マジックをやらないマジシャン達のために(2)
得意なフィールドを知ろう
2001/1/18一部改訂
1997/12/10
マジックを見せることのできなくなったマジシャンへのアドバイス、第2弾です。
プロマジシャンと比べて、アマチュアのほうが有利なことがあります。何だと思います?いろいろありますが、マジシャンの側が、観客を選択できる点も大変有利な点です。 プロの場合、少々行儀の悪い客であっても、何とかなだめすかして、相手をしなくてはなりません。またそのような客あしらいができないようではプロとしてやって行けません。
ところでマジックを演じる場合、どのような状況で見せたら、あなたは自分の力を一番発揮できますか? 例えば、宴会のような場が得意だという人がいます。逆に宴会のように、酒の入っている席では絶対にマジックは見せないという人もいます。 小さな子供相手に見せるのが得意な人もいれば、子供は苦手な人もいます。 大勢より、女の子相手に一対一で見せるのが一番好きという人もいます(汗)。
実際は何だって構わないのですが、自分の得意なフィールドが自覚できているかどうかが問題です。
どこででも、どのような観客が相手であっても自分の実力が100%発揮できるような人はいません。プロであっても無理です。賢明なプロは仕事を選びます。自分の実力が十分発揮できないようなところで仕事を受けても、決して満足な結果にはならないことを知っているからです。
精神科医の北山修氏が、昔おもしろいことを言っていました。北山氏というのは、1960年代後半、「フォークルセダース」というフォークバンドで一世を風靡したあの北山氏です。”♪♪おらは死んじまっただー♪♪”を歌っていたグループと言えば思い出す人もいるでしょう。
その北山氏が言っていたことです。 古いことなので細かい点は忘れましたが、要は、誰かと何かの勝負をするとき、とてもこいつにはかなわないと思ったら、条件をできるだけ限定すればそれなりの勝負に持ち込めるということでした。例えばオリンピックの短距離走の選手と100メートルを競っても、まず絶対あなたが勝てるはずがありません。ちょっとやそっとトレーニングを重ねても、全然勝負にならないでしょう。
しかし10メートルの勝負ならどうでしょう。それでもダメなら「1メートル走」にすれば、それほど引き離されないで(笑)、勝負に持ち込めるチャンスもあるかもしれません。ひょっとしたら勝てるかもしれませんよ。
この例は冗談のように聞こえますが、決してそうとも言えません。一面の真実をついています。私のような、才能と呼べるようなものなど何もない人間でも、条件の設定次第では、実力が100%近く発揮できる可能性があることを感じさせてくれます。
フレッド・カップスのように、ステージ、パーラー、クロースアップ、レクチャー等、何でも完璧にこなし、観客のレベルがどのようなものであっても、それに合わせることができるスーパーマンのようなマジシャンはそれほどいるものではありません。
私たちのようなレベルのマジシャンが、フレッド・カップスとまともに対抗しようとしても話になりません。しかし、あなたや私でも、「あの人」に「あの場所」で「あのマジック」を見せるのなら、フレッド・カップスに近いくらいの成果があげられると思える場面もあるのではないでしょうか。
アマチュアの場合、苦手な条件のところでやる必要はありません。自分の力が十分発揮できる場面を知ることが、マジックを気持ちよく続けて行く上でのコツだと思っています。
魔法都市の住人 マジェイア