが多いものです。「私はこれで失敗しました」という話は実践的で、誰にでも当てはまるものです。

「べからず集」では、そのようなものをいくつか紹介して行くつもりです。


観客に何かを質問するとき、気をつけなければならないことがあります。

マジシャンは常識的な返事を期待していたのに、予想外の返事が返ってきて、その後、しどろもどろになっている場面を目撃したことがあります。

クロースアップマジックのコンベンションで実際にあったことです。あるマジシャンはスポンジボールを鮮やかに消しました。そのとき、助手として手伝ってもらっていた観客に、「ボールはどこへ行ったと思いますか?」とたずねたのです。

そのとき観客から返ってきた答えは、マジシャンが予想していなかったものです。「正解」が返ってきたのです。たずねられた観客はマジシャンのXXを指差し、「XXにあります」と言ったのです。(笑)

どうです?困るでしょう?(笑)

もし「正解」が返ってきたら困る場合があるのなら、そのような質問は最初からしなければよいのです。また、正解は返ってこなくても、観客の中にはわざとおかしな返事をしてウケねらいに走る人もいます。

ある程度経験を積んで慣れてくると、観客の顔を見ただけで、助手として向いているかどうかわかるようになってきます。また、多少のアドリブにも反応できるようになります。しかし、手順の中で、どうしても観客に対して質問する必要がある場合は、証人喚問のときの想定問答集ほどでなくても、いくつかの可能性を考慮してハーサルをしておくことは重要です。

虚構の中で遊ぶには、ディテールにも神経を張り巡らせておかなければうまく行きません。

魔法都市の住人 マジェイア


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