マジシャン紹介
ダイ・ヴァーノン Dai Vernon (1894-1992)
Dai Vernon (1894年-1992年) カナダ生まれ、本名David Frederick Wingfield Verner。
1992年に98歳で亡くなったマジック界の神様のような人です。世界中のマジシャンから「プロフェッサー」という尊称で呼ばれていました。マジックを愛するものにとっては神様であり、アイドルでもありました。ヴァーノンの合理的な方法論は、マジックの考え方を一挙に数十年進歩させたと言われています。
若い頃はニューヨークで、マジックと同時に「紙切り」の芸を見せるボードビリアンもしていました。そのころ、当時の有名なマジシャンと数多く親交を持ち、マジックの世界で有名になってきました。
1963年からはハリウッドにあるマジックキャッスル(マジックショー中心のナイトクラブ)に常駐のゲストとして迎えられ、数多くの優秀な若手マジシャンを育てました。
ブルース・サーボン、マイク・スキナー、ラリー・ジェンニグス、ジョン・カーニー他、マジックの歴史に名を連ねるような多くのマジシャンに多大な影響を与えました。 プロマジシャンだけでなく、アマチュアマジシャンにとっても、ルイス・ギャンソンの手による"Vernon Book"はバイブルのような存在であり、今も多くの人に読み継がれています。
日本には1969年と1981年に来ています。 1969年にテンヨーの招きでレクチャーのため来日したとき、私自身は、本格的にマジックを始めたのがこの2,3年後であったため、残念ながら出席していません。しかし、レクチャーに出席した人や、テンヨーが記録として残していたフィルムは見せてもらいました。このときヴァーノンはすでに75歳ですが、数多くのマジックや技法を達者に演じています。
ヴァーノンがこのとき見せてくれたもので、一番うけたのは「セカンドディール」であったそうです。セカンドディールというのは、ギャンブラーが使うテクニックです。ほとんどの日本人にとって、知識としてそのような技法があることは知っていても、実際に見たのは初めてでした。ヴァーノンの見せてくれたマジックより、マニアにとってはセカンドディールのほうがショックが大きく、たちまち日本中で流行りました。その後、マニアの間ではセカンドディールがマジシャンにとっても必須技法のように考えらるようになったのですから、ヴァーノンも罪作りです。ヴァーノンがセカンドディールを見せたのは、ほんの座興のつもりだったのですから。
これ以外では、スペードのエースを、客の指定した枚数目から出現させるものが大変不思議であったそうです。これは長い間ヴァーノン自身がペットトリックにしていたようで公表しなかったのですが、ステファン・ミンチの手によるクロニクルのシリーズ(1987年)全4巻に解説されました。
ヴァーノン自身は筆無精のため、半世紀ほど前に薄いレクチャーノートのようなものや小冊子の解説書を書いただけです。しかし、解説の天才、ルイス・ギャンソンや近年ではステファン・ミンチなどにより、まとまった本が出版されました。ヴァーノンの知的遺産が埋もれてしまうことなく、マジックを好きな人たちにも享受できるようになったことは幸いです。
ヴァーノンのマジックが解説されている本を年代順に紹介しておきます。
すべて単行本、または単独のレクチャーノートであり、雑誌などに紹介されたものは省略しました。
- Secrets(20$ Manuscript)(1930年頃)
- Dai Vernon's Select Secrets(1941)
- The First California Lecture(1947)
- The Dai Vernon Book of Magic(1956)
- Dai Vernon Cups and Balls Routine(1958)
- Dai Vernon's Symphony of the Rings(1958)
- Dai Vernon's Inner Secrets of Card Magic(1959)
- Dai Vernon's More Inner Secrets of Card Magic
- Dai Vernon's Further Inner Secrets of Card Magic
- Ultimate Card Secrets
- Early Vernon(1962)
- The Lost Inner Secrets(1987)
- The More Lost Inner Secrets
- The Further Lost Inner Secrets
- The Fooled Houdini:Dai Vernon a Magical Life
(補足)
雑誌、The PALLEARESRS REVIEWが、Close-Up Folio #7,#8(1977年)でヴァーノン特集をしています。魔法都市の住人 マジェイア