ROUND TABLE

単位当たり「不思議量」


マジックを観客に見せるとき、数多くのマジックを見せることは決してサービスになりません。経験豊かなマジシャンであれば、プロもアマも、みんなこのことを警告しています。

いくら数多くマジックを見せても、観客に与えることのできる驚きの総和は増えません。むしろ数多くやればやるほど、「単位当たり量」つまり、ひとつのマジックに対する驚きの量は減ってきます。

マジックには軽い現象のものから、強烈な印象を与えることのできるものまで色々あります。仮に、最高に強烈な印象を与えることのできるマジックを「レベル10」とでもしましょう。様々なレベルの現象を混ぜて、数多く見せても、観客に与えることのできる驚きは、その人の最高レベルの10を越えることはできません。レベル10のものと、レベル8のものを同時に見せれば、合計してレベル18になるというものではありません。いくら見せたところで驚きの最大値は10であり、数を増やせば増やすほど、全体の印象は薄れてきます。

温度30℃の湯に、50℃の湯を足しても80℃にならないのと同じです。なるのは40℃前後です。いくら湯を追加したところで、一番高い温度の湯を越えることはできません。 アマチュアマジシャンを見ていると、この人は小学生の頃、30℃の湯と50℃の湯を混ぜたら、80℃になると思っていたんじゃないかと、勘ぐってしまいたくなるような人が大勢います。

驚きの総和が増えないのなら、数を増やせば「単位あたり量」が減ってくるのは、これも小学生でもわかることです。

私がこのようなこと繰り返し言っても、まだあまり経験のない方には、いまひとつ実感としてわからないと思います。そのような方は実際に色々と体験してみてください。そのなかで経験する成功や失敗をとおして、自分にとっての適切な量もわかってくるでしょう。

魔法都市の住人 マジェイア

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