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ダリエル・フィツキーによる

マジックの現象別分類

 

1999/2/24

ダリエル・フィツキー(Dariel Fitzkee)は、彼の著書"THE TRICK BRAIN"(St.Raphael House,1944)で、マジックの基本的な現象を19種類に分類しています。

フィツキーが発表する以前にも、いくつかの分類はありました。 現在わかっているものとしては、T.ペイジ・ライト(T.Page Wright)が1924年に、雑誌"THE SPHINX"で発表したものが印刷物としては最初かもしれません。 ライトの分類はカードマジックに限られたものでしたが、基本的な現象として14に分類しています。

その後、1933年にS.H.シャープ(S. H. Sharp)が"NEO MAGIC"において、はじめてマジック全般を含めた分類をしています。 大項目で6種類、小項目を含めると21になります。

このほかにも、ウィンストン・フリーア(Winston Freer)が"THE LINKING RING"に17項目に分類したものなどもあります。

フィツキー自身は19種類に分類していますが、1番の「出現」だけを取り出しても、さらに細かく分けて「出現」に48の例をあげています。とにかく、300ページを越える本で、分類についてこと細かく検証しています。あまり細かい分類をここで紹介しても仕方がありませんので、それはカットしました。

この『トリック・ブレイン』が出てから50年以上になります。その後、発表されたマジックだけでも数万になりますが、現象としての分類では、今でも十分使えることがわかると思います。フィツキー自身はこのような分類をすることで、新しいマジックを考案するときの、「発想の原点」にでもしたかったのでしょう。

フィツキーは現象別の分類をしていますが、「現象別」だけでなく、扱う「素材」による分類や、T.P.O.(Time, Place, Occasion)による分類などもおこなってみると、また新たなひらめきがあるかもしれません。

具体的に、あるマジックを以下の19のどこに分類するのかは、そう簡単なことではありません。

たとえば「カップ・アンド・ボール」ひとつを取り上げても、この中には消失、出現、移動などの現象が含まれています。たいていのマジックは、いくつかの現象が組み合わさってできています。しかし、中には、ひとつの現象だけというトリックも少なくありません。ある意味、そのほうが観客に与えるインパクトは強いかも知れません。ひとつのトリックの中に、いくつもの現象を混ぜると、かえって現象が分散してしまい、インパクトが弱くなることもめずらしくありません。マジックを考案するときは、そのようなことも考慮に入れながらやってみてください。

 


Dariel Fitzkeeによる「現象別19」の分類

 

1.「出現」(Production):何もないところから何かが現れたり、数が増える。

例:「ハト出し」「ミリオンカード」「マイザーズ・ドリーム」

2.「消失」(Vanish):何かが消える。

例:消しておしまいというのであれば、「火のついたタバコの消失」。いったん消して、その後出現させるのであれば、コイン、カード等、無数にある。

3.「移動」(Transposition):あるものが突然別の場所から現れる。

例:「ビル・イン・レモン」

4.「変形」(Transformation):色や形、大きさなどが変わる。

例:「カラー・チェンジング・ナイフ」

5.「貫通」(Penetration):ある物体が固体を通り抜ける。

例:「コイン・スルー・ザ・テーブル」「ハンキー・パンキー」

6.「復活」(Restoration):破ったり、壊したものが元に戻る。

例:「カードやお札の復活」、「人体切断」

7.「アニメーション」(Animation):生命のないものが動く。

例:「ボルトからナットがはずれる」

8.「反重力」(Anti-Gravity):重力に逆らった動きをする。

例:「邯鄲夢枕」「フローティング・ビル」

9.「付着」(Attraction):物体同士がくっつく。

例:「手のひらにくっつくナイフ」

10.「同調」(Sympathetic):あるものが、別のものの影響を受け、同じようになる。

例:「シンパセティック・シルク」

11:「不死身」(Invulnerability):傷つかない。

例:「人体切断」 「剣刺し」

12:「物理的、肉体的変形」(Physical Anomaly):首が伸びたり消える。

例:「ヘッドレス・クイーン」「親指が取れる」

13:「観客の失敗」(Spectator Failure):簡単なことを観客にやってもらうが、できない。

例:マッチの箱を使い、マジシャンと観客が同じことをしても、同じ結果にならない。

14:「制御」(Control):マジシャンの精神力で何かを動かす。

例:「ホーンテッド・デック」「時計の針がぐるぐると回転する」

15:「同認」(Identification):混ぜられたものの中から、それが見つけられる。

例:カードマジックのスペルリング・トリックや、一枚のカードがひっくり返って現れる。

16:「読心術」(Thought Reading):観客の心を読む。

例:「ブック・テスト」

17:「思考の伝達」(Thought Transmission):こちらの思っていることを相手に伝える。

例:マジシャンがある絵や数字を思い、それを観客が当てる。

18:「予言」(Prediction):将来起きることを、前もって言う。

例:「ブレイン・ウエーブ・デック」

19:「E.S.P.(超感覚的知覚)」(Extra Sensory Perception): 透視など、一般的な知覚を超えて起きるような現象すべて。

例:「箱に入ったダイスの目を透視する」


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