My Favorite Tricks

Fred Kaps 特集3

The Color Changing Knife

knife
1997/11/26

最初に

日本ではあまり演じられないのに、外国ではよく演じられているトリックがいくつかあります。
「カラー・チェンジング・ナイフ」もそのようなトリックの一つです。

日本でこれがあまり演じられないのは、ポケットナイフを普段から持つという習慣がないことが最大の理由です。西欧では、小さくて洒落たポケットナイフを持っているのは、紳士の持ち物の一つとして不自然ではありません。実際、よく切れるポケットナイフを持っていると、何かにつけて重宝します。はさみの代わりにも使えますし、何か食べ物をスライスしたりする場合でも便利なものです。

現象

「カラー・チェンジング・ナイフ」というのは名前からわかるように「ナイフの色変わり」です。

フレッド・カップスのルーティンは、最初、赤いポケットナイフを取り出し、白に変えます。 実際には2本使っているのだという説明を加えて、「種明かし風演出」で、さらにカラーチェンジを行います。しかし、当然のことながら実際には種明かしにはなっていません。

途中で、観客からハンカチを借ります。手のひらに赤いナイフ置き、その上にハンカチを掛け、ハンカチの上に白いナイフを置きます。これが一瞬にして、しかもビジュアルに変化します。

最後はハンカチを貸してもらった人に、子供へのおみやげとして赤白のナイフをプレゼントすると言い、ナイフをハンカチに包んで、観客に手渡します。観客がハンカチを開けると、ナイフがいつの間にかキャンディやチョコレートになっています。

コメント

カラー・チェンジング・ナイフの基本的な現象は、ナイフのボディーの色が変わるという、ただそれだけのことです。しかし、これにはマジシャンの心をとらえる何かがあるようで、多くのマジシャンによって様々なバリエーションが発表されています。

カップスの初期のルーティンは、アスカニオの"Ascanio's World of Knives", by Jose de la Torreに発表されています。その後、1978年に、カップスがスコッティ・ヨークの家に2,3週間泊まっていたとき、一緒に考えたルーティンが上で紹介したものです。

このルーティンは、スコッティ・ヨークが売り出しているナイフセットに、"FRED KAPS' UNPUBLISHED KNIFE ROUTINE"と題して解説されています。(今でも、ハンクリーのところで買えるはずです。確か50ドル程度でした。)

最後に一言

アスカニオの"Ascanio's World of Knives"は、「カラー・チェンジング・ナイフ」に興味がある人であれば、必読の本です。最後に、小さなナイフ(長さ2センチ程度)のナイフがたくさん出てくるクライマックスは意外性があり、私も昔よくやっていました。この小さなナイフは、2年ほど前、スティーブンスのところのカタログで見た記憶があります。

最近ではスペインのタマリッツも独自の手順を発表しています。「色が変わる途中」が見せられるということをやっています。スコッティ・ヨークやマット・シューリエンなどのようなバー・マジシャンは大抵、カラー・チェンジング・ナイフをレパートリーに入れています。

昔読んだロン・ウイルソンというテーブル・ホッピングをやっているマジシャンは、談笑中のテーブルにアプローチする手段として、カラー・チェンジング・ナイフを使っていました。テーブル・ホッピングというのは、レストランなどで各テーブルを回りながらマジックを見せるクロースアップショーのひとつです。 大抵、店がマジシャンと契約しており、店のサービスとして、頼めば無料でマジックを見せてもらえます。

ロン・ウイルソンは、食事などが一段落したテーブルに寄って行き、赤いナイフを見せ、「どなたか赤いナイフを落とした方はいらっしゃいませんか?」とたずねます。客から、「ノー」という返事が返ってきたら、「では白いナイフを落とした方はいらっしゃいませんか」と言いながらナイフの色を変えるのです。ここで初めて、テーブルの客にも彼がマジシャンだとわかります。こうしておいて、「私は当店のマジシャンです」という簡単な自己紹介をして、マジックを見せるそうです。

テーブル・ホッピングのプロにとって、一番難しいのはテーブルにアプローチをするときです。その解決方法として、これはうまい方法だと思います。相手がまだマジックだとわからないときに不思議な現象を見せるのは大変賢いやり方です。

昔、この話を彼のレクチャーノートで読んだとき、確かにうまいアプローチだけど、「だれかナイフを落とした人はいませんか」とたずねるのはギャグかと思っていました。というのは、あんなナイフを普段持っている人間などいるはずがないと思っていたからです。しかし、最初に書いたように、西欧ではそうでもありません。ポケットナイフを持っている人は珍しくないので、このようなセリフも不自然でないのでしょう。

長くなりましたが、カラー・チェンジング・ナイフ全般に言えることは、このマジックはあくまで即席マジック風に見せるのがベストだと思います。構えて見せるより、あっさりと見せて終わったほうがよいでしょう。
クライマックスがないと言えばないので、カップスがやっているように、全然、別のものに変えてしまうのもうまいやり方です。こうすればネタも同時に処理できます。「ジプシースィッチ」を使うと言えば、わかる人にはわかるでしょう。

魔法都市の住人 マジェイア

INDEXindexへ 魔法都市入り口魔法都市入口へ
k-miwa@nisiq.net:Send Mail