Card On The Ceiling
1999/4/11
最初に
「天井に張りつくカード」です。カードマジックとしてはクラシックのひとつと言ってもよいでしょう。
現象
観客に1枚のトランプを取ってもらい、表に大きくサインをしてもらいます。 一組の中に戻し、よく切り混ぜます。観客に切り混ぜてもらってもかまいません。
トランプ全体に輪ゴムをかけてから、天井にぶつかるように投げると、1枚のトランプだけが天井に張りついて落ちてきません。それが観客のサインのあるトランプです。
コメント
十分不思議なマジックですが、それより大変派手に見えるカードマジックです。派手という意味なら、数あるカードマジックの中でも屈指のものでしょう。そのため、これをショーのトリネタにしているプロマジシャンもめずらしくありません。ただどこででもできるとは限りません。場所によっては演じることができないこともあります。
例えば天井に使われている素材やデザインの関係でトランプがくっつかなかったり、天井があまりにも高すぎるのも困ります。投げてもとどかないほど高いものは勿論ですが、それ以上に困ることは、高すぎる場合、後でトランプを剥がせないからです。またトランプをくっつけるためにはあるものを使いますが、これが天井に残り、シミを残す場合もありますので、その辺りには十分な配慮をしてください。
昔のマックス・マリニのように、テーブルに傷をつけたら、それで一層テーブルに値打ちが出ることがありますが、あれは例外中の例外です。「その傷はマリニがつけたものだとおっしゃればよい」と言うセリフは、マリニだからこそ成立したのです。
天井にトランプを残したままにしておいて、それが名物になるには、今ならデビッド・カッパーフィールドが残した場合くらいでしょう。彼が残したのなら確かに名物になるかも知れません。そのうち、彼はあそこまで飛んでいって貼り付けたという伝説ができるかも知れません。
とにかく、シミができる可能性があるときや、終わってから自力で取れないような場所では演じないことです。
本当は終わった後、剥がさずに残したままにしておきたいのです。一般の家庭で見せる場合は、後で誰かが取ってくれますから問題はありません。会場などを借りているとき、どうしてもマジシャンが自分で処理しなければならいのなら、「アピケン」を持って行くことをお勧めします。これがあると、 簡単にカードを落とせます。アピケンを伸ばしても届かないのなら、やめた方が無難かも知れません。
補足
基本的なハンドリングは、『カードマジック入門事典』(東京堂出版)にも載っています。マジシャンによって、輪ゴムのかけ方や、カードコントロールに多少の違いはありますが、あまり神経質になることはありません。それより、トランプの裏面が水平のまま天井にぶつかるように投げることが一番重要です。
コツとしては、輪ゴムをデックに掛けた後、中指をデックの下に、親指をデックの上にして持ち、人差し指をデックの右上のコーナーに掛かるように持ちます。薬指、小指は中指の下に、軽く曲げておきます。投げ上げるとき、人差し指が掛かっている右上のコーナーを手前に引く感じで、デック全体が水平なまま回転するようにします。この回転を入れることで、デックは上に飛ぶときもほぼ水平が保たれます。
ショーとして見せるのであれば、投げ上げた一組のトランプが天井にぶつかった後、一枚だけが張り付き、残りのトランプはすべてバラバラになって落ちてきたほうが見た目にも派手でよいのですが、これはよほど条件が整わないとできません。ひとつは、もし投げ上げたとき、うまく天井に張り付かなかったとき、全部がバラバラに落ちてきますから再演するのが困難です。二つ目は、落ちてくるときトランプが飛び散りますから、テーブルに食べ物などがあるとき、その上に落ちるとまずいことになります。少し工夫すればできないこともありませんが、リスクが大きすぎて実用的ではないでしょう。
バーマジシャンなどがよくやっているのものでは、デックを輪ゴムで止めるのでなく、お札で包んだり、「押しピン」を使うものなどもあります。 天井が難しい場合、壁にぶつけて、一枚だけ壁に貼り付けるのも効果的です。この場合ですと、壁にぶつかった後、残りのカードは壁に沿って下に落ちますから、輪ゴムでデックを止めなくてもできます。
ビデオでは、次のマイケルアマーのビデオが2本とも推薦できます。
"Michael Ammer Live At the Magic Castle" (10年ほど前に出たもの)
"Easy to Master Card Miracles"(Vol.5, L&L Publishing 1997)
魔法都市の住人 マジェイア