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　東京堂出版から、松田道弘氏の編纂になる『夢のクロースアップ・マジック劇場』が出ました。この本は1992年に社会思想社から出たあと絶版になり、その後出版社自体がなくなったため、マジック愛好家の間では幻の本となっていました。それが復刻され、このゴールデンウィークあけくらいに、一般書店の店頭にならぶようです。(2005年5月上旬）

　ヤフーオークションなどでも数万円の値段がついたこともあり、だいぶ前から復刊を望む声が数多く上がっていました。

　内容については、私も入っているので書きにくいのですが,、それは別にして、日本でクロースアップマジックの世界でよく知られている方々の作品を集めたアンソロジーになっています。

執筆者を紹介しておきます。

★コインマジック★
高木重朗／根尾昌志(二題）／赤松洋一（二題）／松田道弘／三輪晴彦／六人部慶彦(二題）／泡坂妻夫

★カードマジック★
高木重朗／松田道弘(二題）／三輪晴彦(二題）／泡坂妻夫

★ボーナス・イフェクト★
　根尾昌志（二題）

　この本がマニアの間で定価の10倍くらいの値段で取引されたのはそれなりの理由があります。思いつくままにあげてみますと、六人部慶彦氏の「ムトベパーム」がきちんと解説されている唯一の本であること、根尾昌志氏のゴージャスと形容したくなる一連のクロースアップマジック、高木先生のすっきりした作品、厚川さん（泡坂妻夫氏）の「MA　パス」を使ったコインマジック、赤松洋一氏の大変巧妙な、コインを使った貫通現象など、マニアであればひとつかふたつマスターしておくだけで十分元が取れると思えるマジックが満載ということではないでしょうか。

　六人部氏のコインマジックでは「ムトベパーム」がその名前とともによく知られていますが、実際はこれ以上に役に立つのが「アナザー・リテンション・バニッシュ」と名付けられた技法です。これを実際に六人部氏に見せてもらうと、本当に消えたとしか思えないくらいイリュージョンの強い技法です。この二つが解説されているのはビデオを含めてこの本しかありません。　

　根尾さんの作品は一般の人に見せてもたいへんうけるため、今でも大学の発表会などでよく演じられています。

　私のいくつかの作品も載せていただいていますが、これを最初に書いたのは1970年代中頃です。大阪奇術愛好会の機関誌、「ザ・スベンガリ」に発表したものです。すでに30年も経っているため、当時とは好みもすっかり変わり、今ではほとんど演じることもないのですが、"Out of This World"のバリエーションである作品だけは今でも時々やっています。途中でガイドカードの交換をしないで、一気に最後まで配ってしまうものです。他のマジックも少しは練習しておかないとまずいかなと思っている次第です。

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