Esoteric
最初に今から20数年前、イギリスのケン・ブルックのところから売り出されたネタです。一般に、「ホーンテッド・デック」(Haunted Deck)と呼ばれるカテゴリーに入るマジックです。 今回の、「エソテリック」は、ノルウェーのプロマジシャン、フィン・ジョン(Finn Jon)が原案です。
ケン・ブルックが亡くなってからしばらく絶版になっていましたが、昨年の暮れに届いたスティーブンスのカタログに載っていました。
現象
トランプを一組取り出し、よく切り混ぜた後、3名の観客に1枚ずつトランプを取ってもらい、おぼえてもらいます。3枚を表向きにして、1枚ずつ、一組の中に戻します。
一組全部を床の上に置き、3名の観客に、トランプの左右と前に立ってもらいます。
マジシャンは「見えない糸」を観客に渡し、床のトランプを引っ張るジェスチャーをしてもらうと、トランプの上半分が動き出し、また元の場所に戻ります。戻ると、一枚だけ、トランプが表向きに突き出ています。それが観客のトランプです。あとの二人にも同じようにやってもらうと、上の写真のように、それぞれのトランプが3枚突き出た形になります。
コメント
私自身、昔、よくやっていました。原理はシンプルですが、大変よくできています。今でもわずか16ドルで販売されているのが信じられないくらいです。この現象であれば、50ドルくらい出してもおしくありません。当時、ケン・ブルックのところではいくらで販売していたのか忘れましたが、20数年前でも、今より高かったはずです。
今回、ケン・ブルックが書いた解説書を読み返してみると、値段が現在の倍以上していたとしても、十分納得できます。ケン・ブルックはマジシャンとしても達者な人でしたが、解説書を書く才能はそれ以上です。どこがポイントなのか、いわゆる「コツ」を的確に教えてくれています。
大抵のアマチュアは、タネの原理がわかればそのマジックを自分でもできると思っています。しかし、タネの原理がわかっても、実際にそれが演じられるものではありません。技術的な面だけを取り出しても、やってみてはじめてわかる不都合な部分、どうにもうまくできないところがあります。
ケン・ブルックの解説は、そのあたりのポイントを隠すことなく、詳しく書いてくれています。彼自身が一流のパフォーマーでしたから、実際にやってみて、うまく行かない部分などを原案者から聞いていたからでしょう。原案者が解説書を書くより、格段にわかりやすい解説書になっています。原案者というのは、意外なくらい自分以外の人がそれを演じるとき、どこが問題になるのかわからないものです。自分にとっては当たり前のことなので、他の人がわからないということに気づかないのです。 今回、スティーブンスから販売された解説書がどうなっているのか興味があります。
また、この「ホーンテッド・デック」の原理は古くからあるため、多くのマジシャンが独自の方法を考案しています。
クロース・アップ・マジックでは、ユージン・バーガーの方法がすぐれています。選ばせるのは1枚のトランプだけですが、最後に一組のトランプ全部を観客に手渡して、調べてもらうこともできます。
なお、彼はデックを自分の手の甲に置いて演じています。手のひらに置いてもよいのですが、手の甲に置いたほうが、マジシャンは何も怪しげなことができないという印象を観客に与えることができます。これは、ユージン・バーガーのビデオをご覧になった三田さんから指摘され、気づきました。
また、最近では"I.T.R."を使用したものの販売されています。これも悪くはありませんがハンドリングは慣れないと少々むずかしいかも知れません。私はこの「エソテリック」に慣れていますので、このほうが楽です。
魔法都市の住人 マジェイア