製品名 |
Larry Jennings
THOUGHTS ON CARDS |
演 者 | Larry Jennings |
価 格 | 2巻セットで$80.00 |
発行日 | 1995年 |
ラリー・ジェニングスのビデオはこれ以前にも何本か出ていますが、このビデオの魅力は、ハリウッドのマジックキャッスルでジェニングスが一般の観客を相手に見せているときのLIVE SHOWの様子がわかるところです。レクチャービデオやマジシャン相手に見せているものでは、本当の雰囲気がわかりません。また、彼の数多い作品群の中から、一般の人に見せるときはどのようなものをやっているのか知ることもできます。Vol.1と2の最初と最後に、キャッスルでのライブが入っています。この4つのトリックは解説されていません。 2巻目の最後で、"Ladies' Looking Glass"のジェニングスヴァージョンを演じています。原案は、カードマジックの古典的名著"THE ROYAL ROAD TO CARD MAGIC"(Hugard & Braue 1949年)にあります。 これはジェニングスがショーのトリネタに使っているほど気に入っているトリックです。決して簡単ばトリックではありません。むしろ、大変難しいトリックです。そのため、プロでも、これを自分のレパートリーに入れている人はほとんど見かけません。しかし、うまく演じることができたら、大変すぐれたマジックです。ジェニングスのような名人によってこれが演じられたとき、プロットの力強さと不思議さが相まって、強烈な現象のマジックであることがよくわかります。このマジックを見るためだけにこのセットを購入しても良いくらいです。
なお、このビデオの中で、マジックキャッスルでのLIVEが収録されているものは"Invisible Palm"と"Oil & Water"を除いて、どこにも解説されていないと思います。
LIVE以外のものは、このビデオのために撮影したものです。
内容を紹介しましょう
Volume 1
1.Live Show
"Six Cards Repeat"のような現象。ジェニングスは4枚で演じています。
ショーのオープニングに演じているだけあって、わかりやすいプロットでとてもよい。2.Cannibal Kings
4枚のキングが人食い人種で、この間に挟んだトランプが次々と食べられ、消えて行きます。マニアにはお馴染みの「カニバルカード」のテーマです。
3.Oil & Water
これは素晴らしい。一般ウケします。赤いカード4枚(水)と黒いカード4枚(オイル)を交互に一枚ずつ重ねて行きます。しばらくしてから広げると、赤いカードと黒いカードがそれぞれ分離しています。
4.Cards Up Spectator's Sleeve
観客の袖からトランプが出てきます。「トランスポジション」の一種とも言えますが、私の好みではありません。
5.Tips on The top card cover pass
トップカードを動かさないでパスを行う「カヴァーパス」の解説です。技法の解説はうまくありません。
6.Tips on The Gambler's Cop
「ギャンブラーズパーム」の解説。
7.Aces for Experts
ヴァーノンの"Slow Motion Four Aces"のジェニングス版。最初、テーブルの上に4Acesがあることを完全に見せた後、一カ所にエースが集まることを見せたいのですが、私の好みではありません。ヴァーノンのオリジナルのほうが好きです。
8.Live Show
3重、4重になっているトランプを使った予言。マニアであれば現象から方法は容易にフォローできます。一般の人に見せるには大変よいマジックです。
Volume 2
1.Live Show
お馴染みの"Invisible Palm"です。 これはいつ見てもほれぼれします。1960年代からやっているのですから、実演回数は数万回でしょう。うまいはずです。現象もわかりやすくてとても良いマジックです。"Open Travellers"と見た目は同じですが、こちらのほうが挑戦的です。でも実際はどちらでやっても同じです。私は"Open Travellers"をやっています。
2.Outstanding Triumph
トランプを裏表混ぜてしまっても、最後は観客のトランプ以外は全部同じ向きになります。テーブルでシャッフルするのではなく、手に持ったままファローシャッフルを行って混ぜる。私はヴァーノンの原案のほうが好きです。
3.Nothing Yet Aces
4枚のトランプが、すべてエースに変わります。「エースオープナー」に使えます。
4.Twisting the Aces with twist
現象自体は、ヴァーノンの"Twisting the Aces"です。途中の状態をしっかり見せたいのは理解できますが、そのため余計な動作が入ってしまいます。これに限らず、ジェニングスのマジックに共通しているのは、innovative(革新的)であろうとするあまり、どうしても少々無理なことでもやってしまうのです。観客にすると、タネが見えるわけではないけれど、「何かあやしいことをやった」という感じがするのです。
アル・ベーカーの言葉、「追いかけられてもいないのに逃げるな」を思い出せば、もっとシンプルに処理できる部分がいくらでもあります。
5.Flawed Transposition
4枚のエースとキングを使います。4枚のキングをテーブルに置いて、手には4枚のエースを持っています。テーブルのキングとエースが一枚ずつ入れ替わって行きます。最後は8枚ともキングになります。
6.Lar Roy Reverse
ジェニングスとロイ・ウォルトンの共同研究からできたリバース現象だそうです。
7.Estimated Toss
カードをデックに投げ入れて観客のカードを見つけます。「サッカータイプ」のマジックです。
8.Deck to Pocke
二人にトランプを選んでもらいデックに返してもらいます。一枚目はマジシャンのポケットから出てきます。2枚目も同じようにしますが、手に持っていた一組が消えて、1枚しか手には残っていません。それが二人目の観客のトランプで、残りの50枚がポケットから現れます。
9.Single Cup and Balls
これだけが、このビデオに収録されている中でカードマジックではありません。このビデオのタイトルが"Thoughts on Cards"なのに、これを入れたのはよほど愛着があるからでしょう。実際、これは私も好きな「カップアンドボール」です。一個のカップだけで行うので現象もわかりやすく、最初、スカーフの中から突然、金属のカップと小さいボールが3個現れます。途中大きなボールも現れ、最後は大きなボールもカップも消えてしまいます。
10.Live Show
これが最初に言及したトリネタの"Ladies' Looking Glass"です。古典ですが、知らない方も多いと思いますので現象を説明しておきます。
4人の観客に、トランプを渡して2枚ずつ取ってもらい、それを覚えてもらいます。観客が全員覚えたら、8枚のトランプをトランプの中にバラバラに入れてしまい、よく切りまぜます。
トップカードとボトムカードを見せ、それが観客の覚えたトランプではないことを確認します。最初の観客に手を出してもらい、手の上でデックを2,3度回してから、トップカードとボトムカードを見せるとそれが観客の覚えたトランプになっています。順に、3人の観客に同じことをやってみせます。最後は、残りのトランプをすべて空中に飛ばして、上から落ちてくる数十枚のトランプの中から2枚のトランプを両手でキャッチします。それが4人目の観客のトランプです。
すばらしいでしょう?いかにも「古典」という雰囲気があり、シンプルかつダイナミックです。ジェニングスは、これをレクチャーでやることはほとんどなく、あくまでショーのためのマジックとして大切にしていたようです。
ただ、ジェニングスはこの数年後に亡くなるのですが、このときすでに相当苦しそうでした。特に、これはトリネタでもあり、汗を拭きながら、息づかいが荒くなっており、見るのに少々つらいものがあります。しかし、それを割り引いてもなおかつ素晴らしい演技です。