Slow Motion Four Aces
最初にヴァーノンの”スローモーション・フォー・エイセス”です。ヴァーノン自身、年代によっていくつかの改案を発表していますが、"Stars of Magic"に載っているものが最も有名でしょう。
私が演じているものも、基本的にはこの"Stars of Magic"に解説されているものと同じですが、最初の4枚のエースを見せて、テーブルに並べる部分は"Dai Vernon The First California Lecture"に解説されている方法を使っています。
観客から見た感じは大差ありませんが、何となく、こちらのほうが説得力があるような気がしています。
現象
4まいのエースをテーブルの上に、T字型に並べます。それぞれのエースの上に、3枚の普通のカードを置いて行きます。
エースのうち、スペードのエースがリーダーエースです。他のエースが一枚ずつ消えて、スペードのエースの下に集まります。
最後に一言
エースが一カ所に集まる現象、「エース・アセンブリー」は今では、すっかりクラシックのひとつになりました。 多くのマジシャンが様々なヴァリエーションを発表しています。
そのようなヴァリエーションの中で、私が好きなのはジェニングスの"Open Travelers"と、ロジャー・スミス(Roger Smith)の"Slow-Motion Ace Switch-A-Roo" (1971年) です。
前者はマニアにはすっかりお馴染みです。4枚のエースだけで行うため、大変ダイレクトな現象になっています。
ロジャー・スミスのは、2段目はまではヴァーノンのスローモーションと同じなのですが、最後のエースが集まるところで、意外な現象がおきます。4枚のエースが、マスターパケットではなく、最後のエースのパケットの場所から出現します。この逆転現象は、当時(1970年代前半)、まだ一般的ではなかったので、大変新鮮で、私もマニア相手に頻繁に演じていました。
その後、類似の現象も数多く発表されるようになり、逆転現象そのものが一般的になり、マニアの間では、もう、どうってこともなくなりました。「ヒッチコックエース」など、やさしく演じられる方法も発表されたので、私もほとんど演じなくなりました。
ロジャー・スミスの原案は2種類あり、ひとつは完全にヴァーノンのスローモーションと同じハンドリングになっています。ヴァーノンの「スローモーション」を正確に知っていればいるほど、最後の逆転現象で驚きます。そのような意味では、完全にマニアをひっかけ、驚かせることを目的に構成されています。当時はこのような「マニア殺し」の現象が世界的に大流行していました。
現在の私は、ロジャー・スミスの4エースはまったくやっていません。それはこの十数年、マニアの前ではマジックをやらなかったので、マニアを喜ばせるようなものをカットしてしまったからです。
ヴァーノンのオリジナルは、今でも好きで演じています。現象自体は決して派手ではなく、むしろ地味なのですが、名人ヴァーノンが、何度も手直しを加えて磨き上げたルーティンというのが感じられて好きなのです。
ヴァーノン自身がこのスローモーションを演じているビデオを見せていただいたところ、最初の4エースをT字型に並べるとき、なるべく大きなT字になるようにすると良いようです。これは三田皓司氏がビデオをご覧になっていたとき気づき、教えていただきました。 カードマジックを演じるとき、普通はクロースアップマットを使います。マットの大きさに制約され、カードをT字型に並べるとき、あまり大きく並べることはできません。 なるべく大きなマットを使うか、テーブル全体にクロスを敷いて、T字型の上一列、3枚のエースが並ぶところは、両端のエースの距離は60センチ程度離れています。 これくらい離しておいたほうが、移動現象がはっきりします。
「エースアセンブリー」の変遷については、松田さんが『松田道弘のカードマジック』に詳しく解説してくださっていますので、興味のある方はお読みください。
魔法都市の住人 マジェイア