My Favorite Tricks

Dai Vernon 特集6

Ball, Cone and Handkerchief

コーンとボール

2000/10/27

最初に

古くからある「カップ・アンド・ボール」は大変美しく、魅力的なマジックです。特にクライマックスで、カップの下から突然本物のレモンなどが出現するところでは、どのような観客でも必ずと言ってよいほど驚きます。しかし3個のカップと3個のボールを使うため、見ている側は混乱することもあります。また使用するボールは、直径1センチ程度の小さい玉を使うため、広い会場で大勢の観客に見せるには不向きです。

このような欠点をカバーする目的でヴァーノンが新しく考案したのが、「コーンとボール」です。これには高さが20センチくらいのコーン(円錐形の筒)をひとつと、直径が5センチくらいある大きなボールを1個使用します。

ヨーロッパには、「ハーレキン・アクト」(Harlequin Act)という、仮面を着け、まだらのひし形模様入りのタイツをはき、木剣または魔法の杖を持って、古めかしい道化の格好をして演じる催し物がありました。ピエロの一種かもしれません。ヴァーノンがこの「コーンとボール」を考案したのは、このハーレキンに出演することになったのが直接のきっかけです。

現象

相当大きな場所でも演じることができますが、100名程度の会場が適当でしょう。準備としては、小さなテーブルがひとつあれば十分です。ヴァーノンは音楽に合わせて、喋らずに演じていました。

現象のアウトラインを紹介します。

1.胸のポケットからシルクのハンカチを取り出す。

2.それをしごくと、直径5センチくらいある白いボールが1個現れる。

3.ハンカチを左手の上に広げて、その上にボールを乗せる。右手でテーブルの上に置いてあったコーンを取り上げ、ボールにかぶせる。コーンを取り除くと、ボールが消えている。コーンの中も空になっている。

4.ハンカチをポケットに入れる。右手を上着の右ポケットに入れて、消えたボールを取り出す。

5.左手の上にボールを置いて、コーンをかぶせる。右手でコーンをしごくように上げていくと、中にあったボールがコーンの上にある小さな穴から絞り出てきたように出現する。

6.このボールを右手で取り上げ、ポケットにしまう。手がからであることを示してから、コーンを持ち上げると、ポケットに入れたボールがコーンの下から出現する。

7.もう一度このボールの上にコーンをかぶせる。

8.コーンを持ち上げるとボールが消えている。

9.ポケットから消えたボールを取り出す。

10.これを左手の上に置いて、コーンをかぶせる。右手でコーンをしごくと、上の小さな穴からボールが出現したように見える。(5と同じ)

11.このボールをポケットに入れる。

12.コーンを持ち上げるとボールがまた戻っている。

13.ボールにコーンをかぶせてから、コーンを持ち上げると白いボールが赤いボールに変化している。 赤いボールの上にコーンをかぶせて、右手でポケットから白いボールを取り出す。白いボールはポケットにあることを示したら、白いボールはポケットに戻しておく。

14.左手の上にあるコーンを持ち上げると赤いボールがなくなり、白いボールになっている。

15.コーンを取り上げ、テーブルの上に置く。左のボールをコーンの上にバランスを取って乗せる。

16.ポケットから最初に使ったハンカチを取りだし、このハンカチでコーンの上のボールを包み込む。

17.ハンカチの中央をねじって、ボールが中に入っていることを示すが、ボールがハンカチを通り抜けて外に現れる。

18.もう一度ボールをハンカチで包む。ハンカチを振ると、ボールがハンカチの中から消えてしまっている。

19.テーブルの上にあるコーンを持ち上げると、消えたボールが出現する。

コメント

「コーンとボール」で使用する基本技法はひとつだけです。「カップ・アンド・ボール」よりずっと簡単です。最初と最後にハンカチを使う部分があり、特にハンカチで包んだボールが消えるところは大変あざやかです。とけるように、空中に消えてしまいます。 難しいのは、コーンとボールを使う基本技法よりも、ハンカチとボールを扱う部分でしょう。しかし、これも実際にはそれほど難しいことはありません。難しくないのですが、これが解説されているヴァーノン・ブックの解説を読むだけでは、わかりにくいかも知れません。この部分はビデオで見るとすぐにわかります。

また、「コーンとボール」は決して悪いマジックとも思えないのですが、不思議なくらいこれを誰かが演じているのを見かけません。アマチュアマジシャンの発表会などで演じられることはたまにありますが、プロマジシャンでこれを自分のレパートリーに入れている人はいないのではないでしょうか。

考えられる理由としては、ハンカチ、コーン、ボールをそれぞれひとつずつ使用するだけのため、現象が単調になってしまうからではないでしょうか。それとクロースアップで演じるには道具が大き過ぎます。ステージでプロが演じるにはインパクトがそれほど強くないため、どうしてもレパートリーには入れにくいのでしょう。アマチュアが発表会で演じるのであれば、線の細さも鑑賞に堪えられる範囲におさまるはずです。 今のような理由から、あまり演じられてはいないのですが、私自身の好みから言えば、決してきらいなマジックではありません。

ヴァーノン自身はこのマジックを「錬金術」という演出で見せたかったようです。白いボールが赤いボールに変わる部分は、実際にはある金属が別の貴金属に変化するようすを表現しています。マニアがこねくり回すと、いっそう長くて退屈なマジックになる危険性があります。またコーンを2個、3個と増やせば、「カップ・アンド・ボール」と同じくらい変化にとんだ現象を作り出すことは容易にできますが、「コーンとボール」はシンプルであることを目的として作られたマジックであることを忘れないでください。

関連情報

THE DAI VERNON BOOK OF MAGIC(by Lewis Ganson, Harry Stanley)に載っています。

ビデオは"Vernon Revelations"Vol.9&10にあります。 関連図書としては、『奇術研究 38号』(1965年 力書房)に「新・コーンとボール」と題して、コーンを2個使用するルーティンが解説されています。これはヴァーノンの手順ではなく、高木重朗氏がリチャード・ビュフォンのルーティンを参考にして構成されたものです。

魔法都市の住人 マジェイア

INDEXindexへ 魔法都市入り口魔法都市入口へ
k-miwa@nisiq.net:Send Mail