書籍紹介

書名 セルフワーキング・マジック事典
著者 松山光伸
出版社 東京堂出版
価 格 2,400円(税別)
発行日 1999年
分類 セルフワーキング

1999年7月26日


最初に

セルフワーキング・マジック辞典「セルフワーキング・マジック」"Self-Working Magic"と呼ばれる分野のマジックがあります。指先の特殊なテクニックを必要とせず、決められた手順どおりに操作すると、だれがやっても同じ結果になるようなマジックのことです。

このようなマジックは、一般的には初心者用のマジックと考えられており、そのため、マジックを長くやっている人は見向きもしないことが多いのです。技法を使わない分、現象が起きるまでに観客に色々とやってもらったり、長い手続きが必要なため、視覚的なインパクトも弱いのが欠点です。そのため、マニアと呼ばれるような人は、大抵、このようなタイプのマジックを避けていました。

しかし、この本に解説されているマジックは、そのような一般的なセルフワーキング・マジックとは全然違います。ひと味も、ふた味も違います。マニアでも喜んでレパートリーに入れたいものが満載です。実際、私もこの中に解説されているマジックは数年前から私のレパートリーに入っています。

著者の松山氏は、私も20年以上前から存じ上げている方です。昔からこのタイプのマジックを研究されており、10年ほど前から、マジックの専門誌『ザ・マジック』(季刊、東京堂出版)に、連載されていたものが、今回、加筆されて本になりました。

内容を紹介しましょう

トランプマジックを中心に18種類のセルフワーキング・マジックが解説されています。今まで松山さんのことをご存じない方であれば仕方がありませんが、本当にどれも使えるマジックばかりです。特に、『悪魔との取引』など、私も含めて多くのマニアがこれをやっています。これはクロース・アップだけでなく、ジャンボカード(普通のトランプの4倍くらいある大きなもの)を使えば、パーティやステージでも実演可能です。これをマスターするためだけにこの本を買ったとしてもおつりが来ます。

現象をざっと説明しますと、13枚のトランプを使います。スペードのA(エース)からK(キング)までの13枚です。悪魔とちょっとしたゲームをして、そのゲームに勝てば、悪魔はこちらの願いを何でも叶えてくれます。ただし、もし負けたら、魂を奪われてしまいます。

どのようなゲームかと言いますと、13枚のトランプを裏向きに混ぜて、お互いが一枚ずつトランプを選び、数字の大きいトランプを引いた方が勝ちというゲームです。これでも十分公平なゲームですが、悪魔はある条件を出してきます。今日は特別に、こちらが有利になるようにしてくれると言うのです。AからKまでのトランプで、一番強いのをAとします。それ以外は、K、Q、J,10,9..........と下がってきて、2が一番弱いトランプとします。

今回、悪魔は「3」のトランプを引いたことにしてやると言うのです。ということは、こちらはそれ以上の数のトランプを選べばよいのですから、ほとんど負けることはないはずです。唯一負ける可能性は「2」を引いたときだけです。

で、実際にどのようにしてトランプを選ぶかと言いますと、12枚のトランプを裏向きにして、マジシャンと観客が一枚ずつ交代に、テーブルの上からトランプを捨てていきます。そして、最後に残った1枚が観客のトランプとします。これなら公明正大であるはずです。

最後に残った1枚を表向きにすると、大抵、ここで悲鳴が上がります。特に女性にこれを見せていると、恐る恐る最後の1枚を表向きにして、それが「2」であるとわかったとき、「キャーッ」という声が出ます。

「これであなたの魂は私のものです」という決めセリフを残して終わります。

メフィストフェレスになったような気分です。

最後に一言

今のトリックは、一部のマニアの間では、別名「ナンパ・ルーティン」と言われているそうです。(汗)でも、 あまり悪用はしないでくださいよ。人心を惑わすようなヘンな使い方をすると、天誅が下ります。

とにかく、今の演出を見ていただければわかると思いますが、どのマジックも、「超マニア」といったレベルの人でもやりたくなるものばかりなのです。演出の部分も詳しく解説されていますから、今までまったくマジックをやったことのない方でも心配ありません。

魔法都市の住人 マジェイア

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