製品名 | ダイナミック・コイン |
発売元 |
テンヨー |
価 格 | 2,000円 |
分 類 | クロースアップ、コイン |
最初に
今から30年くらい前、つまり1968年後、日本で初めてこのタイプのマジックを売り出したのは「連盟」だと思います。そのときは10円玉を6、7枚重ねたものを使い、容器も銅製でした。それから数年後、今のような100円玉のセットになり、材質も真鍮に変わりました。トリックス、テンヨー他、数社から売り出されています。
現象
元来、これは外国のネタです。基本的な現象は、数枚重ねたコインがあり、それに小さな容器をかぶせると完全にコインが消えてしまうか、他のものに変化する現象、例えば小さなコインやダイスに変わってしまうといったものでした。容器をコインにかぶせるのは、マジシャンがやっても、観客にやってもらってもかまいません。今、自分でかぶせたばかりなのに、容器を持ち上げるとコインがすべて消えてしまっているのは、大変強烈です。
日本で売り出されるようになってからは、2個の容器とリングを使い、消失・出現だけでなく、コインが二つの容器の間を移動したりする、移動現象も付け加えられるようになりました。
コメント
現在、このセットを購入すると、解説書には上の写真のように2個の容器とリングを使う手順が紹介されています。売り場でディーラーの人がやって見せるときも、2個の容器とリングを使っています。これが外国で最初に売り出されたときも同じようなセットだったのですが、容器のひとつはレギュラーで、ひとつだけがネタになっていました。そして現象を見せるときは、容器をひとつだけ使ったのです。ひとつの容器でコインを消したり他のものに変えていました。観客に容器を調べてもらうとき、レギュラーの容器とすり替えていたのです。リングは"BANG RING"(バンリング)といい、後でこっそりと、ネタをはずすときに使うためのものだったのです。
それが、どういうわけか初めてこのマジックが日本で売り出されたとき、何を勘違いしたのか、最初から2個の容器とリングを使う手順を解説したのです。初期に売り出された連盟のものはネタをそのまま観客に渡すことは無理でしたが、数年後発売された真鍮製のものは大変精巧になっており、すり替える必要もなくなりました。そのため、観客に堂々と手渡して調べてもらうことができたので、現在のようなルーティンになったのでしょう。外国製のギミックコインを購入すると付いている「バンリング」を道具の一部と思い、堂々と見せてしまったのは今から思えば笑い話です。
最後に一言
20数年前、これが初めてデパートのマジックコーナーに出てきたとき、爆発的に売れました。Mr.マリックも、昔デパートでディーラーをしていた頃、これだけで月に300万円くらい売れたこともあると言っていましたから、ディーラーの人達にとっては「金の成る容器」であったことでしょう。
しかしこれにも喜んでばかりいられない面もあったようです。確かにこれは売れるのですが、今までマジックをやったことがない人でも、5分も練習したら、たちまち、ディーラーの人がやっていたのと同じことができてしまいます。5枚の100円玉が目の前で消えたり、また現れたりする現象が、文字通り練習不要で出来てしまうのです。これでマジックに興味を持った人が、次回、売場に何かを買いに来ても、これほど簡単で強烈な現象のマジックなど他にはありません。そのため、2度目からは何も買わずに帰ってしまう客が増えたそうです。
実際、これはネタとしてはよくできています。タネを知らなかったら、絶対、驚きます。私も30年くらい前、連盟が初めて売り出した銅製のものではじめて見せられとき、信じられませんでした。その当時、大阪の阪神百貨店ではジョニー広瀬氏がディーラーをしており、スライハンドをまぜた独自の手順を見せてくれました。そのためよけいに不思議でした。そのとき、容器でコインが消えるのも不思議だったのですが、一枚のコインを左手に握ったのに、手を開けると消える現象を見せてもらいました。私にはこのほうが数倍強烈でした。この道具を買ったら、それも教えてあげると言われ、即座に購入したのを覚えています。それは「フレンチドロップ」を使ってコインを消す、今ではマニアなら誰でも知っている技法です。しかし当時の私はまだフレンチドロップなどという技法など知らなかったので、そのやり方を教えてもらえたことのほうが感激でした。
ところで、これって今でも相変わらず売れているのでしょうか?最近ディーラーの人が実演しているのをあまり見かけなくなりました。相当普及してしまったので、やりにくいのかも知れません。