The Ring Flight
最初に「リングフライト」(Ring Flight)というのは「指輪の飛行」のことです。クロースアップマジックを見せることを専門にしているプロマジシャンの多くが、これをレパートリーに入れています。今ではクラッシックの地位を獲得しているトリックです。
現象
観客から指輪を借りて、消してしまいます。マジシャンは手が空であることをよく見せた後、ポケットからキーホルダーを取り出します。キーホルダーを開けると、いくつかのキーに混ざって、消えた指輪がホルダーにぶら下がっています。
コメント
何人かのマジシャンがヴァリエイションを発表しています。しかし、最後にキーホルダーから消えた指輪が出てくる部分は同じですので、変えるとしても指輪の消し方や、ギャグの部分くらいです。
指輪を消すところは、大きく分けて2種類に分けられます。ひとつは、受け取ったらそのまま手に握り、あっさりと消してしまう見せ方です。もう一つは、ロープなどに指輪を通して、それをさらに指輪のケースに入れ、そのような状態から消す見せ方があります。カップスはロープに通してから消していたと思います。
このマジックでよく使われている、いくつかのギャグがありますので紹介しておきます。
ギャグ1:(指輪を借りたとき)「いい指輪ですね。有名なブランド品のようです。何か小さな文字が刻んであります。G..、L...、I..、C、..O、...。グ・リ・コって読むのでしょうか」
ギャグ2:(結婚指輪を借りていて、それが消えたとき)「指輪がなくなって、ひさしぶりに開放感を感じませんか?」
少し凝った演出では、指輪が本物のプラチナかどうかを調べるために、ヤスリでこするというものがあります。本物のヤスリを取り出し、指輪をこするとバチバチと派手に火花が出ます。
いずれにしても、このマジックはネタの性質上、指輪はあざやかに消すことができます。しかし、あまりにもあっさりと消してしまうと、すぐに終わってしまいます。私は指輪を消すところでは、小さなフラッシュペーパに指輪を包んで、燃え上がらせて消しています。
観客の持ち物を借りるマジックがよくあります。これは何の仕掛けもないことや、同じものを使っていないことを強調できるので効果的です。紙幣などを借りる場合は、少々汚しても新しいものを返せばよいので問題ありませんが、指輪はそうは行きません。万が一、破損したり紛失したりすると、同じものを見つけることはできません。その辺りのことをわかった上で、慎重に扱うことが大切です。
最後に一言
このマジックを演じる場合、気をつけなければならない重要なことがあります。
注意1:絶対に石のついた指輪は借りないこと。石がついていると、何かのはずみで傷つけたり、最悪の場合、石を飛ばしてしまう可能性があります。とにかく、石がついているものは避けて、マリッジリングのような、シンプルなデザインのものを借りることです。
注意2:道具はよく事前に点検しておくこと。ネタの一部が切断すると、指輪が思わぬ方向に飛んで行く可能性があります。引きネタを使う場合、なるべく移動距離が短くなるように手を動かしてから消すことも重要です。
注意3:演じる場所をもう一度確認しておくこと。床に落ちたとき、すぐに見つけだせないような場所は危険です。落ちたとき、何かの隙間に入ってしまうようなことはないか、転がって行き、絶対取りだせないような壁や床の割れ目に入ってしまうことがありますから、その辺りのチェックも重要です。
マジックでは観客の持ち物を借りて演じることがよくあります。これは、何の仕掛けもないこと、同じものを使っていないことの証明になるからです。お札などもよく借りますが、お札の場合は少々汚したり破損しても、新しいものを返せば問題はありません。
しかし、指輪等の場合、万一紛失したら、二度と同じものを返すことはできません。他人にとってはそれほど価値のないように見えるものであっても、当人にとっては、色々な思い出が詰まっており、代わりのものでは絶対にダメということもあります。この辺りのことを重々踏まえて、指輪を借りる場合、取り扱いには慎重の上にも慎重になってください。万が一落としたり飛ばしても、間違いなく見つけられるという確信がないところでは演じない方が賢明です。
魔法都市の住人 マジェイア