ビデオ紹介

Michael Skinner Master Teach-In Series

1998年8月28日

A-1 MULTIMEDIAから、マイク・スキナーの新しいビデオシリーズが出ました。
(1998年)

"MICHAEL SKINNER'S Master Teach-In Series" という名前で、1本のビデオの中で、一つだけトリックを解説しています。今回、このシリーズが3本まとめて発売されました。

ざっと内容を紹介します。値段はどれも1本12.50ドルです。

Volume One:The Linking Rings

3本だけで行う「リンキング・リング」です。
きれいに見せようとするのはわかるのですが、どうもよくありません。リンキングリングは切れ目のない金属の輪がつながったりはずれたりするからマジックになるのに、3本リングの最大の欠点はつながった状態で観客に手渡すことができない点です。これは致命的です。どれだけきれいにつがったりはずれたりしても、観客がどこかに切れ目があると思っている疑念をはらさないと、マジックになりません。

終わってから、最後に3本を観客に渡して調べてもらっていますが、ここでのスィッチも、いかにもわざとらしいミスディレクションを使っています。はっきり言って、これはお薦めできません。

Volume Two:The Color-Changing Knives

ナイフの両面を見せ、白いナイフであることを確認します。それを右手の指先で持ち、左手で回転させると、突然、黒いナイフに変わります。もう一度同じことをして、白に戻します。ポケットからもう1本ナイフを取り出します。白と黒のナイフを左右の手に握りますが、それがいつの間にか入れ替わっているという現象を2回ほど見せます。
最後は2本とも白いナイフになります。あっさりしたナイフルーティンです。

最初に行う、回転させながらのカラーチェンジはビジュアルでよいのですが、どうもタイミングがイマイチです。昔のマイク・スキナーならこんなことはなかったと思います。極端に言うと、色を変えてから回転させている感じなのです。あれは回転させている途中で変えたほうがもっと鮮やかに見えます。歳のせいか手が震えて、昔のようなキレがありません。全体で1分ほどの演技です。

Volume Three:The Ring on The Stick

観客から借りた指輪を左手に握ります。ハンカチを左手にかぶせて、観客に輪ゴムで手首を止めてもらいます。右手でウォンドを取り上げ、ウォンドの両端を観客に持ってもらい、マジシャンはハンカチがかぶせられた手をウォンドの上に持ってきて軽くウォンドをたたくと、ウォンドに突然、左手に握っていた指輪が現れます。これで終わり。これも1分程度のものです。

「リング・オン・ステッキ」で一般によく行われているのは、最初、指輪がウォンドに飛び移った後、ウォンドから抜けたり、もう一度ウォンドに通うというものでしょう。このビデでは、1回だけ移ったら終わっています。これはマイク・スキナーの、プロとしての長年の経験からだと思います。マニアはつい、色々な技法をまぜて何度か繰り返したくなるのですが、見ている側からすれば同じことの繰り返しに過ぎません。一度やれば十分かも知れません。

今回、マイク・スキナーがやっているハンドリングでよいのは、指輪を左手に握るとき、まったくフェアーな点です。ハンカチと輪ゴムが良いミスディレクションになって、スティールが大変巧妙です。この技法は使えます。

 


コメント

この新しいシリーズは、1本のビデオでワン・トリックだけを解説しています。これは新しい試みですが、どうなんでしょうね。このようなシステムが一般的になると、色々と問題もありそうです。値段は1本が12.50ドルですから高くはありません。実際にプロがやっているマジックをその程度の値段で教えてもらえると思えば安いものです。しかし、今回の3本は、一番短いもので解説を入れて7分程度、長いものでも十数分です。7分のために1本まるごとビデオを使うのは、それでなくても置く場所がなくて困っている人には迷惑な話でしょう。

制作側の事情を推測すると、本の出版、ビデオ、ネタの販売を考えると、一番お手軽に儲かるのはネタの販売です。一番大変なのが本の出版です。一冊の本を書くこと自体大変な作業で、半年から数年の準備が必要なこともあります。著者にとっても、出版社にとっても大変な作業です。しかもそれが、3、40ドル程度の値段です。それに引き替え、ネタなら30ドル程度のものはいくらでもあります。実際にプロがやっているトリックをネタとして売り出せば、ひとつのトリックだけで5,60ドルくらいの値段をつけても買う方はむしろ安いと思うでしょう。本などを書くより、ワントリックずつ持ちネタを切り売りしたほうが圧倒的に楽で儲かります。スティーブンス、バズビー、L&Lといった、元来、本やビデオ専門に扱っていたところも、最近はネタの販売に相当な力を入れているのも、このほうが儲かるからに違いありません。

A−1は今でもビデオ専門でやっていますが、今までのようなビデオだけの販売では経営も大変なのかも知れません。それが今回のような、1本にワン・トリックという形で販売すると、ネタと同じような感覚で販売できるので、商売上、おいしいのでしょうが、購入する側には迷惑な話です。


 

魔法都市の住人 マジェイア

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