最初に「ワイルド・カード」の原案はイギリスのピーター・ケーン(Peter Kane)です。1962年に発表し、同年、それをニューヨーク在住のプロマジシャン、フランク・ガルシア(Frank Garcia)が売り出し、世界的なヒット商品になりました。当時、マジックの世界では原案者に対しての配慮などが行き届いていなかったため、コピー商品が山ほど出回っていました。もしこれがすべて原案者に還元されたのでしたら、これだけで優に家が一軒建つくらい儲かったのでしょう。とにかく、ディーラーズ・アイテム(売りネタ)としては世界的に最も売れたパケットマジックと言ってよいと思います。
現象
8枚の同じトランプがあります。(たとえば全部ハートの7)そこに1枚だけ別のトランプを付け加えます。(ジョーカー等)すると、ハートの7がすべてジョーカーに変化して行きます。大変鮮やかで、強烈な変化現象です。
最後に一言
これが発表されたのは比較的新しく、1962年なのですね。私が初めてこれを見たのは小学生の頃ですから、今から思えば発表されて間もない頃であったようです。その後、阪神百貨店で、ジョニー・広瀬氏から何度か見せてもらいました。値段もそれほど高くなかったのに(300円くらい)、どういうわけか、これはすぐに購入せず、どのような仕掛けになっているのだろうと、推測して楽しんでいた覚えがあります。トランプによほど精巧な仕掛けがしてあるのかと思いましたが、それにしては値段が安いので、一層不思議でした。
これのバリエーションはいったいいくらあるのかわからないくらい発表されています。フランク・ガルシアも、1977年に"Wild Card Miracles"という、ヴァリエーションを集めた本をタネンから出しています。
私は原案通り演じるのも好きですが、山ほどあるヴァリエーションの中ではハンス・とリッカーの"Wild Man Wild"が気に入って、一時よくやっていました。これは表ではなく、裏の色が変化して行きます。原案者の意図したところは、一枚ずつ順に変化させる点でしょう。裏だけでなく、表を一枚ずつ変化させることもできます。
これ以外では、マニア用として、デックから8枚の赤い数字のトランプを抜き出し、それに1枚のジョーカーを加え、次々とジョーカーに変えて行く手順を自分なりに作っていました。これだと最初から同じトランプを使う必要がなく、いかにも「即席」という感じがするので気に入っていました。これはD.ディングルが当時発表した"Impromptu Wild Card"(The Complete Works of Derek Dingleに解説有り)にヒントを得て、自分なりに作ったのですが、今となってはどこまでがディングルのアイディアで、どこからが自分のアイディアなのかわからなくなっています。ディングルのレクチャーノートか"Kabala"に掲載されていたものがヒントになっているはずです。ディングルの著作と、私自身のノートを全部チェックしてみればわかると思いますので、はっきりしましたら補足しておきます。
なお、「ワイルドカード」という名前は、トランプゲームの際、どのようなトランプとしても使えるカードのことです。決して「野蛮なカード」ではありません。カードゲームに詳しくない人が翻訳した小説で、「ワイルドカード」を「野蛮なカード」と訳していたものが実際にあるそうです。
魔法都市の住人 マジェイア