書籍紹介

書名 現代カードマジックのアイディア
著者 松田道弘
出版社 東京堂出版
価 格 3,800円(税別)
発行日 1999年9月
分類 カードマジック

1999年9月17日


Problem of Card Magic松田さんの新しい本が出ましたので紹介します。

この本の「あとがき」で、松田さんは、数十年前に出版されたルポールの名著、『カード・マジック・オブ・ルポール』に、永年、ジェラシーに似た羨望を覚えつづけていたと書いておられます。

ルポールの本は、前半でルポール自身のオリジナル技法を解説し、後半でその技法を使ったオリジナルトリックを解説するというスタイルになっています。これはルポールが初めてというわけではないでしょうが、とにかく技法もトリックも優秀なのです。これは言うまでもなく、ルポール自身が大変すぐれた演技者であると同時に、クリエイターとしても優秀であったからです。技法も無理矢理作ったようなものではなく、プロとして、永年実戦で使い込んだものばかりですから、無理・無駄がまったくありません。どれもやさしくはないのですが、意味のない難しさではありません。目的をしっかり理解してから練習すれば、マスターできる技法ばかりです。

松田さんのこの本は、解説のスタイルは先のルポールの本と同じですが、紹介されているトリックは、ここ数十年の間に、カーディシャンの間で話題になったものが中心です。

まもなく20世紀が終わります。この百年の間に発表されたカードマジックは優に数万はあるでしょう。年に百種類でも百年で一万になるのですから、実際には十万を越えているかも知れません。数だけを数え上げればそれくらいはあるでしょうが、テーマはそれほど多くありません。

「コレクター」という、マルティプル・サンドウィッチ現象が流行ったこともあります。「リセット」も流行りました。この本のタイトルは『現代カードマジックのアイディア』、サブタイトルが"Problem of Card Magic"となっています。「プロブレム」というのは、カードマジックの世界にある問題のことです。問題と言っても、トラブルのことではありません。「宿題」とでも言ったほうが近いでしょう。あるテーマを解決するための、「方法の研究」です。それを「プロブレム」と呼んでいます。ひとつのテーマについて、世界中のアマチュアやプロマジシャンが様々な解法を発表しています。

プロブレムになるテーマは、人為的に作ろうとしてもできません。大抵は偶然です。誰かが発表したカードマジックの現象が、世界中のマジシャンの心をとらえてしまうことがあります。また、新しい技法が発表されると、それを使ったマジックが数多く発表されることもあります。「ダブル・リフト」、「エルムズレイ・カウント」、「ハーマン・カウント」、「ティルト」などの技法が発表されると、あっと言う間にマジシャンの常識になりました。

この本では松田さんのオリジナル技法や解法で解説されたテーマが10種類、紹介されています。20世紀の最後に、このような形で整理していただいけると、次の世紀の人たちは過去100年にどのようなことが流行ったのかを知るのに重宝するでしょう。また、多少なりとも創作に興味がある人にとっても、よいお手本になるはずです。はた目にはほとんど気づかれないかもしれない「ちょっとした改案」が、当事者にとっては天と地ほどの決定的な差になることが少なくありません。10年,20年という時間を掛け、少しずつ手を加え、手入れされた作品に触れられるのは、同好の者にとってこれ以上の喜びはありません。

またこの本の最後には、思い出すままに…… ビデオにみるカード・マジック40」と題して、40種類のカードマジックが紹介されています。ビデオの中で演じられているカードマジックの中で、松田さんの記憶に残っている、印象深いものが紹介されています。ビデオコレクターに取ってはこれもありがたい資料です。

魔法都市の住人 マジェイア

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