My Favorite Tricks

Bill in Lemon

 

Bill in Lemon

1998/9/14

最初に

観客から借りたお札や、サインをしてもらったトランプがテーブルの上に置いてあったレモンから出てくるマジックがあります。一般に「ビル・イン・レモン」と呼ばれています。

これには様々な方法が開発されており、市販のネタだけでも数十はあるでしょう。そのような中で、マニアの間で数年前から話題になっているものがりました。コロラドのロッキー山脈のふもとでバーマジシャンをやっているDoc Easonの「ビル・イン・レモン」です。

1990年に出した彼のビデオ、"Doc Eason's Rocky Mountain Magic"($27.50)の中でやっています。マニアが見ても不思議で、私も初めて見たときは信じられませんでした。あまりに不思議なので、ビデオを繰り返して見て、詳細にチェックしてみました。すると、やはりあれはビデオ撮影用にちょっとしたトリックを使っています。今回"L & L Publishing" から発売されたDoc Easonの3巻セットでは解説もしていますので、やっと本当のやり方がわかりました。

このEasonの「ビル・イン・レモン」は彼を有名にしたトリックであり、15年にもわたって彼が大切にしていたレパートリーですので、本当のやり方を知られたくなかったのでしょう。たとえ種明かしはしなくても、マニアがビデオを何度もチェックすれば、ほぼ「正解」がわかってしまいますので、あのようなトリックを使ったのだと思います。しかし、見た目は、今回のビデオも以前のビデオも、まったく同じようにしか見えません。一般の人は勿論、相当なマニアでさえ、今回のビデオを見たとき、以前のものと全く同じようにしか見えなかった人がいくらでもいます。

現象

「ビル・イン・レモン」の基本的な現象は自体はシンプルです。観客から借りたお札にサインをしてもらい、それを火をつけるなり、何らかの方法で消してしまいます。どこにも切れ目のないレモンを取り出し、中央からナイフで二つにカットすると、レモンの中から観客がサインをしたお札が出てきます。

コメント

このマジックにはいくつかのポイントがあります。現象面では

<レモンを最初はどこに置いておくのか>

1.最初から最後までテーブルの上の、観客に見えるところに置いておく。
2.お札が消えた後、紙袋や鞄からレモンを取り出す。
3.包んだ紙に火をつけ、それを投げ上げると空中でレモンに変化する。

<借りたお札と出てきたお札が同じものである証明>

1.お札にサインをしてもらう。
2.お札の一部を破り、その切れ端を観客に持っておいてもらって、最後にお札と合わせる。
3.お札の番号をメモしてもらい、レモンから出てきたお札と照合する。

また、方法面でも様々なヴァリエーションがあります。それについてここで言及することは種明かしになりますのでできませんが、とにかく大変な数のヴァリエーションがあります。どれがベストとは言えません。マニアが見ても引っかかったという意味ではDoc Easonの方法はすぐれているのですが、彼の方法はおしゃべりや小物が重要な役割をはたしています。ミスディレクションのポイントになっています。そのため、原理だけを知っても、あのまま演じることは無理でしょう。彼はこれを自分のバーで15年以上やっていますから、彼自身のキャラクターにも合っており、さすがにうまいものです。

どのような方法を使おうと、きちんと演じられた「ビル・イン・レモン」はマジックショーのトリネタになるほどうけるマジックです。多くのマジシャンがこれをショーの中に入れ、最後に演じています。私自身も何度かこれを演じてます。私の場合、お札のかわりに、トランプがレモンから出現する"Card in the Lemon"もよくやっています。観客から見た感じは、どちらもほとんど同じでしょう。相当大勢の観客の前でも演じられるトリックですから、ひとつ自分なりの方法をマスターしておくと生涯のレパートリーになると思います。

 


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