最初に
私がこれを購入したのは２０年以上前で、シカゴのIreland Magic Companyからです。そのときの価格はわずか１ドルでした。最近、インターネット上のスティーブンスのホームページにこれの広告を見つけましたので、懐かしくなりご紹介します。
必要なものはレギュラーデックが１組だけです。送られてくるのは、数ページの解説書だけです。
現象
トランプを使いますが、普通のカードマジックではありません。日本ではほとんど類型がないような種類のものです。
ストーリーにあわせて、デックをカットしたり、裏向きのデックのトップからカードを表向きにして行くと、出てくるカードがストーリーと見事に一致しているのです。 一組すべてを使い切ってしまいます。
「ベルホップ」というのは、ホテルなどで働いているボーイのことです。「ベルボーイ」とも言います。ここでは、大きなホテルで働いているサムというボーイの物語になっています。
スペードの２がサムです。ある夜、階上の部屋から呼び出しがありました。エレベーターが故障していたので、彼は階段を上がって行きました。１段、２段、３段、．．．（これに合わせてカードをマジシャンが自分で、または客に何度もカットしてもらいます。）彼は部屋に着きました。部屋には４人の男性が泊まっています。「なにかルームサービスをご希望でしょうか？」 すると４人は、「お友達が欲しいのだが．．．」と言いました。サム はすべてがわかり、通りに出て、ワンブロック、ツーブロック、スリーブロック、と進んで、ブロンドとブルーネットの美女を２名ずつ連れて、部屋に戻りました。
このようなストーリーに合わせてカードをカットしたり、配って行くと、出てくるカードとストーリーが一致しているのです。先ほどの例では、４枚のキングが出てきて、美女が部屋に着いたところでは４枚のクイーンが出てきます。
この後、客とサムのやり取りや、ギャンブルの場面があったりするのですが、最後までストーリーと出現するカードが面白いように一致しています。
最後に一言
これを有名にしたのは、フランク・エバーハートというバー・マジシャンです。 シカゴには、アイバンホーという大変有名なレストランがあります。ここは７つのバーや様々な食事をする部屋、野外のテーブルなどもある、大きなレストランです。
私がこれをこれを購入したのは２０年以上も前ですが、解説書を初めて読んだとき、何ともかわったトリックに戸惑いました。私にはとてもできないと思いましたが、手慣れたバー・マジシャンの手で演じられたら、面白そうだとは思いました。カウンターでジョークを言いながら、矢継ぎ早にデックをカットしたり、次々とカードを表向きにして行くと、ストーリーが展開して行くのですから、楽しくて、それでいて不思議でしょう。
このマジックは購入後、１０数年間すっかり忘れていました。ところが、今から数年前、夜、ビデオを見ながら横になっているとき、知らない間に寝てしまっていました。気がつくとビデオは終わり、深夜放送の映画が流れていました。スイッチを切ろうと思ったら、画面にはトランプを持った男が、道路でなにやら見せています。寝ぼけたまましばらく画面を見ていると、それがなんとこの"Sam, the Bellhop" だったのです。２０年ほど前に解説書を読んですっかり忘れていたトリックが、マジックと何の関係もない深夜放送の映画の中で演じられていたのです。ずいぶん驚きましたが、そのときはそれが終わったら、すぐにテレビのスイッチを切って寝てしまいました。数日後、この映画のことを思いだしましたが、本当に見たのか、それとも夢の中の出来事だったのか、自分でもよくわからないような状態でした。しかし、あまりにも鮮明に覚えていたので、多分、実際にやっていたのだろうと納得したものの、その後、また忘れていました。
それが先日、インターネットのスティーブンスのところで、これがまた売り出されているのを知り、この際、あの映画は夢だったのか、それとも本当の映画だったのか確かめてみようと、海外にある、マジック関係のニューズグループに投稿してみました。するとありがたいもので、数時間後にコメントがついており、その映画は "Brother from Another Planet"だと教えてもらえました。
このマジックを演じる場合、ストーリーをそのまま日本語に訳しても無理かも知れません。通りを横切るのも、ブロックという単位は使えませんから細かい修正は何カ所か必要でしょう。
最近では、Bill Maloneというアメリカでは売れっ子のマジシャンもよく演じているようです。日本でも、ＢＳで放送されたマジック番組の中で、彼がやっていましたから、ご覧になった方もいるでしょう。
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