something old

 


成金棒

 

Nariki-Bou

1998/5/7


最初に

これも以前紹介した「コインボード」と同じく、30数年前、小学校の前におじさんが売りに来ていたとき買ったものです。

現象

長さ30センチほどで、少し太いピアノ線のような棒があります。ただの棒です。 おじさんがこの棒を一振りすると、棒の先端に10円硬貨や100円硬貨が突然現れます。
上の写真では少し見にくいと思いますが、棒の左端にある丸いものが100円硬貨です。
それを取り除き、ポケットに入れてから、周りで見物している人の体の一部に触れると、またそこから硬貨が出現します。出てくるたびにお金をポケットに入れるのですが、エンドレスでいつまでもお金が現れ続けます。

コメント

これは本当に不思議でした。髪の毛の中や、女の子のスカートの下、鞄の中など、どこでこの棒の先をちょっと入れるだけで、何もなかった棒の先に10円玉がくっついているのですから、これほどわかりやすい手品もありません。

今思っても、大変優秀なトリックです。しかし、これは完全に消えました。これほど優秀なトリックは、他にちょっと見あたらないのに消えてしまったのです。折角なので、この機会に復活させようかと思っています。

消えた最大の理由は、見かけほど簡単ではないからです。現象だけを見せてもらうと、何もしていないのに、突然、棒の先にコインが現れるように見えます。勿論、タネはあるのですが、それは信じられないくらいシンプルなネタです。この棒には何のカバーもありませんから、8割はテクニックなのです。棒を観客に渡して調べてもらうこともできます。

これほど不思議なトリックなのに、確か50円くらいで買ったような気がします。すぐに買って帰り、家でタネと解説書を見たら愕然としました。これは絶対ウソで、こんなタネで、あんなことができるとは思えなかったのです。実際にやっているタネと、売るタネは違うものだと思ったくらいです。タネとしてついてきたのは、長さ30センチほどのピアノ線と、長さ5ミリのほどのパイプ(筒)だけです。確かにこれなら、原価は10円もしないでしょう。また、当時の解説書は、タネの原理だけを書いてあり、細かいハンドリングなど何も説明されていません。そのため、縁日などで手品のタネを買って帰っても、大抵の人はできません。決してウソのタネを販売していたのではありません。もし、それをマスターしたければ、購入後、何度もそのおじさんのところへ通うなりして、実演しているのを見ることで、修得するしかなかったのです。

このトリックは、原理は大変単純なため、ミスディレクションやタイミングが難しいのです。今の私にはわかりますが、小学生のころの私ではとてもそのようなことはわかるはずもなく、あきらめていました。

後年、これを簡単にしたものがマジックショップなどで販売されるようになったのも、これが消えた理由のひとつかも知れません。それは、「成金センス」というものです。

Narikin-Sensu

扇子を広げて見せて、ごく普通の白扇であることを示します。閉じてから、扇子を観客やマジシャンの体の一部に触れると、扇子の先に写真のように100円玉が現れます。 これもエンドレスで繰り返すことができます。また、このネタは「成金棒」と違い、買えば誰でもすぐにできます。練習もほとんど不要です。

現象自体は、どちらも同じように見えるかも知れませんが、「成金棒」の場合、ただの棒の先に、突然お金がくっついて出てくることだけでも不思議です。それを取っても取っても、いくらでも出てくるのですから、うまく演じれば、断然、原案のほうが不思議でしょう。

このまま人知れず消えてしまうには惜しいので、紹介しておきます。


backback INDEXsomething interesting 魔法都市入り口魔法都市入口へ
k-miwa@nisiq.net:Send Mail