My Favorite Tricks

Fred Kaps 特集21

The Chinese Sticks

Chinese Sticks

1998/7/1


最初に

マジックをやっている人で、「チャイニーズステッキ」を知らない人はいないでしょう。入門者用のマジックセットを買えば一緒に入っている場合もありますから、多少なりともマジックに興味のある人なら一組は持っているはずです。しかし、大半の人が1,2度やってみただけで、引き出しの奥に突っ込んだままになっていませんか?これをフレッド・カップスがいつもやっていたなんて信じられないでしょう。しかも観客に大変ウケていたのです。

現象

カップスの使っているステッキは、日本で一般に使われている丸い棒ではなく、四角い棒のような形で、長さは30センチくらいある、比較的大きなものです。一本の棒には長い紐と房が付いており、他の棒からは房が直接出ています。(上の写真はZanaduの製品です)

中国の古いパズルを紹介するという演出で始まります。

最初、この2本の棒はぴったりくっついたままになっています。離さずに見せます。観客には、2本のまったく同じように見える棒があることを説明します。棒の隅には穴が空いており、そこに糸が通っていて、一本の棒には長い糸の端に房が、上にはビーズの玉がついています。他の棒にも同じような房とビーズが付いていますが、紐は大変短く、棒から直接房が垂れているように見えます。

まず最初、短い紐についている房を下に引っ張ると、それが伸びて、代わりに今まで長かった紐が短くなり房が上がってきます。不思議ですか?ただ棒の中で紐が一本につながっているだけに見えるでしょう?短い紐を引っ張るとそれが伸びて、長かった紐が短くなる現象を2,3度繰り返して見せます。観客があまりの馬鹿馬鹿しさに笑い出したら、長く伸びている紐の上の部分を引っ張り上げると、短い紐には何の変化もなく、そのまま上がってきます。ここで観客から、「アレッ?」という反応が返ってきています。今まで紐はただ一本で、それが2本の棒にまたがってつながっているだけだと思っていたのに、長い紐の上を持って上下させると、紐は普通に上下するので、予想とはずれます。(この部分の動作はテンヨー製では少しやりにくいと思います。本当は、下に垂れている房にもう少し重みがあるか、棒の穴を少し大きくして紐が上下に自由に動くようにしておいたほうがよいのです。)

このようなことを数度見せます。どの紐を引っ張れば、どの紐が動くのか、その法則を見つけようというパズルです。

ここで初めて、2本の棒の先を離します。つまり2本の棒をV字形にします。紐が出ている部分は離して、V字形のままで同じようにします。V字形のままでも先ほどと同じことが出来ます。

最後は2本を完全に離した状態でやっても、同じように出来ることを示します。ここでやっと観客は不思議だと思いはじめます。見えない糸でつながっているのかと想像します。 カップスは、最後に、これの本当の秘密を教えてあげようと言いながら、もう一本、上着の内ポケットから3本目のステッキを取り出します。それの房を口でくわえて引っ張ると、手にもっている2本のステッキの房が短くなるというオチを使っています。

コメント

フレッド・カップスだけでなく、チャーリー・ミラーもこれをやっていました。しかも、大変観客にうけているのです。これはうまく演じれば、大変ウケるトリックなのです。日本でも和妻の帰天斎正一師が「比翼の竹」と題して、独自の手順を舞台にかけておられました。

これを見ると、つくづく、マジックはタネではないと思います。あなたはこの道具を使って、観客にウケる自信がありますか?

帰天斎正一師の場合、助手が横から、こうなっているのだろうとツッコミを入れてきます。その疑惑を晴らすという演出で見せています。助手とのやり取りで観客を笑わせています。フレッド・カップスやチャーリー・ミラーは一人でやっています。観客には、マジックというよりあくまで中国の古典パズルを紹介するという演出です。マジシャン自身、何だかよくわからないけれど、こっちの紐を引っ張ったら他の紐が上がったり、こちらを引っ張るとこっちが上がるが、一体どうなっているのだろうという見せ方です。

最後に

左の写真はテンヨーの製品です。最初にも言いましたように、日本ではこれが初心者用のセットに入っているため、どうしても入門者用の簡単なマジックという印象が強いのですが、実際には大変難しいトリックです。技術的にはものの数分も練習したら出来ます。しかし、本当の難しさはそのようなところにあるのではないことは、実際にやってみるとすぐにわかるはずです。このトリックは観客とのやり取りが中心になることと、今ではこれをまともにやっているプロがいないため、アマチュアにしてみれば、どうやればよいのかがわからないでしょう。私自身、フレッド・カップスやチャーリー・ミラーの演技を見なかったら、これを取り上げることもなかったと思います。マジックショップやデパートのマジックコーナーでも、この30年位の間で、ディーラーの人がこれをやっているのを見かけたことは一度もありません。しかし、セットに入っていることもあるので、たまには実演しているのでしょうか。

いずれにしても、これはマジックというより、中国に古くから伝わっているパズルを紹介するという見せ方で演じればよいと知っていたら、何とかなると思いませんか?最初からこれをマジックだと思ってやると、はじめのほうの現象などとてもやる気がしないでしょう。

テンヨーの製品であれば、今でも800円で売っています。800円のネタで、フレッド・カップスやチャーリー・ミラーは高額なギャラを稼ぐのですから、エライもんです。(笑)

Mini Pom-Pom Pole

また、"Pom-Pom Pole"というものもあります。左の写真はそれのミニ版ですが、オリジナルの製品は長さが30センチくらいあり、一本のアルミ製の筒の両端に、4つの大きなポンポンが付いています。

黄色いポンポンを引っ張ると、赤いポンポンが上がってきます。黄色を下げると赤も下がります。ところが白を下に引っ張ると、赤が上がります。青を引っ張り上げると、白が上がります。

途中で、このアルミの筒を二つに分けます。中央から切断出来るようになっているのです。中を見せてもなにもありません。特殊な接続などなにもありません。もう一度、筒をつないで行うと、先ほどと同じことができます。ネタはチャイニーズステッキとは少し異なっています。ハンクリーの店では、$55.00で販売されていました。

この写真のものは、"Pom-Pom Pole"のミニ版で、長さがわずか7,5センチしかありません。

魔法都市の住人 マジェイア

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