書 名:The Devil's Playthings
著 者:Roy Walton
初 版:1969年
発売元:L.Davenprt & Co.
ページ数:61ページ
分 類:Card Magic
最初にロイ・ウォルトンのオリジナル・カード・マジックを集めた本、"The Devil's Playthings"は1969年にイギリスのダベンポートから出ました。ウォルトンの生まれたのが1932年で、「エルムズレイ・カウント」でおなじみのアレックス・エルムズレイが同じくイギリスで1929年生まれていますから年代的にも近く、お互いに影響を受けています。
内容を紹介しましょうこの本はロイ・ウォルトンがはじめて出した本です。ふつう、カードマジックの本は、数百ページを越えるような分厚いものであっても、実際にやってみたいと思うトリックは二つか三つくらいあれば上等です。ところが、このわずか60ページほどの薄い本に解説されている30のトリックは、どれもマニアを刺激するものばかりでした。いずれもウォルトンのオリジナルであり、何の仕掛けもないトランプでできるものばかりです。中でも、「オイル・アンド・クイーン」、「ファインダーズ・キーパーズ」、「カラー・マジック」「カード・ケース」などは、私も昔よくやっていました。
何の仕掛けもない52枚のトランプで、よくこれほど様々な原理や現象を考え出すものです。まさにこの本のタイトル"Devil's Playthings"(悪魔の玩具)そのものです。
この本に載っているトリックは特殊なスライト(技法)を使ったものはありません。原理やテーマがおもしろいのです。このあたりは好みのわかれるところかもしれません。今ではクラシックになった「コレクター」も彼のオリジナルです。これは「マルティプル・サンドウィッチ現象」とでもいうもので、3人の観客に選んでもらったトランプが4枚のエースの間に出現します。世界中で、数多くのヴァリエーションが発表されています。
カードマジックを中心に行うマジシャンのことを「カーディシャン」と言います。しかし、カードマジックだけを一般の観客に見せることで食っているプロマジシャンは現在いません。ロイ・ウォルトンもアマチュアの研究家です。昔はルポールのようなカード専門のプロマジシャンもいましたが、それは例外中の例外です。ルポールのカードマジックは、いかにもプロらしいシンプルさがありました。一方、ロイ・ウォルトンのマジックは、「悪魔」が精緻を極めて編み出した綾取りのようなおもしろさです。へたをすると観客よりもマジシャンが楽しんでしまうという、本末転倒なことも起きてしまいます。そのあたりに気をつけて読むと、楽しめる本です。
「マニアうけ」するものが多いのは事実ですが、一部、一般の人にも大変うけるものもあります。ディーラーズ・アイテム(売りネタ)として、単独で商品になっているものも数点あります。中でももっとも有名なものは「カード・ウォープ」"Card Warp"でしょう。これは世界的にベストセラーになり、現在も多くのマジシャンによって演じられています。たった2枚だけで演じるカードマジックです。ユージン・バーガーは、ジャンボカードを使い、人間の体が折り曲げられたりする「拷問」のストーリーをつけて演じています。
私が個人的に好きなのは、ディーラズ・アイテムとして販売された「カスケード」"Cascade"です。 4枚のジャック(J)が、全部裏向きになったり、表向きになったりしているうちに、最後は、表は真っ白なカードになり、裏模様はそれまでとまったく異なったデザインのものになります。最後の変化は意外性があり、いっときよくやっていました。
魔法都市の住人 マジェイア