Almost Real Prediction
2000/3/19
「数学マジック」のひとつです。本当は「オンライン・マジック」で紹介したかったのですが、残念ながらオンラインでは実演できません。やってやれないこともないのですが、プログラムを組むのが面倒なので、パズルとして紹介します。原理を考えてみてください。
原案は"ALMOST REAL PREDICTION" by Jack London(1972年 Harold Rifas著 $10.00)です。わずか22ページの薄いブックレットで、ワン・トリックだけが解説されています。実際に入手したのは1974年頃ですが、最近になってはじめて何度かやってみました。
とりあえず先に現象を説明します。
★現象
マジシャンは観客の一人にお願いして、千円札を1枚、財布から取り出してもらいます。お札にはすべて異なった通し番号が入っていますので、その番号の下四桁を言ってもらいます。たとえば「3768」であったとします。
二人目の人には、その人の電話番号から、最後の四桁を言ってもらいます。「1052」とします。
三人目の人は、何かのカード(クレジットカード、各種ポイントカード、病院の診察カード等)に書いてある数字から、四桁を抜き出してもらいます。それを「7649」とします。
ここでマジシャンは、この三つの数字を黒板か大きなスケッチブックに書きます。
ただし、この数字はマジシャンも知っていますので、このままではマジックに使えません。そこでマジシャンは後ろを向くか目隠しをして、これから後の操作はマジシャンには見えないようにします。
観客の一人に出てきてもらい、先ほどの数字をいったんばらばらにして、並べ替えてもらいます。
具体的には、3人が言った数字から、ひとつずつ抜き出して、それを並べ替えることで新たに三桁の数字を作ります。同じようにして、残っている数字から三桁の数字を作ります。それを黒板に書いてもらいます。全部で三桁の数字が4つ出来ますから、それを合計してもらいます。この操作の間、マジシャンは黒板を見ていませんので、新しくできた4つの三桁の数字、しかもそれを合計した結果がどうなるかまったくわからないはずです。
観客が合計を出したと言ったら、そこでマジシャンは後ろを向いたままその合計を当てるか、または最初からテーブルの上に置いてあった予言の封筒を開けてもらうと、その合計が予言されているといった見せ方もできます。
★コメント
上の現象は一部省略したところがあります。しかし、観客から見ると、あのとおりに見えます。
数学的な原理としては、適当な四桁の数字を聞いた時点で、マジシャンはその後数字を並べ替えて作る三桁の数字4つ分の合計がわかってしまうということです。
ただ、これをどうやって当てるかが問題です。「ネイル・ライター」か、助手が使えるのであれば、それを併用すれば十分一級のマジックになります。実際、原案者のジャック・ロンドンはこれをステージやテレビ番組で演じています。
ジャック・ロンドン自身、この原理を使うまでは仕掛けのあるノートパッドなどを使用する方法でやっていました。マジックとしてはそのほうが不思議です。しかし、これのよいところはタイトルのとおり、即席で演じられる割には「ほとんど本物の予言」のように見える点です。
先にも述べましたように、私自身はこれを20数年前から知っていましたが、今までほとんどやらなかったのは、数学マジック特有の煩わしさがあったからです。この種のものは、マジックというよりパズルになってしまいがちです。数学マジックに、他のマジックの原理を組み合わせれば一層不思議さは増しますが、それなら何もこのような面倒なことをしなくても、いくらでも不思議な現象を作り出せますから、結局、実演することもなかったのです。
実はこれをやる気になったのは、先日、電話で話しているとき、「電話でできるマジックはないの?」と言われたからです。もし相手がトランプでも持っていればそれを使ってできますが、トランプがなくてもできそうなものといえば「数学マジック」くらいしか思いつきません。
で、これをやってみたのです。メモ帳を持ってきてもらい、そこに数字を書きながらやってもらいました。その人に、お札やカードの数字、そこの家族か友人の生まれた年(西暦)を使い、四桁の数字を取り出してもらいました。四桁の数字を聞くところまで電話で聞き、後は私にわからないように数字を並べ替えて、三桁の数字を4つ作ってもらい、その合計を出してもらいました。勿論、今作った三桁の数字は一切こちらにはわかりません。合計が出た頃、その人の携帯電話を見てもらうと、そこに私からのメールが届いています。そこには今計算したばかりの「合計」が表示されています。 (一番上の写真参照)
ざっと、このようなことをやりました。最近の携帯電話にはメールを送受信する機能が付いていますから、それを利用することを思いつき、やってみたくなったのです。マジックとしてはそれほど不思議でもありませんが、話のネタくらいにはなると思います。