新しいトリックを見せるときは
あなたが購入したばかりのトリックや、本やビデオで覚えたばかりのトリックを誰かに見せるとき、できるだけきちんと練習してから見せるようにしてください。特にこれはおもしろいと思ったものなら、なおさらしっかり練習してから見せるようにしてください。マニアどうしで見せ合う場合によくあることですが、練習もせずに見せたため、見せられた人はタネが丸見えであったり、演出がつまらなくて、そのトリック自体をつまらないものと思ってしまうことがよくあります。
マニアの場合、新しいトリックのどこが今までと違うのかを知れば、それだけですべてがわかってしまうため、適当に見せてしまいがちです。まあ、くだらないボツネタはそれでもよいのですが、たまに傑作が混ざっていることがあるので困ります。
ロイ・ウォルトンのマジックに「カードワープ」(Card Warp)があります。
私は今から20数年前、あるマニアから、初めて”カードワープ”を見せてもらいました。しかし、見せてくれた人があまりにもヘタで、タネが丸見えでした。そのため、全然おもしろいと思えなかったのです。まだこのトリックが日本では知られていなかった頃の話です。それから1年ほどして、これが世界的なヒット商品になりましたが、私はなぜこんなものが商品になるのか理解できませんでした。しかし、数多くの著名なマジシャンがこれを絶賛し、自分のレパートリーに入れているのを見ると、優秀なトリックであることは間違いないようです。でも私にはボツネタのひとつに過ぎなかったのです。
今でも初めて見たときの印象が強く、どうにも好きになれません。もし最初のとき、うまく見せてもらっていたら、不思議で、楽しいマジックであったと思うのに、随分損をした気分です。
あなたがこれは傑作だと思うトリックと出会ったら、それを人に見せるときは十分練習してから見せるようにしてください。ある程度きちんと練習してから見せるのは、原案者に対しての礼儀であると同時に、同好の者に対する責任でもあります。
魔法都市の住人 マジェイア