The Dancing & Floating Cork
最初に「コルクの栓が浮かぶ」というこのマジックの原案者はドイツ人のブルーノ・ヘニング(Bruno Henning -Joro)です。それをイギリスでマジックショップを経営していたケン・ブルック(Ken Brooke)が製造販売権を購入し、売り出しました。フレッド・カップスが演じるようになって、世界的に有名になりました。
カップスは原案に様々改良を加え、信じられないようなマジックに仕立てています。今でこそ、フローティング現象はすっかりおなじみのものになっていますが、今から25年くらい前、これを見せられたマジシャン、ダイ・ヴァーノンやジョン・ハーマンといった超一流の人達でも、誰一人、タネを見破った人はいなかったそうです。
実際、カップスが「ハーマン・カウント」でお馴染みのジョン・ハーマンにこれを見せている貴重なフィルムがあります。このときのハーマンのリアクションがおかしく、まさに本物の魔法を見ているような雰囲気になっています。(笑)ハーマンがあまりにも驚いているので、ハーマンに向かって、「今のはトリックだよ」と、何とも間の抜けた説明をしていました。(笑)
現象
指輪のケースのような小さな箱を取り出します。開けると、中に上の写真のようなコルクの栓が入っています。一見普通のコルクのようですが、特別です。これは浮かぶのです。不思議ですか?でもそれほど驚くことではありません。大抵のコルクは水の中に入れたら浮かぶでしょう?(笑)
いえ、実はこれは水の中ではなく、空中に浮かぶのです。
ケースのふたを開けたまま、コルクを見つめていると、かすかに動きます。そしてケースから少し浮かびます。マジシャンはケースをテーブルの上に置きますが、コルクは空中にじっと浮かんでいます。糸などで吊していないことを証明するため、浮かんでいるコルクの前後、左右、上下を手で払っても何もありません。さらに、直径20センチほどの金属の輪を浮かんでいるコルクの通しますが糸などありません。
両手を近づけると、その手の間で、コルクがピョコピョコと踊り出します。まるで分子のブラウン運動のような感じで不規則に両手の間で動き続けます。このまま客席を回りながら、観客の目の前で、コルクが浮かんでいることを見せて回ることもできます。
最後は、またコルクをケースに戻し、終わります。
コメント
フレッド・カップスがこれを有名にしたあと、特にカップスが亡くなった1980年頃からは、マイケル・アマーやその他多くのマジシャンがバリエーションを発表しています。そのような中では、観客から借りたお札を浮かべるものがもっとも普及しました。
カップスのルーティンの優れている点は、徹底的にタネの疑念を払いのける工夫をしたことと、客席を自由に歩き回れるようにした点です。
マジシャンも含め、ほとんどの人はこれをはじめて見たとき、マグネットや空気の力で浮かしているのだろうと思ったそうです。実際、私もそうでした。
最後に一言
これが今から25年くらい前、ケン・ブルックの店で売り出されたとき、2万円くらいしたと思います。今なら、5万円くらいの感じでしょうか。ところが実際に送られてきた道具を見ると、マジックにあまり詳しくない人は間違いなくびっくりすると思います。詐欺にでもあったと思っても不思議ではありません。 送られてきたものは、なんと、原価、わずか100円もかかりません。
ネタの値段というのは、製造原価ではなく、「現象」に対して払うのですから、現象が気に入っているのなら値段はどのように付けても構わないのがこの世界での約束事です。実際、その現象を見て、それが出来るのなら5万円でも出すという人はいくらでもいます。タネを聞いて、原価が、100円で出来ると知っても、がっかりするようなことはありません。しかし、初心者の人で、現象も見ずにネタを買ってしまった人はショックだと思います。
ケン・ブルックの店は永年、購入したマジックが気に入らなかったら、全額払い戻すというシステムを取っていました。これはマジックの世界の常識では考えられないことです。ネタを見た後でも、気に入らなかったら全額返金するなどというのは、正気の沙汰とは思えないのですが、それほど扱っている商品には自信があったのでしょう。実際、解説書も大変すぐれたもので、私自身、ケン・ブルックの店からは数十の商品を購入していますが、返品しようと思ったものは一度もありません。しかし、このネタに限っては、もしカップスの演技を見ていなかったら、返品する人が出ても不思議ではありません。まあ、もっともカップスのネームバリューで納得したでしょうから、金を返せと言った人はいないと思います。
添付のネタだけでも、100回くらいは十分できるのですが、ネタ少なくなってきたので追加で頼んだら、これはタダみたいな値段で譲ってくれました。しかも、新しいものを見つけたとかで、オランダ製の子供のス○○○○○が丸々送られて来たのには笑ってしまいました。確かにこれで一生できるほどのネタを作ることが出来ます。今はこんなものを使わなくても、よいネタが出来ていますから楽です。
魔法都市の住人 マジェイア