「奇術」の定義

1999/4/24

「奇術って何ですか?」、「奇術師って何?」とたずねられたら、あなたはどのように答えますか?一度考えてみてください。

『広辞苑』(第五版CD-ROM版)で「奇術」を検索してみますと、

きじゅつ【奇術】
1.不思議な技術
2.手品(てじな)

となっていますが、これでは話になりません。まったく何の説明にも、定義にもなっていません。

自分にとってあまりにも当たり前すぎることをあらためて問われると、答に窮することがあります。世の中には、そんなことくらい誰でも同じようにわかっていると思っていても、必ずしもそうでないことがよくあります。何かについて論議しているとき、各人が持っているその言葉に対するイメージや定義に大きな差があることが少なくありません。差があることに気がつかないで話を進めても、かみ合うはずがありません。これは「奇術」についても言えます。

奇術の定義には色々ありますが、泡坂妻夫氏による次の定義は過不足なく、奇術という芸をうまく言い表していると思います。

奇術とは、合理的な方法によって、観客の知覚を誤らせ、不思議の世界を体験させることを目的とした芸能である。

『トリック交響曲』泡坂妻夫 時事通信社 1981年
初出は風路田氏発行の同人誌、『NEW MAGIC』に掲載。

確かにこのどれが欠けても、エンターテインメントとしての奇術ではありません。奇術師というのは、このようなことを観客に提供する人です。この定義は、読めば今さらあらためて言われるまでもなく、誰でもわかっていると思うでしょう。しかし本当にそうでしょうか。言われてみればもっともだと思うことでも、それを自覚し、本当にわかっているかどうかで大きな差があります。

奇術を見せるとき、上の定義を思い出してください。

魔法都市の住人 マジェイア


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