ROUND TABLE
Rope Cut
1999/10/17
ステージやパーティ用のマジックとしてよく使われるアイテムのひとつに、ロープがあります。一口にロープを使うマジックと言っても、「現象」は一般に思われているより、ずっと数多くあります。しかし、代表的なものはやはり「ロープ・カット」でしょう。ロープの中央をハサミで切り、二つに切断したのにそれがまたつながるマジックです。
「ロープカット」だけを取り出しても、の方法は数十はあるでしょう。分類するのが好きなダリエル・フィツキー(Dariel Fitzkee)は、ロープカットの基本原理を6種類に分類して、ロープカットだけを解説した本も出しています。"Rope Eternal, or The Only Six Way To Restore a Rope"(1944年)(邦訳あり:『ロープ奇術』(力書房,1961年)
「ロープカット」の基本的な現象は二つに切ったロープが再びつながるということなのですが、ここでも"Simple is Best!"の原則は生きています。観客の立場から、最もフェアーに見えるのは次のようなものでしょう。
1.長さ1メートルほどのロープを1本見せる。
2.ハサミかナイフで、ロープの中央を切断する。
3.切ったロープは両手に持ち、完全に2本に切断されていることを観客に示す。
4.切った部分を結んで、中央に結び目を作る。
5.結び目を手の中に入れ、しばらく揉んでいると、結び目が消えてしまい、1本につながってしまう。
6.復活したロープを観客に手渡し、調べてもらう。たいていのロープカットは、どのような原理を使っても、今のような条件が満たされているように見えるのですが、本当に真ん中から切って、両手に2本のロープを持って切断されていることを示すことのできるものは、そう多くありません。マニアが見てもフェアだと思えるようなものは、ごく限られています。
今のような条件を満たしているものとして、私が今までに見たものでは、トリックスの赤沼社長に見せてもらったものが印象的でした。赤沼氏がトリックスを作ってまだそれほど間もない頃、宣伝も兼ねて、無料のレクチャーを全国で開いていました。そのとき、オープニングに見せてもらったロープカットは、ほぼ上の1から6までの条件を満たしていました。あのときは、確か「バーン」という大きな音と共に復活していました。一瞬にして終わってしまうとはいえ、これほど完璧なロープカットもないでしょう。
ロープマジックは、復活現象だけでなく、様々な現象が可能です。そのため、つい色々な現象を組み込んでルーティンを作りたくなります。演じている側は変化を付けているつもりでも、観客からすれば、ただロープを使って、長々と何かをやっているようにしか見えないことが多いのです。そのため、見ていてもすぐに飽きてきます。先ほどの赤沼氏のものは一発勝負と言ってよいほど、現象は強烈です。ただ、ちょっと準備が必要です。ロープとハサミだけではできません。
ロープとハサミだけでもできるロープカットで優秀な手順も数多く発表されています。上の1から6までの条件を必ずしも満たしてはいませんが、観客からすれば、十分不思議に見えます。
石田天海師のロープカットや、最近ではロープマジックだけでFISMの世界大会で優勝したタバリの手順もすぐれています。特に、タバリ(Francis Tabary)のロープマジックは、ここ数十年、たいして進歩のなかったロープマジックの分野に新しい可能性があることを見せてくれました。ロープマジックだけで、FISMの世界大会で優勝することなど不可能だと思われていましたが、実際に優勝してしまったのですから、どれほど画期的なものか想像できると思います。マニアが見ても、大変不思議に見えます。私も初めて見たときは、ことごとく引っかかりました。
このタバリの演技は、A-1 MULTIMEDIAから2巻のセットで発売されていますから、興味のある人は買っておいてもよいでしょう。
"The Award-Winning Rope Magic of TABARY",1996年)また、赤沼氏のものと原理が似たものとして、スティーブ・ベッドウェル(Steve Bedwell)がビデオ、「M.D. not required」で演じているロープカットも鮮やかです。
魔法都市の住人 マジェイア