製品名 | SVENGALI DECK スベンガリ・デック |
発売元 |
大抵のショップにあります |
価 格 | $10.00程度 |
分 類 | クロースアップ、カード |
最初に マジックをある程度やっている人であれば、「スベンガリ・デック」を知らない人はまずいないでしょう。メーカーによっては「トラベリング・デック」という名前で販売しているところもありますが、世界的にみても「スベンガリ・デック」という名前のほうが一般的です。 これをご存じない方のために一言付け加えますが、これは見た目はごく一般的なトランプと同じです。何も仕掛けのない、普通のトランプのようにしか見えません。しかし、実際はちょっとした仕掛けがあります。 私の所属している大阪奇術愛好会が1965年から不定期に出している機関誌のタイトルが"THE SVENGALI"です。松田道弘氏から教えていただいた話によると、「スベンガリ」というのは、『トリルビイ』という小説の主人公の名前だそうです。作者は『レベッカ』や『鳥』などで有名な女流作家デュ・モーリアです。トリルビイという、モデルをしていた平凡な女性が不思議な魔力を持つ男、スベンガリの催眠術によって大歌手に仕立てられ、意のままにあやつられるというストーリーです。今では、「催眠術師」の意味で、英語の普通名詞としても使われています。 名前の由来はともかく、今では日本でマジックをやっている人にはすっかりおなじみでしょう。アメリカではマジックにそれほど詳しくない一般の人でもこのトランプのタネを知っている人がかなりいるそうです。 アメリカには昔、馬車に乗ってやってくる街頭の薬売りがいました。「富山の薬売り」と「ガマの油売り」を兼ねたようなものでしょうか。「ガマの油売り」は薬の効き目を証明するために、刀で自分の腕を少し切って見せて、そこにこの油を塗るとたちまち血が止まるというデモンストレーションをやっていました。アメリカの場合、客寄せにマジックをやって見せたのかも知れません。そこでこのスベンガリ・デックを景品として使っていたようです。そのため、意外なくらいタネが普及しています。年寄りがいる家では、このようなトランプが普通のトランプに混ざって家に一組くらいあったのでしょう。 数年前、私がよくマジックを見せていた高校生がホームステイで一ヶ月ほどアメリカに行きました。彼はマジックはやっていないのですが、偶然、彼の滞在していた街にマジックショップがあることを知り、そこへ入ってみたそうです。何もわからないまま勧められるものを買ったら、それがこの「スベンガリ・デック」でした。日本のマジックショップでは、まったくマジックをやったことのない人が来た場合、スベンガリデックを勧めることはまずないでしょう。このことからでも、アメリカではこれがいかにポピュラーかわかると思います。 現象 スベンガリ・デックを使ったマジックはたくさんあります。また、これをフォーシングデックとして使用しているものまで含めたら、数え切れないほどの数になります。一般的な現象を説明するのは難しいのですが、ストップカードと予言を組み合わせたものがよく演じられていますのでそれを紹介しておきます。 封筒に予言が入っています。その封筒は、終始、テーブルの上に置いて、観客全員から見えるところにあります。または、観客の誰かに持っていてもらってもかまいません。 一組のトランプを使います。最初にトランプの表全体を観客に見せて、すべてバラバラの、ごく普通のトランプであることを確認してもらいます。それをすべて観客に手渡して、裏向きのまま一枚ずつ、テーブルの上に配って行ってもらいます。好きなところで配るのを止めてもらいます。配るのを止めたところのトランプを表向きにすると、「スペードの5」とします。封筒から予言の紙を取りだしてもらい、書いてあるメッセージを読んでもらうと、「あなたは必ずスペードの5のところで配るのを止める」と書いてあります。 コメント 初期のものはショート・カードが26枚、レギュラーが26枚でできており、パラパラとはじくことですべてのトランプが異なっているように見せていました。ラフ・アンド・スムーズが開発されてからはこれで処理されている製品のほうが一般的になってきました。これのすぐれている点は、トランプを見せるとき、パラパラとはじくのではなく、普通に広げて見せることができることです。しかし、観客に手渡して、観客自身に配ってもらうことはできません。どちらがよいのかは一概に言えません。用途によっては昔のほうがよい場合もあります。 このタイプのマジックは、マニアは初心者用のマジックとして軽視しがちですが、きちんとし演じれば大変すばらしいマジックになります。Mr.マリックも超魔術ブームのころ、これをよく演じていました。
|