My Favorite Tricks

 

森下宗彦氏の
Aces Opener



エースオープナー

 

2002/6/15

最初に

 「エース・オープナー」(Aces Opener)と呼ばれるジャンルのカードマジックがあります。 基本的な現象は、裏向きのデックから観客に4枚のカードを取りだしてもらい、表向きにすると、それがすべてエースというものです。

 大変わかりやすい現象のためいつでも演じられますが、カードマジックの導入に演じると効果的です。しかしこれ自体が相当強烈な現象ですので、ここでやめてしまったほうが印象に残るかも知れません。

 現象自体は、一言でいえば「4枚のエースが出現するマジック」です。しかし方法は優に数百はあるでしょう。やさしいものから難しいものまで、さまざまな方法が考案されています。森下さんのエース・オープナーは、おそらくこの種のものでは難しいかも知れません。しかし森下さんご自身に見せていただくと、怪しげなところなどまったくありません。本当の魔法のように見えます。私も数種類のエースオープナーを併用していますが、この森下さんのが一番好きです。

現象

 一組のカードを観客によくシャッフルしてもらった後、裏向きに、テーブルの上に広げます。観客に4枚のカードを適当に抜き出してもらいます。マジシャンはその4枚を取りあげ、表向きにすると、それがすべてエースです。

 エース・オープナーとしての現象を紹介しましたが、森下さんのオリジナルは少し異なっています。裏でやっていることはほとんど同じですが、エースが出現するのではなく、「一致現象」です。

 まず4人にカードを1枚ずつ抜き出してもらい、覚えてもらってからデックに戻します。よくシャッフルしたあと、デックをテーブルに裏向きで広げます。さきほどの4人にテーブルの上の裏向きのカードから1枚ずつ抜き出してもらいます。その4枚を取りあげ、表向きにすると、それがさきほど自分の覚えたカードである、というものです。

 原理はまったく同じですが、エース・オープナーとして演じるほうが技術的には少し演じやすいかも知れません。オリジナルのよいところは、準備がまったく不要である点です。いつでも演じることが可能です。

 このマジックは『松田道弘のクロースアップ・カードマジック』(松田道弘著、東京堂出版)や『図解カードマジック大事典』(宮中桂煥著、東京堂出版)に解説されています。

コメント

 森下さんがうまいのは「準備」です。エースオープナーとして演じるときは、前もってちょっとした準備が必要なのですが、それをさりげなく、観客が何の注意も払っていないときにやってしまうのです。

 「準備」がうまいため、マニアでもよくひっかけられます。たとえばマニアが集まって遊んでいるようなとき「ひとつやって見せようか」という感じで、森下さんは誰かのデックを借ります。その借りたデックを受け取ったあと、すぐにエースオープナーに入ります。それでも4枚のエースが出現するため、マニアのほうが驚きます。
 実は借りる前に、別のデックから抜き出した4エースをパームしています。このようなことをやられると、どれだけマジックに精通している人でも驚くのも無理はありません。

 森下さんの技術力の高さを語るエピソードは数多くありますが、松田さんからうかがった話で、おもしろいものがあります。

 昔、大変感じの悪いマジシャンがIBM大阪リングの例会にやってきて、カードマジックをいくつか見せたそうです。このとき、そのマジシャンは森下さんにカードを一枚取ってもらい、それを当てるというタイプのマジックを見せました。ところが、最後にそのマジシャンが取りだしたカードはさきほどのカードではありません。サッカートリックでもなんでもなく、本当に失敗したのです。

 本人は「おかしいなー」と腑に落ちないようすだったそうですが、このとき実は森下さんがちょっとしたイタズラをやったのです。一枚のカードを取るとき、実は2枚を重ねたまま抜き出し、そしてそれを1枚のようにしたまま観客に見せたのです。デックに戻すとき、表の1枚をパームして、もう一枚のカードを戻しました。

 確かにこれでは当たりません。家に帰ってから、カードが一枚なくなっていることに気がつき、驚いているかも知れません。

 これはヘンなマジシャンにペナルティを与える意味でおこなっただけですので、誤解のないよう、お願いします。

 最後に、森下宗彦氏をご存じない方のために、簡単に紹介しておきます。森下氏はIBM大阪リングの前身、大阪奇術愛好会が発足した1960年代半ばからのメンバーです。昔、高木重朗氏が「世界のカードマジック・ベストテン」を選ばれたとき、森下さんの「フォーエース・トリック」を入れておられました。これは先ほどのエースオープナーではなく、フォーエースを使った一連の手順ものです。また森下さんの技法はどれも完璧でしたので、それも数多くの伝説が残っています。


魔法都市の住人 マジェイア

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