製品名 | Three Bread Crumbs |
原案者 | Rene Lavand |
購入先 | Stevens Magic Emporium |
発売元 | ENIGMA |
価 格 | $47.50(ビデオと道具一式) |
分 類 | クロースアップ、カップ |
1998年12月17日
最初に
アルゼンチン出身のマジシャン、レネ・レバントのマジックです。レバントは片腕しかありません。左手一本で、カードマジック、カップアンドボール、パドルムーブまで、数多くのマジックを見せてくれます。ちょっと想像してみてください。普段あなたが演じているマジックのなかで、右手がなくてもできるものがあるでしょうか?おそらく、何一つできないと思います。両手があってもなかなかうまくできないのに、レバントは片手だけで、本当に不思議なマジックを数多く見せてくれます。片手しかないことをハンディとは思わず、むしろ片腕であるがために不自然にならない動作や見せ方があり、それをよく研究しています。そのためマニアが見ても驚くことが少なくありません。
今回紹介する「スリー・ブレッド・クラムズ」は、2,3年前、ビデオで見ました。10年以上前に開かれたヨーロッパの大会で、彼が演じている演技をビデオに録画したものです。そのビデオでは、カードマジックなどもやっていたのですが、私はこのマジックを見たとき、本当に驚きました。このマジック自体はよく知られているものですので私自身、昔からよくやっています。マニアなら誰でも知っているようなマジックです。それなのに最後で3つのボールが消えたときは、カップに仕掛けがあるのかと思ったくらいです。
現象
元になっている基本的な現象は、"One in the Pocket, Two in the Hand"と呼ばれるものと同じです。一般的なものは、直径1センチ程度の3個のボールを使い、2個を手の中に握り、1個をポケットの中に入れます。手を開くと、ポケットに入れたボールがいつの間にか手に戻っており、3個とも手から出てくるというものです。最後は色々な終わり方がありますが、よく演じられているのは、3個のボールが全然違うもの、例えば鶏の卵とかライター等に変化するものや、突然、ボールが3個とも消えてしまうといった見せ方があります。
デバントのこのマジックのタイトルは、「3つのブレッド・クラム」となっています。クラムというのはパンのくずのことです。即席で演じるのであれば、パンを小さく千切ったものを丸めて、直径1センチ程度のボールにして、演じるのでしょうか。添付されているボールはパンくずではありませんが、一見するとパンくずを丸めたような色になっています。実際は少し硬い粘土のようなものです。それと小さなコーヒーカップを使います。エスプレッソなどを飲むときに使う小さいコーヒーカップです。
3個のボールを見せて、2個をカップの中に落として入れます。1個をポケットの中に入れます。ところがカップを倒すと、中から3個のボールが出てきます。これを何度か繰り返します。途中ポケットに戻すところで、指先ではじいてテーブルの上からはじき飛ばしてしまう見せ方もしています。それでもカップからは3個戻ってきます。
また、観客自身に2個のボールを入れてもらい、1個をはじき飛ばしてもまた3個出てきます。全部で、20回くらい、カップから戻ってくるという現象を繰り返して見せています。普通、このタイプのマジックは、3、4回繰り返したら終わり、クライマックスに持っていくのですが、レバントの演技を見ていると、20回でも飽きるということはありません。回を重ねるごとに、ますます不思議に見えてくるのです。そして最後、3つともボールが消えたときは本当に驚きました。
コメント
このマジックは、知人の超マニアがヨーロッパのコンベンションにいったとき、レバントが販売していたので買ったそうです。実演しているのを見たら、あまりにも不思議だったので、早速ホテルの部屋で箱を開けてタネを見たそうです。すると、入っていたのはただの小さなコーヒーカップと、粘土を丸めたような玉が10個ほど入っていただけです。何も特殊な仕掛けなどなく、それで自分が引っかかったのが信じられなかったそうです。これは私も同じです(笑)。
片腕しかないことをハンディとは思わず、むしろそれを利用して全体を構成しています。ハンドリングやミスディレクションも巧みであるため、両手で演じる以上の幻覚を生じます。このような演技を見ると、クラシックを自分なりに研究すれば、可能性は無限とも言ってよいほど広がっていることがわかるでしょう。
これを販売しているショップはイタリアのENIGMAというところですが、アメリカではスティーブンスが、独占契約を結んでいるようです。私もちょうど1年ほど前、スティーブンスの最新カタログに載っていたのですぐ申し込んだのにすでに品切れになっていました。今回も、一ヶ月ほど前に届いたカタログに載っていたので申し込んだらまた売り切れになっていてがっかりしていたのですが、2週間ほど前、再度注文するものがあったので、もう一度注文してみたらありました。やっと手に入れることができました。今年一年間で、一番感銘を受けたマジックです。
なお、これはカップ、ボール、ビデオがセットになって販売されています。
最後に一言
それにしてもレバントを見ていると、アドラーの言葉、「人は何を持っているかではなく、自分の持っているものをどう利用するかで決まる」というのがよくわかります。片腕しかないのは大変なハンディですが、それでも両手がある人以上に不思議なことをやってくれるのですから、「私は手先が不器用で」などという言い訳は甘え以外の何ものでもありません。人というのはやる気と熱意さえあれば、不可能とも思えるようなことでもできてしまいます。
魔法都市の住人 マジェイア