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Voo Doo Magic

灰の魔法

 

灰の魔法

1998/10/6

最初に

このマジックの元になっているのは、昔から入門者用の本などでよく見かける、「角砂糖に書いた文字が、観客の手のひらに現れる」というものかも知れません。海外では昔からよく知られているマジックの一つです。基本的な原理はそれと同じなのですが、素材と演出を変えたのが、この「灰の魔法」です。原理も現象も大変単純ですが、単純であるだけに、うまく演じると観客には強烈な印象を与えることができます。

現象

昔からある基本的な現象は次のようなものです。

観客にどちらかの手を握ってもらい、握りこぶしを作ってもらいます。その状態のまましばらく待っていてもらい、マジシャンはタバコを取り出し火をつけます。ちょっと吸ってから、タバコの灰を自分の手のひらの上に少し落とします。観客の握りこぶしの上にマジシャンの手を持って行き、上から観客のこぶしを軽くノックします。マジシャンが手を開くと灰は消えています。観客に手を開いてもらうと、観客の手のひらから灰が現れます。

これがごく一般的なものです。このとおりに演じても強烈な印象を与えるマジックになりますが、ユージン・バーガーはさらにちょっとした演出を付け加えています。一級の、「コメディ風オカルトマジック」に仕立てています。。

バーガーの演出は次のようなものです。アウトラインだけ紹介します。

観客に手を出してもらい、握りこぶしを作ってもらうところまでは上と同じです。次ぎに、メモ用紙程度の紙を取り出し、そこに、手を広げた絵を描きます。上の写真のようなものです。

アフリカには人を呪うとき、人形を作ったり、その人の絵を描いて、それに釘を打ちつけたり燃やしたりすることで呪いをかける「黒魔術」があることを説明します。その実験を今からやってみることにします。

紙に描いた手は観客の手です。今からここにタバコの火を押しつけます。人体の絵を描いて、心臓にでも押しつけてもよいのですが、万が一のことがありますから、手のひらにしておきます。

観客に、「あなたの手のひらも熱くなってきたように感じませんか」とたずねてみます。人によってはこのとき、「何かムズムズしてきた」とか言う人もいます。何も感じないと言われてもかまいません。「これは実験ですから、呪いはかけていないので、熱くないのです」とでも言っておけばよいでしょう。

紙に描いた手の中央あたりが、タバコの火で穴が開いたら、観客に手を開けてもらいます。すると観客自身の手のひらの中央も黒くなっています。絵に描いた手のひらが焼けているように、観客自身の手にもタバコの灰が押しつけられたように黒くなっています。

ユージン・バーガーのこの演出は、薄暗い部屋で、ローソクでも燃やして、これだけを見せれば、それだけで超一級のマジックになります。以上のやり方を詳しく知りたい方は、『クロース・アップ・マジック事典』(松田道弘著、東京堂出版、1990年)をお読みください。

コメント

私がこのマジックを初めて知ったのはそう古いことでありません。20年ほど前、偶然、某プロマジシャンがテレビでやっているのを見て知りました。意外なくらい、文献でこれを解説してあるものに出会ったことがないのです。このときのテレビを見て、一目でこれはおもしろいと思いました。すっかり気に入りましたので、その直後からよく演じていました。ところが、今から10年ほど前から、これを二十歳前後の若い女の子に見せると、「あっ、それ知っている!」と言われることが多くなり、ここ数年、すっかり止めていました。大阪だけでなく、東京でもやったときも同様です。立て続けに、数名の人から「知っている」と言われたので、何かの雑誌で種明かしされたのかも知れません。若い人が読んでいるメジャーな雑誌などで解説されたのでしょうか。年末になると、「あなたにすぐできる隠し芸を教えます」のような特集が組まれることがありますから、そのようなものに載った可能性が大です。

そのようなわけで、数年やっていなかったのですが、ここ1,2年、また何度かやってみましたが、「知っている」と言われることはなくなりました。それでまた復活させています。

このマジックは原理自体は簡単ですが、このようなマジックを、真面目な顔で、それなりの雰囲気で演じることができたら、マジシャンとして一人前です。大変すばらしいトリックですから、種明かしをしたり、適当に見せることは絶対にしないでください。

 

魔法都市の住人 マジェイア

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