書籍紹介

書名 テクニカルなコインマジック講座
著者 荒木一郎
出版社 東京堂出版
価 格 2800円(税別)
ページ 212ページ
ISBN 4-490-20516-9
分類 コインマジック

2005年8月29日


テクニカルなコインマジック講座



コインマジックの専門書です。

 ここ数年、日本ではマジックブームの影響もあり、数多くのマジック関連の書籍が出版されるようになりました。しかしコインマジックに限れば、過去数十年間でも、めぼしいものとしては以下の3冊だけです。

 1974年に日本文芸社から出た二川滋夫氏の『コイン奇術入門』。これはその後改訂され、現在東京堂出版から『奇術入門シリーズ コインマジック』として出ています。

 これ以外では『コインマジック辞典』(1986年、高木重朗、二川滋夫著 東京堂出版)と『世界のコインマジック』(2004年、リチャード・カウフマン著、小野坂東訳 東京堂出版)がありますが、どちらも初心者が取り組むにはかなり敷居の高い本だと思います。

 これは日本だけでなく、海外でも同じような状況です。1952年に出版されたJ.B.Boboの『Modern Coin Magic』、その後1966年に改訂され、『New Modern Coin Magic』があります。改訂の際、約100種類のマジックが追加されたため、ページ数も519ページという大きなものにになりました。これが今でもコインマジックの世界ではトップの座に君臨しています。

 これ以外ではデビッド・ロスの『Expert Coin Magic』他数点ありますが、カードマジックと比べると、コインマジックが扱われているページ数はカードマジックの百分の一くらいしかないないと思います。ページ数を細かくチェックしたわけではありませんので正確な数字はわかりませんが、私の実感としては大げさでなく、百分の一くらいしかありません。

 マジックをはじめたばかりの人が最初に出会うコインマジックとしては、テンヨーなどで販売されている「ダイナミックコイン」と呼ばれる商品ではないでしょうか。これは1970年代のはじめ、日本のマジックメーカー数社から発売されました。現在はテンヨー以外で販売しているところがあるのかどうか不明ですが、このマジックはマジックをこれまで一度もやったことがない人であっても、30分も練習すれば数枚の100円玉をまとめて消したり、出現させたりできるようになる大変よくできた道具です。

 これでコインマジックに興味を持って、今度はテクニックを使って同じようなことをしたいと思っても、あまりのギャップに音を上げてしまいます。

 ずいぶん前置きが長くなってしまいましたが、コインマジックの専門書というのは、レクチャーノートなどのごく薄いものをのぞいて、大変書きにくいのです。Boboの本やその他の本に載っているものを紹介するのであれば簡単なことですが、これまで活字になっていないものや、オリジナルの技法やマジックを扱い、それで1冊の本を作り上げるのは至難の業です。

 今回出版されました『テクニカルなコインマジック講座』は、荒木さんのオリジナルを中心に、スピリット百瀬氏、沢浩氏、摩耶一星氏、ヒロサカイ氏、緒川集人氏、上口龍生氏、小川勝繁氏などが得意としておられるコインマジックが紹介されています。

 これまで一部のマニア以外には知られていなかった技法「フィッチ・パーム」などもあります。

 さらにここ数年、様々なメディアが普及したため、添付されているDVDで実際の動きを見ることができます。これは画期的なことだと思います。活字だけではどれだけ言葉をつくしても伝えられないことが、動画で見るとすぐにわかります。

 前半ではコインマジックでよく使われる用語や基本技法なども解説されていますので、マニアだけでなく、初心者であっても十分理解できると思います。



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