The Tale of The Treasury-Worm
最初にヴァーノンはこのマジックを自分のペットトリックとして長年愛用していました。お札と、ちょっとした準備さえあればすぐにでもできます。時も場所も選ばず、周りを囲まれたような状況でも演じることは可能です。
タイトルの"treasury worm"は「お札を円錐状にしたもの」という意味です。
現象
マジシャンはポケットから一枚のドル紙幣を取り出します。裏表をよくあらため、手にも何も持っていないことは観客からもはっきりわかります。お札を指先に丸めて、コーン(円錐)にします。
「アメリカのドル札には、紙の中にシルクの繊維が混ぜてあるので丈夫である」といった話をします。コーンの中に指を入れると、中から緑色の本物シルクのハンカチが現れます。
コメント
このマジックでは、"Thumb Tip"はなく"Sixth Finger"を使っています。お札の改めからコーンを作る動作まで、ハンドリングにはまったく無駄がありません。ある意味ささやかな小品と言ってよいようなトリックですが、このようなものでもヴァーノンは手を抜かず、細かいところまでよく考えていることがわかります。
ヴァーノンは紙幣から緑のシルクを出した後、「カラーチェンジングシルク」を続けて行っています。シルクだけ手に残し、お札をポケットにしまう動作で、"Sixth Finger"も一緒に処理してしまい、そのときカラーチェンジングシルク用のギミックをスティールしています。
観客にすればもうマジックは終わったと思っていますので、このスティールの部分にはまったく注目していません。マジックの極意というのは、このように観客の注意がマジシャンの指先からそれた瞬間に秘密の動作を行うことにあります。決して素早く指先を動かしたり、大げさな動作で別の方向に注意を向けるのではありません。観客自身が作り出す緊張の陥穽、つまり、いつ観客の意識が「エアーポケット」に落ち込むか、それさえわかっていればよいのです。
またアメリカのドル紙幣は全体に緑色をしていますので、「グリーン・バック」'Green Buck'とも言われます。それで出現させるシルクも緑のものを使っています。この後続けて行う「カラーチェンジングシルク」では、この緑のシルクを赤に変えます。
THE VERNON CHRONICLES VOLUME TWO; MORE LOST INNER SECRETS(by Stephen Minch, L&L Publishing)に載っています。
魔法都市の住人 マジェイア