「トランプマジック」に適したトランプの選び方

 

Playing Cards

 

追加更新:1999/11/15
1998/10/17


トランプの選び方

「トランプマジック」に使うトランプは特殊な仕掛けのあるものではありません。ごく普通に、ゲーム用として使われているものでかまいません。とは言え、何でもよいと言うわけでもなく、トランプマジックに適しているものと、そうでないものがあります。これからトランプマジックを始めてみたいと思っている人で、もし家にトランプがあるのでしたら、大抵、それでもできますが、道具類はなるべくよいものを持っているに越したことはありません。道具が悪いとしなくてもよい苦労や、上達の妨げになることもあります。どのようなトランプがマジックに適しているのか、基本的な知識だけでも入れておいてください。

マジックをやっている人ほとんど全員と言ってもよいほど、みんなが使っているトランプがあります。アメリカ製の、紙でできたトランプです。これはプロからマニアまでみんな使っています。アメリカではコンビニのようなところでもいくらでも売っています。値段も2ドルから3ドル程度のものです。日本で買えば税金などもついて少し高くなりますが、それでも700円程度のものです。それを紹介しますので、ぜひ購入してください。

その前に、「トランプ」という言葉ですが、これは日本でしか通じません。英語では「プレイング・カード」"Playing Cards"と言います。マジックをやっていない人や、トランプマジックを見慣れていない一般の人に、「カードを使います」と言えば、普通はトランプだとは思わず、何かのカード、例えば野球の選手やアニメのキャラクターなどが描かれているトレーディングカードのようなものを思い浮かべるでしょう。またはテレフォンカードのようなものを想像するかもしれません。

マジシャン同士の会話では、「トランプ」という言葉はほとんど使われることはありません。大抵、「カード」で通しています。「トランプ・マジック」も、実際は「カード・マジック」と言っています。しかし、一般の人にカード・マジックを見せるときは、私はなるべく「トランプ」と言うようにしています。これは先に述べたような理由で、日本で「カード」というと、トランプのことだとは思われず、別のカードを思い浮かべる人が多いからです。

「トランプ」という言葉は、ポルトガル語です。それも、カードゲームの中で使う専門用語です。昔、トランプが日本に入ってきたとき、ポルトガル人がゲームの中で何度も「トランプ!」と叫んでいたので、それを聞いた日本人が、このカードのことを「トランプ」というのだと思ったようです。 トランプという言葉は、実際は「切り札」のことです。これが「私の切り札だ」、「ついに切り札を出す」とかいった意味で、日常的にも使われるようになった「強いカード」のことを「トランプ」と言います。 ポルトガル語ではカード全体をさすときは「カルタ」 と呼びます。カルタという言葉も日本語として定着していますが、これが今でもポルトガルで使われているカード全体をさす言葉です。

チェックポイント

1.サイズ

まず大きさですが、一般的なサイズは2種類あります。ひとつは日本で昔からごく普通に使われているトランプと同じ大きさのものです。あれを「ブリッジ・サイズ」と呼びます。もう一つは「ポーカー・サイズ」です。ポーカーサイズは、ブリッジサイズより横幅が5ミリほど広くなっています。縦の長さはブリッジサイズのほうが、ほんの少し(1ミリ程度)長くなっています。上の写真では右端がブリッジサイズで、他の二つがポーカーサイズです。

元来、ブリッジサイズは「コントラクト・ブリッジ」など、手に持つ枚数が多いカードゲームのとき使用し、「ポーカー」や「ブラック・ジャック」のように手に持つカードが少ないゲームのときはポーカーサイズを使用します。しかし、これは何も絶対的な決まりがあるわけではなく、慣習のひとつにすぎません。 ボーカーでブリッジサイズのトランプを使ってもまったく問題はありません。

マジックに使用する場合はどちらを使ってもかまいません。女性や手が小さい人はブリッジサイズにしてください。無理にポーカーサイズを使うことはありません。男性で、平均的な手の大きさの人はポーカーサイズのほうが多少でも見栄えがしますから、こちらをお薦めします。

2.材質

トランプの材質は、紙製とプラスチック製のものがあります。プラスチックのトランプはカードマジックには不向きです。それは汗などが付着するとカードとカードがくっついて、大変扱いにくくなるからです。カードマジックでは、まず絶対にプラスチックのトランプを使うことはないと思ってください。

3.デザイン

トランプの表と裏はわかりますか?「ハートの7」のようにマークや数字が印刷されている面が「表」です。裏はきれいなデザインの模様などが印刷されている面です。表はよほど特殊なものを除いて何でもよいのですが、裏のデザインについては少しチェックする必要があります。

上の写真の中央と右端の2枚には縁に白い枠があることを確認してください。左端にはその枠がなく、隅まで同じデザインになっています。カードマジックには白い縁のあるものが適しています。端までぎっしりと模様が入っているものは、マジックによっては都合の悪いこともあるのです。

デザインに関しては、もう一つ注意しなければならない点があります。それはデザインが上下対称になっているものを選ぶことです。上の写真に写っているトランプは、どれも上下を逆さまにしても同じであることを確認してください。ところが裏のデザインに、アニメのキャラクターや風景などが印刷されていると天地があり、上下が対称ではありません。このようなものはマジックによっては都合が悪い場合もあります。

4.推薦するトランプ

上記の3つのチェックポイントをクリアーしたものとして、アメリカの"U.S.Playing Card Company"「バイシクル」印を推薦します。上の写真の中央と右端が「バイシクル」のシリーズでも最も一般的な「ライダー・バック」"Rider Back"と呼ばれているものです。天使が自転車に乗っている絵がデザインされています。デパートや、東急ハンズのような店では大抵扱っています。値段は1個700円前後でしょう。また、「バイシクル」には同じデザインで「赤裏」のものと、「青裏」のものがあります。色はどちらでもかまいません。U.S.Playing社製のもので、バイシクル以外では「タリホー」"Tally-Ho"も好まれて、マジシャンによく使われています。左端のものは、ラスベガスなどのギャンブル場で使われています。「ビー・デック」"Bee Deck"と呼ばれるもので、各ホテルの名前が入っているのが普通です。

日本製でも紙のものがありますが、品質がよくありません。カードの腰の強さ、耐久力、縁のそろい具合など、どれを比べてもU.S.Playing社のものより劣ります。カードマジックをするのであれば、上記の「バイシクル」を使うことをお薦めします。

★「パイシクル」は、デパートの玩具売り場、東急ハンズなどのゲームコーナー、その他パテーティグッズなどを扱っている店で購入できます。

注意:カードマジック用のトランプをゲームに使うことは絶対避けてください。ヘンなくせがついたり、傷み具合が激しく、大変扱い難くなります。

補足1.カードの寿命

トランプは普通にカードマジックに使うのでしたら、結構長持ちします。隅を折ってしまったり、水で濡らすとすぐにダメになりますが、普通に使うだけなら1年から2,3年はもつでしょう。たまにさわる程度なら、10年以上使っても大丈夫です。うちにはデックだけでも100個以上はありますが、中には2,30年前に使っていたものもありますが、使おうと思えば全然問題なく使用できます。ただ、あまり汚いものは使わないでください。横から見たとき、汗などで縁が黒くなったものや、表面に小さなシミのようなものが付いていると見た目にもきれいではありませんので、新しいものに買い換えてください。 買ったところで700円程度のことですから、このようなところでケチらないでください。 高木重朗氏など、毎週新しいカードを二組おろして、使っておられました。

補足2.カードの滑り

古くなったトランプは表面のコーティングも取れてしまい、滑りが悪くなります。逆に封を切ったばかりの新しいトランプはコーティング効きすぎていて、滑りやすく使いづらいのです。おろし立てのトランプは、数時間,シャッフルなどをして、手になじませる必要があります。とくにここ10年くらいは、コーティングが効き過ぎており、マジックをするには滑りすぎる嫌いがあります。そのため、友人の中には20年以上前にまとめ買いをしたデックを今も大切に使っている人もいます。

補足3.クロース・アップ・マット

カードマジックを見せるときはテーブルの上で演じることが多いのですが、木やガラスのテーブルに直接トランプを置くと、取り上げるとき、つまみ上げにくいのでもたもたします。これは見ていてもあまりよいものではありません。本当はテーブルの上に、「クロース・アップ・マット」というマットを敷くのですが、それを持っていないときはテーブルの上に何かクロスを敷くだけでも違います。クロースアップマットは、大抵のマジックショップで扱っています。

大きさは日本で一般に販売されているものは30センチx40センチ程度のもので、裏にゴムかスポンジが張ってあり、表面はフェルトやビロードのような加工がされています。これを使うとトランプを置いたり、取り上げるのが大変楽になります。またこのクロース・アップ・マットを使うと、テーブルの上に「ステージ」を作ることができます。このマットの上はテーブルにできた臨時のステージです。観客にも、このマットの上は「特別な場所」であるという印象を与えることができて何かと好都合です。カードマジックに限らず、クロース・アップ・マジックを本格的にやろうと思えば必須アイテムの一つですのでぜひ入手してください。値段は2,000円程度です。

外国製ではギブソンというメーカーのものが最も普及しています。私もこのメーカーのマットが好きで、昔から使っています。これは日本のものより少し大きく、裏のゴムも柔らかいのでまったく滑りません。アメリカのショップであれば大抵扱っています。値段は15ドル程度であったと思います。耐久性は少々弱く、3年くらいで裏のゴムが傷んできます。しかし、大きさも日本製より大きいのでコインやカップアンドボールなどのときも具合がよいのです。

トランプについて雑談が「ラウンド・テーブル」のCoffee Breakにもあります。

追加更新(1999/11/15):ポーカーサイズとブリッジサイズは、どちらも縦の長さは同じだと思われていましたが、実際にはブリッジサイズのほうが1ミリほど長いことがわかりました。文中のその箇所を訂正しておきました。(FMAGICのLILLIPUTさんからの情報です)

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