ROUND TABLE


Coffee Break

 

「オリーブの首飾り」

オリーブの首飾り

 

MIDI提供「電子楽器博物館」

2005年3月18日改訂
1999/5/25


 マジックの音楽といえば、すぐに思い浮かぶのがポール・モーリアの『オリーブの首飾り』でしょう。マジックのとき「♪チャラララララーー♪」というメロディーが流れてきたら、今ではこの音楽だけで客席から笑い声が出るくらいです。

この曲は1974年にフランスでディスコナンバーとしてヒットしました。原題を「エル・ビンボ」(EL BIMBO)といい、作曲者はクロード・モルガンです。フランスで大ヒットしたあと、ヨーロッパやアメリカでも流行りました。それをポール・モーリアがいち早く自分の楽団(ポール・モーリア・グランド・オーケストラ)に取り入れ、日本で演奏したのがそもそもの始まりです。またそのころ、国産ワインメーカーのメルシャンが1977年にテレビのCMソングとして使ったため、広く知れ渡りました。

「ワインを造り続けて100年、メルシャンワイン」

というフレーズがテレビなどで流れていたのを思い出します。ポール・モーリアの雰囲気が「メルシャン・ワイン」のイメージとぴったりであったのでしょう。

 ところで、この曲をマジックにはじめて使ったのは女性プロマジシャンの松旭斎すみえさんだそうです。日本では、この曲はマジックの定番のようになっていますが、世界的なことではありません。日本特有の現象です。

 なぜこの曲が日本でこれほど流行ったといえば、アマチュアの発表会で演じられるような繊細なマジックによく合うからです。アマチュアのマジッククラブや大学の奇術部が行う発表会では、「スライハンド」(Sleight of Hands)と呼ばれる手練ものが中心を占めています。指先のテクニックを駆使したマジックです。代表的なスライハンドものといえば、カード、コイン、シンブル、玉、シガレットなどですが、このような「線の細いマジック」には特によく合います。

 ポール・モーリアの曲で言えば「恋は水色」も大抵のスライハンドマジックに合います。今でこそだいぶ減っていますが、十数年前まで発表会に行ってこのどちらかの曲を聴かないことはないという状態が続いていました。プロマジシャンもテレビなどに出演するときこの曲をよく使用するようになり、あっと言う間にマジックの定番のようになってしまいました。

 ところが今ではこの曲を取り巻く事情は大きく変わっています。2、3ヶ月前、それを象徴するかのようなメールをもらいました。まだマジックをはじめて間もない方です。メールの内容は、今度宴会でマジックをするときこの曲を使いたいのだが、何という曲なのか教えて欲しいというものでした。この曲を選んだのは自分のマジックに合うからではなく、この曲さえ流せばそれだけで笑い取れるからということでした。

 芝居やミュージカルでたまにマジシャンが出演する場面があります。そのようなとき、この曲を流すと客席から笑い声が聞こえてきます。こうなってしまったら、本物のマジシャンはもうこの曲は使えません。使えばまじめなマジックもギャグになってしまいます。

 それにしても、自分のヒット曲が流れるだけで爆笑になるとはポール・モーリアも夢にも思わなかったことでしょう。

 「オリーブの首飾り」以降、これと類似の現象としてはMr.マリックが登場のときに使っている曲があげられるかも知れません。しかし「オリーブの首飾り」と比べれば、認知度はあまり高くありません。

 何にせよ、マジックに音楽は不可欠です。特にステージマジックの場合、「おしゃべりマジック」など特殊な場合を除いて、音楽は絶対と言ってよいほど欠かせません。ためしにテレビでマジックの番組あるとき、音を消してステージマジックを見ると、ずいぶん味気ないものです。

実際、ステージマジシャンはみんな自分の演技にあった曲を選ぶのに苦労しています。プロマジシャンの中には、苦労して見つけた自分用の曲を知られたくないため、曲名は教えない人も少なくありません。しかし最近は各マジシャンが音楽の重要性に気づき、普段から自分の演技に合う曲を探すようになってきたからでしょうか、ひとつの曲に極端にかたよることもなくなってきたようです。

★最後に

 デビッド・カッパーフィールドやランス・バートンのような世界のトップクラスには優秀なスタッフがついており、音楽専門のスタッフもいます。彼が使っている曲を紹介しておきます。興味のある方は参照してください。

 デビッド・カッパーフィールドとランス・バートンの使用曲

魔法都市の住人 マジェイア


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