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アガスティアの葉

1997/7/22

「アガスティアの葉」というのを知っていますか? アガスティアというのは、今から約5,000年前、インドにいた予言者だそうです。そのおじさんが、5,000年後に生きている「あなた」だけのために、完全個人別の予言を葉っぱに書いて残してくれているのだそうです。

指紋やいくつかの基本的な情報を与えるだけで、そのおじさんがあなたのために書き記した予言を葉っぱの山の中から取りだしてきて、過去や未来、仕事、結婚相手などを教えてくれるのだそうです。インドまで行けない人のために、代わってインドまで行き、葉っぱを探してきてくれる代行業まであります。

ところで、あなたが道を歩いているとき、何気なく拾った葉っぱの裏に、「あなたがこの葉を拾うことは運命づけられていました」と書いてあったらどうでしょう。驚きますか?別段、マジックの知識などなくても驚きませんね。これだと、誰が拾ったとしても当てはまるわけですから。

ではズバリ、あなたの名前まで書いてあったらどうでしょう。「○○さん、あなたがこの葉を拾うことは運命で決まっていました」とでも書いてあれば、さっきよりはだいぶ驚くでしょう。でもこれって何が不思議なのでしょう。誰かが葉っぱの裏に書いておいてくれたわけですが、私がその葉を拾わなかったら、その「予言」を読むことも、そのようなことが書いてある葉っぱがあったことさえわかりません。これはまさしく「存在のトリック」です。

アガスティアの話は、ある女性から聞いたのです。彼女はこれに大変興味を持っており、インドまで行きたいと言っていました。彼女がインドまでその葉っぱを探しに(または買いに)行くのは勝手なので、好きにすればよいと思っていました。それで何か救われるものがあるのなら、それも悪くないでしょう。私がそれにとやかく言うようなことではありません。

その葉っぱの真偽に関しては、私はまったく興味はありません。私が興味を持ったのは、この話はマジックに使えると思ったからです。

彼女から、「アガスティアの葉」のことを聞いたとき、瞬時に浮かんだのは、ある予言のトリックです。彼女が熱心に葉っぱの話をしている間、私はそのような運命論にはなんの興味もなかったものの、これならあるマジックを彼女に見せたら絶対驚くぞとほくそ笑んでいたのです。話にはフンフンと頷きながら、頭の中では葉っぱを使ったマジックのルーティンを組み立ていました。

それは少し前、知人に見せてもらったマジックがヒントになっています。このマジック自体の原理は昔からあり、実際に商品になっているものから、即席のものまで数多くあります。私も勿論知っていたのに実際にやられると驚いてしまいました。

実際に私が彼女に見せたのは次のようなものです。

彼女の話が一段落したとき、うちの庭や花瓶にある花から、葉っぱを4種類ほど集めて、一枚ずつ、4つの封筒に入れ、彼女の前に置きました。そして、一度、封筒から4枚の葉を取り出し、テーブルの上に一列に並べました。

「あなたがこの中のどの葉を選ぶかはすでに予言されています。そしてそれは変えることのできない運命なのです……。、一枚選んでください」

テーブルに並べた4種類の葉っぱから、彼女に一枚だけ選んでもらいました。そして彼女の選んだその葉を裏向きにしてもらうと葉の裏には、「あなたは必ずこの葉を選ぶ!」と書いてありました。

勿論、他の葉には何も書いてありません。

魔法都市の住人 マジェイア

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