The Cannibal Cards
最初に「カニバル」(cannibal)というのは「人食い人種」のことです。
3人の宣教師が、人食い人種に食われてしまうという、どこかからクレームが来そうなストーリーです。現象
4枚の絵札(キング)を見せます。この4人は人食い人種です。続いてスペードの8,9,10を見せます。ブラックスーツを着ているこの3人は宣教師です。
Black Suitというのは宣教師の着る「黒い服」と、トランプの「黒いスーツ」(スペード、クラブなどのマークのこと)とのシャレになっています。
食人慣習をやめさせようと、3人の宣教師がジャングルに入り、ある部族のところに行ったという設定で話は始まります。
宣教師達は捕まえられてしまって、全員、食べられてしまいます。このとき、上の写真のように、4枚のキングで口のような形を作ります。この口が人食い人種の口です。ここに黒いトランプを差し込むと、パクパクと口が動き、トランプが飲み込まれて行き、食べられてしまいます。
この動作は「チューイングムーブ」"Chewing Move"と言われるものです。実際に、口が閉じたり開いたりする動作のうちにトランプが吸い込まれて行くので、食べられているように見えます。
3人の宣教師は順に、全員、食べられてしまいました。テーブルの上に、4枚のキングを広げても、完全に食べられてしまったので、どこにも黒いトランプはありません。観客に渡しても大丈夫です。
人食い人種は獲物がないときは、同じ部族の中でも相手を食べてしまいます。共食いを始めるのです。
順に、4枚のキングを消して行きます。最後に残った一枚のキング、これは食べるものがなくなると、自分で自分の頭を刺して、自分を食べてしまうのです。ハートのキングをよく見てください。剣で自分の頭を刺しているでしょう?とにかく、4枚のキングも消えてしまいます。
最後は、テーブルの上に置いてあったトランプを裏向きに広げると、先ほど食べられてしまった宣教師(スペードの8,9,10)が、今消えた4枚のキング(表向き)に挟まれて出現します。
コメント
これはPCAM東京大会のとき、フレッド・カップスと焼き肉屋でミッドナイト・セッションを行ったとき、見せてもらいました。このとき、チューイングムーブを使って、口をパクパクさせながらトランプを消して行く動作が大変おもしろく、興味を引かれました。
カップスは、改案の天才ですから、彼のセンスでいくつかのマジックを組み合わせて、これを作り上げています。元になっているのはリン・シールスやハリー・ロレインのトリックです。
「カニバル・カード」というテーマは、サンドイッチイフェクトの範疇に分類されるものだと思います。ただ不思議なことは、20年ほど前、「カニバルカード」のテーマが流行り、何人かのマジシャンが同じテーマで発表しているのに、チューイングムーブを使ったものはどこにもないのです。文書として、どこかで「チューイングムーブ」を解説してあるものさえ寡聞にして知りません。
最近(2、3年前)マイケル・アマーが発売したビデオ、Easy to Master Card Miracle Video Series全3巻の第1巻でも「カニバル・カード」を演じています。現象はほとんど同じなのに、チューイングムーブはやっていません。ひょっとしたらこのムーブは、海外ではあまり知られていないのかも知れません。しかし、カニバルカードをやるのなら、チューイングムーブをおこなったほうが断然おもしろいので、付け加えることをおすすめします。
これはレギュラーデックで演じることのできる「カードマジックベスト10」を選んだら、入れたいマジックのひとつでしょう。なお、このマジックは、『松田道弘のマニアック・カードマジック』(松田道弘著 東京堂出版 3,400円)に解説されていますので、興味のある方はお読みください。
魔法都市の住人 マジェイア