ROUND TABLE

 

"Vanished or Gone"

「プレモニション」に関連して


2000/2/26

「魔法都市日記(2000年1月)」で、「グーフィー・デック」を使ったギャグ版「プレモニション」のような現象を紹介しました。すると早速それに関して、友人の福井哲也氏からメールをもらいました。最近読んだ本の中では、Peter Duffieの"Effortless Card Magic"に載っている"Vanished or Gone"が、「プレモニション」のヴァリエイションとしておもしろかったそうです。

早速、大阪奇術愛好会の例会や一般の人の前で実演してみると、想像していた以上の効果がありましたので紹介します。

なお、上記の本は私は持っていなかったため、三田皓司さんからお借りしました。お二人にはいつものことながら様々な情報を提供していただいており、お礼の申し上げようもありません。

★現象

観客に一人出てきてもらい、次のように説明します。

「トランプ一組はジョーカーを除くと52枚からできています。しかし、このトランプは51枚しかありません。一枚足りないのです。”消失したカード”があります。今からあなたに52枚あるトランプの中から1枚だけ心の中で思っていただきます」

こう説明してから、観客に心の中で、1枚だけ自由に好きなトランプを思ってもらいます。観客が「思った」と言ったら、テーブルの上に置いてあるデックをケースごと取り上げてもらい、箱から出してもらいます。そして、1枚ずつ枚数を数えながら、思ったカードが出てくるまで配ってもらいます。

すると確かに51枚しかなく、観客の思ったトランプだけがありません。確かにそれだけが「消失」しています。

注:オリジナルの「プレモニション」との最大の違いは、デックを一組だけ、最初からずっとテーブルの上に出しておける点です。また、最近「売りネタ」で使われているプレモニションのように「D.F.カード」も使用しませんので、観客自身にすべての操作をしてもらえるのも優れている点でしょう。

★コメント

このマジックは観客に何も質問する必要もありません。特にアマチュアが特定の観客とマンツーマンのような状態、例えば彼女と二人だけでいるようなときに見せるのであれば、思ってもらったカードの名前は観客自身が51枚を数え終わるまでたずねない方がよいでしょう。他にも観客がいる場合は、名前を言ってもらったほうがよいか、このときも最後までたずねないほうがよいのかは好みの問題と、「消失したカード」をどこかから取り出すか、取り出さないで終わるかで多少変わってきます。

「消失したカード」は取り出しても、取り出さなくても、どちらでもかまいません。

上記の現象を読んで、マニアでも解決できない部分があるはずです。実はこのマジックが上のような現象として成功する確率は50%以上です。確率的には悪くて50%、普通は70%から80%くらい成功します。もし失敗した場合も逃げ道はあります。うまくいった場合と比べると、効果は多少減るでしょうが、それも決して悪くはありません。立派にマジックになっています。その部分も十分実用になるので、今回紹介した次第です。ただ、"Vanished or Gone"は英語で解説されていますので、うまく行かなかったときの処理の仕方がそのままでは日本語でできません。その部分を変えたものが上記の「現象」に含まれています。これは私(マジェイア)のアイディアです。「現象」をよくお読みいただき、オリジナルの"Vanished or Gone"と比べていただくと、その違いがわかると思います。ほんのちょっとしたセリフの言い回しだけなのですが、それを思いついたので、私自身はやってみたくなりました。

なお、このマジックの大元になっている「プレモニション」(Premonition)というマジックをご存じない方も大勢おられると思いますので、ざっと説明しておきます。

「プレモニション」は、エディー・ジョセフ"Eddie Joseph"(1899-1974)という、インドのカルカッタ生まれのイギリス人が考案しました。著述家であり、マジシャンでもあった人です。

オリジナルの「プレモニション」自体、これは今でも大変な傑作なのですが、マニアで演じている人を見たことは一度もありません。理由はデックを3組用意して作らなければならないので面倒なことと、一部気になる点があるからでしょう。しかし実際にやってみると、マジシャンが想像している以上の大きな効果のある奇術です。数多くの「改案」や、「売りネタ」にするためにトリックカードを使用したものも発売されていますが、そのようなものと比べても、断然、原案のほうが優れています。演出は「プレモニション」というタイトルどおり、「予知・予感」になっています。「昨晩夢の中で、今日あなたが思うカードを知ることができました。それがあっているかどうか試してみます」といった演出です。

また原案では、観客に心の中で思ってもらったカードの名前をたずねてからデックを取り出すため、このあたりもマニアは抵抗があるのではないでしょうか。実際にはこの部分はちょっとした演出上の気遣いでほとんど気にならないのですが、ここを自分なりにクリアーしておかないと、たずねてからデックを取り出すことがどうにも気になるはずです。

オリジナルは日本にも今から50年くらい前に伝わったそうですが、当時は相当な金額を支払って、講習を受けたそうです。それくらいトップシークレットに属するマジックであったのでしょう。

★マニア用コメント

ピーター・ダフィーの"Vanished or Gone"には、直接、元になったマジックがあります。Dave Robertsonの"Totally Gone"(Five Times Five,Kaufman and Company)です。これもおもしろいので、"Five Times Five"をお持ちなら、読んでみてください。

消失カードをどこかから取り出したいのであれば、「ブレイン・ウェーブ・デック」を使うか、適当な「カード・インデックス」があればそれを使用してもよいでしょう。

★補足

"Vanished or Gone"は"Vanished and Gone"という名前で、単独の商品として販売されているようです。現象はまったく同じです。

 

魔法都市の住人 マジェイア

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